プロ・セミプロのアスリートはタンパク質過多で炭水化物不足の傾向あり 文献レビューの結果
アスリートはタンパク質あるいは脂質の摂取を優先し、炭水化物の摂取が少なく、総エネルギー量も不足しがちであることが、系統的文献検索の結果から示された。
アスリートの栄養摂取に関しては、国際オリンピック委員会、米国スポーツ医学会、国際スポーツ栄養学会などから種々の勧告が発表されている。しかし、2011年に報告された文献レビュー(J Sports Sci. 2011; 29 Suppl 1: S115-25)から、アスリートの栄養摂取量は必要量を満たしていない可能性が示されている。摂取エネルギー不足は除脂肪体重の減少、免疫能障害、骨密度低下、外傷の増加、オーバーユース症候群、パフォーマンス低下の原因となる。
本研究は、前述の2011年の既報以降、新たに報告されたデータを含めて系統的文献検索を行った結果報告。2018年4~5月にかけて、MEDLINE、Sports DISCUS、CINAHL、Web of Science、Scopusという5つの文献データベースから、'nutrient requirement''dietary intake''daily food intake''food intake'などの語句を含むスポーツ関連論文を抽出。ヒットした646の研究と、それに関連する参考文献15件をベースとし、独立した2人の研究者が、18歳以上の成人を対象としたチームスポーツに参加するプロまたはセミプロアスリートを対象とする報告に絞り込んだ。栄養摂取に関する詳細な情報が記載されていないもの、英語以外の言語での報告、および重複する報告等を除外し、21件を検討対象とした。
この検討におけるエネルギー摂取量の平均は、男性9.1~16.6 MJ(メガジュール)/日(2,175~3,967kcal/日)、女性7.3~9.8 MJ/日(1,745~2,342kcal/日)だった。これは既報(J Sports Sci. 2011; 29 Suppl 1: S115-25)に比較し女性はほぼ同等であるものの、男性ではより減少している。
栄養素別にみると、総じて炭水化物の摂取を犠牲にし、タンパク質と脂質を摂取している傾向がみられた。
例えば、炭水化物の平均摂取量を示していた17の研究のうち15件は炭水化物摂取量が過少であることを報告している。その一方でタンパク質摂取量に関しては大部分の報告で過量であることを報告している。より詳細にみると、フットボールやラグビー選手を対象とした8つの研究におけるタンパク質摂取量は2.0g/kg/日を超えており、特にオーストリアのプロサッカーチームは平均3.4g/kg/日に達していた。
脂肪に関しても9件の研究で推奨量を上回る摂取が報告されていた。しかしそれにも関わらず多価不飽和脂肪酸の摂取量は推奨される総エネルギー量の10%を下回っていた。
以上の結果をもとに著者らは、「炭水化物の摂取はパフォーマンスの最適化と回復に重要であり、なぜ推奨値を満たしていないのか、アスリートの食事摂取に影響を与える要因のさらなる検討が必要」とまとめている。
原題のタイトルは「Dietary Intakes of Professional and Semi-Professional Team Sport Athletes Do Not Meet Sport Nutrition Recommendations--A Systematic Literature Review」。〔Nutrients. 2019 May 11(5), 1160〕