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重炭酸ナトリウム(重曹)の新しい摂取プロトコルで消化器症状が軽減される

重炭酸ナトリウム(重曹)はスポーツパフォーマンスを向上させるエルゴジェニック作用が期待されているが、その効果は報告により異なる。効果が一貫しない理由の一つとして、重炭酸ナトリウムの摂取により生じる胃腸障害などの副作用が、効果を相殺している可能性が指摘されている。実際、重炭酸ナトリウムの摂取によるサイクリングの記録への影響を検討した研究では、消化器症状を生じなかった対象者のみで効果が確認されたことが報告されている。

本論文の著者らは、重炭酸ナトリウムの副作用は試合開始前に大量に摂取することが原因と推測し、副作用の発現を抑制するため分割して少量ずつ摂取するという新しい摂取プロトコルを作成。その有用性を無作為化二重盲検クロスオーバー法で検討した。

研究対象は、VO2maxが男性60mL/kg/分以上、女性50mL/kg/分以上で、少なくとも週5日以上トレーニングをしており、国際陸上競技連盟得点表で750点以上という条件を満たすエリートレベルの中距離ランナー10名。10名中3名は研究とは関係のない理由で脱落し、最終的に7名が解析対象とされた。主な背景は、年齢28±6歳、体脂肪率8.9±4.6%、VO2max70.8±9.0mL/kg/分、最大心拍数191±5bpmなど。

投与プロトコルは以下のとおり。

投与後の採血時刻を基準として、その24時間前にベースライン状態を把握するための採血検査を実施。続いて、19.5時間前、11.5時間前、4.5時間前、1.5時間前という4回に分けて、重炭酸ナトリウムまたはプラセボを投与するというもの。投与量は、プラセボ条件では、110、130、160、200mg/kgの順。重炭酸ナトリウム急性投与条件(従来の方法の再現)では、最初の3回はプラセボ条件と同じで、4回目のみ重炭酸ナトリウムを300mg/kg投与。新しいプロトコルでは、4回ともプラセボ条件と同量の重炭酸ナトリウムを投与。プラセボには以前の研究で信頼性が確認されている炭酸カルシウムを用いた。

副作用の消化器症状は、1から10点のスコアで被験者が自己申告した。1点は消化器症状なし、10点は最悪の可能性がある苦痛があるもの。1~3点は軽度、4~7点は中等度、8~10点は重度と評価した。

最終の投与から1.5時間後の採血検査の結果、血清重炭酸塩濃度は3条件ともに有意に上昇していた。ただし上昇幅は、プラセボ条件2.7mmo/L、急性投与条件5.8mmol/L、新プロトコル7.6mmol/Lの順で、急性投与条件と新プロトコルはプラセボ条件より有意に上昇幅が大きく、かつ、新プロトコルは急性投与条件より有意に大きく上昇していた。なお、プラセボ条件でも血清重炭酸塩濃度が上昇したのは、前述のようにプラセボとして炭酸カルシウムを用いた影響と考えられる。

注目の副作用については、急性投与条件では7名中2名が重度の症状を報告したのに対し、プラセボ条件と新プロトコルでの報告はなかった。

新プロトコルが胃腸障害を引き起こすことなく、従来の摂取方法よりも血清重炭酸塩濃度を上昇させたことから、著者らは「新しいプロトコルは潜在的なエルゴジェニック効果を最大化し、胃腸の副作用を最小限に抑制する。アスリートはこのプロトコルにそって炭酸水素ナトリウムの摂取を試みるべき」と結論をまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「The effects of a novel bicarbonate loading protocol on serum bicarbonate concentration: a randomized controlled trial」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2019 Sep 18;16(1):41〕

原文はこちら(Springer Nature)

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