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思春期前~青年期アスリートの栄養摂取・鉄バイオマーカー・運動能力の関係

身体の健康的な成長と発達には食事による鉄摂取が重要であり、アスリートであれば鉄需要はさらに高まると考えられる。これまでのところ、成人アスリートの運動能力と鉄バイオマーカーの関連は多くの報告があるが、身体の成長過程にある若年者での検討は多くない。本報告は、研究の対象を若年アスリートに絞り、運動能力と鉄バイオマーカー、栄養摂取量との関連を横断的に検討した結果である。

思春期前~青年期アスリートの栄養摂取・鉄バイオマーカー・運動能力の関係

対象は5~18歳の若年アスリート249名。うち男子は179名で、年齢12.0±2.1歳、身長 156.3±13.9cm、体重49.1±16.5kg、女子は70名で、12.0±2.2歳、152.4±12.3cm、45.3±14.5 kg。全員が学校またはクラブ主催のスポーツに積極的に参加しており、スポーツの種類は、野球、バスケットボール、チアリーディング、クロスカントリー、ダンス、乗馬、サッカー、ゴルフ、体操、ホッケー、ラクロス、武道、ラグビー、サッカー、ソフトボール、水泳・ダイビング、テニス、陸上競技、バレーボール、重量挙げ、レスリングなど多岐にわたった。

検討対象者の運動能力は、ナショナルフットボールリーグ(NFL)のドラフト候補生に対するテストであるスカウティングコンバインを踏襲し、垂直跳び、幅跳び、敏捷性、L字コーン、20ヤードダッシュ、パワープッシュアップなど、主に嫌気性運動パフォーマンスで評価した。また食事摂取量は、オンライン食事摂取データ取得ツール「ASA24」を用いて、1日の総摂取エネルギー量および炭水化物、タンパク質、脂肪、鉄の摂取量を被験者各自が報告した(被験者が14歳未満の場合は親または後見人が報告)。鉄バイオマーカーとして、フェリチン、可溶性トランスフェリン受容体、およびヘモグロビンを測定した。

検討の結果は、男子と女子とで異なる傾向を示した。

まず男子アスリートにおいては運動能力がヘモグロビンと弱い有意な正相関が認められた(運動指標により、r=0.237~0.375,p<0.001〜0.05)。一方、女子アスリートは、可溶性トランスフェリン受容体と中等度の有意な正の相関が認められた(r=0.521~0.649,p<0.001~0.004)。また女子アスリートにおいては鉄摂取量との正相関も認められた(r=0.397~0.568、p=0.001~0.027)。

一方、食事摂取状況とフェリチン、可溶性トランスフェリン受容体、ヘモグロビンとの間に有意な関係はみられなかった(p>0.05)。男子アスリートに関しては、年齢と身長で調整後にも、ヘモグロビンと各種運動能力指標の関連の有意性が維持されていた。女子アスリートに関しては、鉄摂取量で調整後にも、敏捷性とL字コーンは可溶性トランスフェリン受容体との有意な関係が維持されていた。

これらの結果を総括すると、若年アスリートの運動能力パフォーマンスと鉄バイオマーカーは、男子・女子でそれぞれ性特異的な関係がみられた。ただしこれには、男子アスリートは女子に比べて年齢は大差ないものの、成長期が平均1.7年遅く、この違いを解釈する必要があると考えられると著者らは指摘している。つまり、男子はまだ成長期に達していないために、食事による鉄摂取の影響の重要性が女子ほど強く示されなかった可能性がある。その一方で、食事からのタンパク質摂取は男子の身体的成長と関連しており、女子では有意な関連がみられなかったという。

以上より本研究の結論として著者らは、「思春期の女子と男子は同じ年代であるにもかかわらず、鉄バイオマーカーと運動能力が異なる相関を示した事実は、鉄バイオマーカーが年齢より身体の成熟レベルに依存している可能性を示唆する。本研究における最大の性差は、上半身強度と筋肉量、食事性タンパク質と鉄の摂取量、フェリチン濃度だった。これらの比較に基づき、この年齢の若い女子アスリートに、食事性タンパク質と鉄の摂取量を増やすことを推奨する」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Sex-specific relationships among iron status biomarkers, athletic performance, maturity, and dietary intakes in pre-adolescent and adolescent athletes」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2019 Sep 18;16(1):42〕

原文はこちら(Springer Nature)

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