アマチュア持久系アスリートの6.5%が摂食障害、30.5%が運動依存
アマチュア持久系スポーツアスリートの食物中毒、摂食障害、運動依存の頻度を調査した結果が論文発表された。それぞれ、6.2%、6.5%、30.5%が該当するという。ドイツからの報告。
米国精神医学会の「精神障害/疾患の診断・統計マニュアル」第5版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th ed;DSM-5)では物質依存に関する診断基準に食品も適用され、「食物中毒(Food Addiction)」という用語が使われるようになった。この食物中毒は摂食障害とのオーバーラップもあると考えられるが、アスリートの有病率は明らかになっていない。一方、摂食障害は報告によりその頻度が、女性アスリート6~45%、男性アスリート0~19%とされている。
他方、運動やスポーツは健康にプラスの作用をもつが、過度に行うと有害性を生じ、運動を強迫的に行う運動依存のようなケースも現れる。最近これを"運動中毒"と表現することも見られる。その頻度は持久系スポーツのアスリートで高いとされている。
しかしこれらの有病率・頻度は報告により差が大きく、また包括的に調査したデータは存在しない。本研究は、食物中毒、摂食障害、運動依存の潜在的な頻度を、同一集団を対象に調査したもの。著者らは「運動依存についての世界で初めての調査」としている。
この調査はインターネットを用いて行われた。ドイツ全土のスポーツクラブ、アスリートのFacebookコミュニティー等を介して協力を呼びかけ、18歳以上の1,204名から回答を得た。このうち週あたりの運動時間が4時間未満と回答した者やデータの欠落がある者などを除いて1,022名が解析対象となった。
回答者の主な背景は、年齢36.44歳、男性43.6%、BMI22.83、週あたりの運動時間7.85時間、運動歴10.96年。種目はランニングが60.8%、トライアスロン9.2%、サイクリング8.2%、フィットネス7.1%、チームスポーツ5.2%、その他9.5%。女性のうち11.3%は月経の欠如を報告した。食物中毒、摂食障害、運動依存の有無は、それぞれ以下の質問票を利用し判定した。Yale Food Addiction Scale 2.0、Eating Disorder Diagnostic Scale(EDDS)、Fragebogen zur Erfassung des Sportverhaltens bei Ausdauersportlern(FESA)。
調査の結果は冒頭に述べたように、食物中毒が6.2%、摂食障害6.5%、運動依存30.5%だった。
この結果に関する著者らの考察は、食物中毒が6.2%であることについては病的な食行動をとっていて介入の必要性があると考えられる人が、アマチュアアスリートの中に一定数存在すると指摘。ただし調査に用いたYale Food Addiction Scale 2.0は肥満者での利用を想定して開発された質問票であることから、今回の調査対象のようなBMIが23程度の対象には適さない可能性もあるとしている。
また摂食障害の頻度が6.5%であることについては、「予想どおりだ」とし、持久系アスリートはパフォーマンス向上のために極端なダイエットをすることがあると述べている。
運動依存の頻度が30.5%であることについては、「一般集団で調査した既報(0.5~3.5%)より高く、これは今回の回答者がトライアスロン等のランナーが多かったため」としている。
文献情報
原題のタイトルは、「The relationship between food addiction and patterns of disordered eating with exercise dependence: in amateur endurance athletes」。〔Eat Weight Disord. 2019 Oct 25〕