世界14都市のデータから証明された、都市環境と地域住民BMIの有意な関連
近隣の飲食店までの距離、住宅密度、公共交通機関の停車頻度などと、その地域に暮らしている住民のBMIに有意な関連があることがわかった。世界10カ国、14都市、1万人以上のデータと、地理的条件を統計的にスコア化した数値との関連を調査した研究の報告。論文の結論は「公共交通機関へのアクセスがよく、スーパーマーケット以外の食料用品店に近い都市の設計は、肥満の予防に役立つ」というものだ。
調査対象と解析の方法
この研究は、環境に関する国際研究「International Physical Activity and the Environment Network」の成人版である「IPEN Adult」のデータを用いた多国籍横断研究。
対象都市は、オーストラリア(アデレード)、ベルギー(ゲント)、ブラジル(クリチバ)、コロンビア(ボゴタ)、チェコ共和国(オロモウツとフラデツクラロベ)、デンマーク(オーフス)、中国(香港)、メキシコ(クエルナバカ)、ニュージーランド(ノースショア、ワイタケレ、ウェリントン、クライストチャーチ)、スペイン(パンプローナ)、英国(ストークオントレント)、米国(シアトル、ワシントンDC)。このうち都市環境の測定データを利用できなかったアデレード、パンプローナ、フラデツクラーロベを除く、14都市のプールデータが用いられた。
対象者は、歩行能力の高低と社会経済的ステータスの高低とで4分し、その都市全体の傾向を反映したデータの収集に留意した。
都市環境の評価対象としたのは各個人の自宅から0.5~1.0 km以内(10〜15分の徒歩圏内)。この圏内の、住宅密度、交差点密度、公共交通機関の停車頻度、最も近い公共道路網の距離、土地利用状況など、比較可能な7つの変数を評価した。ただし、土地利用コードの一部が国ごとに異なるため、食品を入手するための環境は、先行研究で検証されている近隣環境歩行可能性スケールから取得し、食品販売店への知覚的距離を評価した。各個人の最寄りのスーパーマーケット、その他の食料品店、レストランへの距離を、歩行時間30分以上、21〜30分、11〜20分、10~6分、1~5分という5つのカテゴリーに分類した。
男性と女性では、BMIに与える環境因子が異なる
対象者は16~66歳で計1万8人。平均年齢は42歳、男性が45%、平均BMIは26.0で全体の32.0%が過体重、17.2%が肥満だった。
平均BMIが最低だったのは香港の22.2、最高はメキシコ(クエルナバカ)の28.0で、過体重の割合は香港の16.6%からクエルナバカの41.1%の間に分布し、また肥満者の割合も香港が最も少なく2.9%、クエルナバカが最も多く31.3%だった。
都市環境とBMIの関係は、性別により大きく異なっていた。
女性では、公共交通機関の停留所までの距離が長く、スーパーマーケット以外の食料品店までの距離が短いことがBMIが低いことと関連していた。男性の場合、公共交通機関の密度、道路の交差点の密度、およびレストランへの近接度が、より健康的なBMIに関連していた。複合的に評価した指標との関連は、女性より男性の体重状態に強い影響を及ぼしていた。複合的指標によりBMIとの関連は弱くなったが、過体重や肥満との関連は有意だった。
本研究の結論を著者らは「都市環境に起因する体重状態の変動は予想よりも大きかった。公共交通機関を整備し、それを利用して食料入手ポイントに容易にアクセスできる環境を拡大する戦略は、世界的な肥満抑制にいくらか貢献するだろう」とまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Associations of built environment and proximity of food outlets with weight status: Analysis from 14 cities in 10 countries」。〔Prev Med. 2019 Oct 22;129:105874〕