硝酸塩補給でレクリエーションランナーの10kmタイムトライアルが向上
硝酸塩の摂取は一酸化窒素の生物学的利用能を高め血管拡張を介して筋肉への血流を増加させ、パフォーマンスの向上を期待できる。しかし、硝酸塩を多く含むビートジュース等を用いて本格的なアスリートを対象にその急性効果を検討した研究では、わずかな有用性ありという結果かまたは無効であって、評価は一定していない。
硝酸塩はビーツに多く含まれることが知られている
本論文は、無機硝酸塩の補給とランニングプログラムの組み合わせによる10kmタイムトライアル(TT)の成績、ウインゲートテストによる無酸素状態での最大・平均パワー、および乳酸値への影響を、無作為化二重盲検試験で検討したもの。4週間にわたって各週ごとの変化を詳細に慢性効果を追っていることが特徴。
対象は最低6カ月のランニング経験(10kmのベストタイムが55~65分)をもつ健康な男性20名。参加者を2群に分け30日間にわたり硝酸塩サプリメントまたはプラセボが供給された。試験期間中、エルゴジェリックエイドの摂取は禁止された。ベースラインにおいて両群間に、年齢、体重、身長、除脂肪体重等に有意な差はなかった。
参加者は毎週3回のトレーニングを受けた。その内容は、週の初日に5~7kmの走行、2日目は4~6回の500mスプリント、3日目は9~12kmの長距離セッションというもの。この施行状況にも群間差はなかったが、セッション非参加率が25%を超えた4名は解析から除外された。
結果をみると、10kmTTの成績は、プラセボ群はベースラインから4週間後まで有意な変化がなかったのに対し、硝酸塩群では1~4週の全期間にわたってベースライン時に比しタイムが有意に短縮されていた。また2週目には1週目に比しても有意な短縮効果が観察された。その一方で、ウインゲートテストでの最大パワーや平均パワーはプラセボとの有意な差は認められなかった。
続いて乳酸値に関しては、10kmTTにおいてプラセボ群は3週目と4週目にベースライン時より有意に上昇していた。一方、硝酸塩群はベースラインからの有意な増減はなく、プラセボ群との比較においても2週目以降、有意差をもって低値を示していた。ウインゲートテストにおける乳酸値は、群間差が認められなかった。
以上の結果について著者らは、この検討対象がトップアスリートではなくレクリエーションランナーであったことから対プラセボで有意差が観察されたのかもしれないと考察している。また、乳酸は疲労の原因ではないもののパフォーマンスを低下させるとされるが、今回の結果で硝酸塩群において乳酸値の上昇抑制と10kmTTの成績向上に関連があったことは、それを裏付けるとも述べている。
本研究の限界としては、対象者が少数であったことや、硝酸塩の投与後に血漿亜硝酸塩濃度測定を行っていないことなどを挙げ、さらなる検討が必要と述べている。
原題のタイトルは「Nitrate Supplementation Combined with a Running Training Program Improved Time-Trial Performance in Recreationally Trained Runners」。 〔Sports (Basel). 2019 May 21;7(5)〕