「うっかりドーピング」防止、現場ではどうする? サプリや薬の使用前に確認すべきこと
東京オリンピック・パラリンピックに向けて、国内でスポーツの機運が高まりを迎えている。同時にアスリートや指導スタッフには、ドーピングに関する意識・知識の向上が求められるようになってきた。
ドーピングに関しては1999年に設立された世界アンチ・ドーピング機構(World Anti-Doping Agency, WADA)が、違反物質国際基準の設定、罰則規定の統一化、教育・啓発活動を進めており、国内では2001年設立の日本アンチ・ドーピング機構(Japan Anti-Doping Agency, JADA)が主体となり対策事業を推進している。
ドーピングは、競技成績向上のため意図的に禁止物質を用いることのほかに、疾患治療薬の使用に伴う意図しない「うっかりドーピング」も起こり得る。そのような不用意なドーピングの予防対策として、日本薬剤師会では薬剤師対象のガイドブック発行や、ホットラインを開設している。
薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック
日本薬剤師会は2003年の静岡国体からアンチ・ドーピング活動を本格化させ、翌2004年には日本スポーツ協会からの情報提供に基づき「薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック」を発行し、以来、最新情報を取り込み改訂を重ねている。直近では2018年発効のWADAの国際基準を反映した「2018年版」が最新。
このガイドブックは薬剤師を対象に書かれたもので、アスリートや指導者からドーピングについて相談を受けた薬剤師の対応を約100ページにまとめている。アスリートやスポーツ指導者を読者として想定した内容ではないが、情報が整理されていて具体的な注意事項を把握するのに適している。
例えば、意図しないうっかりドーピングの実例として、かつてオリンピックに参加した国内選手が葛根湯を服用しエフェドリン(中枢神経や交感神経系の賦活作用を有する)が検出された例や、海外製のサプリメントを服用し陽性と判定された国体選手の例が紹介されている。特に近年は後者のような海外製サプリメントによるうっかりドーピングの事例が多いという。
また「特に気をつけたい要指導医薬品・一般用医薬品と健康食品・サプリメント」として、一般名・商品名が一覧できる。使用頻度が高いと思われる滋養強壮薬や風邪薬、あるいは毛髪薬などもリストに収載されている。
さらに、ドーピング検査が実際にどのように実施されているか、疾患のために治療を受ける場合の注意点、大会直前に怪我をした場合の注意点など、アスリート・指導者も知っておくべき情報がQ&Aにまとめられている。
ガイドブックの内容は、日本薬剤師会のサイト内で全文公開されている。
アンチ・ドーピング ホットライン
アスリートや指導者から相談を受けた薬剤師は、まず、このガイドブックを用いて当該医薬品の使用が可能か否かを確認し回答する。しかし明確な判断が困難な場合もあり、次善策として、相談を受けた薬剤師は薬剤師会へFAXまたはメールで問い合わせるホットラインを使用することになる。このような流れにより、アスリートや指導者の現場からの疑問に対応していることも、同ガイドブックに記されている。
なお、このホットラインはアスリートや指導者からの問合せにも対応している。この場合の問合せ受付はメールのみ。摂取はあくまでアスリートの自己責任であることが前提。
関連情報
『薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック 2018年版』について(日本薬剤師会)
アンチ・ドーピングホットラインへのお問合せ(日本薬剤師会)