持久系アスリートのための栄養素やサプリメントの摂取量は? 文献レビューによるアップデート
持久系スポーツの栄養学は近年、著しく進歩している。その一方で相反する考え方もいまだ多く残されている。このような状況において現時点で最新の情報を整理した文献レビューの結果が「Nutrients」に掲載された。不確実な部分をできるだけ明確にし、アスリートへの推奨事項を要約した内容。炭水化物、蛋白質、脂質、および水分とサプリメントについてまとめられている。
PubMedとMedlineに1980~2018年に掲載された論文から、'nutrition for athletes''sports nutrition''endurance athlete nutrition''supplementation endurance'という語句で検索したところ、67件の報告がヒット。このうち動物実験等の報告を除いた52件を解析対象とした。
本論文では栄養素別かつ運動量別に、日常の摂取量と競技前、競技中、競技後の推奨摂取量について詳細な検討がなされている。例えば炭水化物については、「持久系スポーツに必要とされる理想的摂取量は、情熱的(時に対立的)な議論が交わされている」としつつその論点を整理。日常の摂取量は運動量によって、また競技前・競技中に摂取すべき量は競技時間によって異なると述べている。
以下は論文内で表形式にまとめられている情報の要約。
炭水化物
- 日常摂取量
- 練習時間が1日1時間の場合;5~7g/kg/日、
- 1~3時間の場合;6~10g/kg/日、
- 4時間以上の場合;8~12g/kg/日
- 競技前
- 競技が90分未満の場合;6g/kg/日、
- 90分以上の場合;10〜12g/kg/日+1〜4g/kg(競技の1〜4時間前)
- 競技中
- 競技が2.5時間未満の場合;30〜60g/時、
- 2.5時間以上の場合;60〜70g/時(忍容性があれば90g/時)
- 競技後
- 最初の24時間;8〜10g/kg/日、
- 最初の3〜5時間;1.0〜1.2g/kg/時
タンパク質
- 日常摂取量
- 1.4g/kg/日、3〜5時間ごとに0.3g/kg
- 競技前・競技後
- 競技直前または競技後2時間以内に0.3g/kg
- 競技中
- 高強度/偏心運動の場合0.25 g/kg/時
脂質
- 総摂取エネルギー量の20%未満には制限しない。
- 炭水化物ローディング中もしくは消化器症状が懸念される競技前のみ脂質摂取制限を検討する。
- CLA(共役リノール酸)、オメガ3、MCT(中鎖脂肪酸)サプリメントの役割は不明瞭。
水分
- 初期の水分補給を400〜800mL/時で試みる。
- 個人差(発汗量、発汗ナトリウム量、運動強度、体温、気温、体重、腎臓機能)に応じて調整する。
- 喉の渇きや、体重、尿の色を参考にする。競技後に体重計測を基に喪失した水分の150%を摂取。
ナトリウム
- 発汗量が多い(1.2L/時以上)の場合や2時間以上の長時間の運動、または主観的な感覚次第で初期のナトリウム補給を300〜600mg/時で試みる。
- 個人差(発汗量、発汗ナトリウム量、運動強度、体温、気温、体重、腎臓機能)に応じて調整する。
- 競技後に摂取する水分のナトリウム含有量に留意。
硝酸塩
- 300〜600mgの硝酸塩(最大10mg/kgまたは0.1mmol/kg)、または500mLのビート根ジュースもしくは3~6個のビートを、運動開始90分以内に摂取。
- 競技前に複数日、例えば6日間、高硝酸塩食の摂取を考慮。
酸化防止剤
- トレーニング適応の最大化のため運動前の摂取を避ける。
- 24時間以内の回復が必要な場合のみ運動前に摂取。
- オプションとして、濃い果実、濃い緑茶など。
カフェイン
- 運動前30〜90分に3〜6mg/kg摂取。
- 必要に応じて1〜2時間ごとに上乗せを考慮。
- 9mg/kg以上摂取しても追加効果はなく副作用の懸念がある。
- 3mg/kg以下であっても副作用を伴わずにエルゴジェニックとなり得る。
プロバイオティクス
- 乳酸桿菌とビフィズス菌は上気道や消化管の症状に有用な可能性がある。
文 献
原題のタイトルは、「Nutrition and Supplement Update for the Endurance Athlete: Review and Recommendations」。〔Nutrients. 2019 Jun 7;11(6)〕
Nutrition and Supplement Update for the Endurance Athlete: Review and Recommendations(Nutrients)