国内大学男子跳躍選手の競技レベル別、ピリオダイゼーションと栄養素等摂取量の変化
国内の大学男子跳躍選手の栄養素等摂取量を1シーズンにわたり4時点で評価し、経時的な変化を競技レベル別に解析した結果が報告された。全体として、準備期や競技期には摂取量が低下するものの、競技レベルが高い群は高値で推移し、エネルギー量やビタミンB1などの摂取量に、競技レベルによる有意差のみられるフェーズもあるという。筑波大学体育系の麻見直美氏らの研究の結果であり、「Physical Activity and Nutrition」に論文が掲載された。

跳躍選手の摂取量は1年を通してどのように変化? 競技レベルとの関連は?
陸上競技のシーズンは一般に、移行期、準備期、競技期に分けられ、アスリートはこのピリオダイゼーション(期分け)に沿ってトレーニング量や内容を変更している。栄養素等摂取量もこの期分けにあわせて適切に変化させることが、パフォーマンスの最適化に必要。しかし、跳躍選手の栄養素等摂取量がシーズンを通してどのように変化しているのかという調査は、ほとんどなされていない。
また、アスリートの栄養素等摂取量は同一競技であっても競技レベルによって異なることがあり、例えば国内の大学野球選手対象研究でそのような結果が報告されている。よって、跳躍選手においても同様に、競技レベルにより栄養素等摂取量が異なる可能性がある。これらの実態を明らかにすることは、今後の跳躍選手のスポーツ栄養戦略における基礎的なデータとして、重要な知見となり得る。
以上を背景として麻見氏らは、大学男子陸上部の跳躍選手を対象とする縦断的観察研究を実施した。
関連情報
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男子学生跳躍選手を1シーズン追跡し、食事調査を4回実施
この研究には28人の男子学生が参加。2023年12月~翌年8月にかけて4回にわたり、食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)を用いた栄養素等摂取量の調査が行われた。調査は、ピリオダイゼーションの各フェーズの直前1カ月間の摂取量に焦点を当て、移行期として12月、準備期として3月、競技期初期として6月、競技期後期として8月に実施した。なお、参加者の負担軽減のため、FFQの短縮版(66項目のFFQ NEXT)を用いた。
競技レベルについては、関東学生陸上競技対校選手権大会の標準記録を満たしている群(exceeded group;EG)と満たしていない群(non-exceeded group;NEG)の2群に分類した。
解析対象者の主な特徴
28人中8人は怪我などにより、全4回の調査のいずれかに参加できなかったため除外し、20人を解析対象とした。
20人の主な特徴は、年齢20.3±1.5歳、BMI 21.0±1.6、体脂肪率13.2%で、World Athletics(WA)スコアは985±86だった。種目と競技レベルは、走り高跳びが5人(EG=3、NEG=2)、棒高跳び3人(同順に3、0)、走り幅跳び5人(3、2)、三段跳び7人(3、4)であった。
年齢、BMI、体脂肪率はEGとNEGで有意差がなく、WAスコアはEGが1,034±35、NEGが888±65で有意差が認められた。
競技期に向けて摂取量が減ることや、競技レベルで摂取量に差があることが明らかに
栄養素等摂取量の解析に際しては、種目の違いの影響を考慮して統計学的に調整した。
その解析の結果、全体として、移行期→準備期→競技期と進むにつれて、多くの栄養素の摂取量が低下していき、いくつかはフェーズ間で有意差が認められた。また、競技レベルで比較すると、EGの摂取量がNEGより多く、栄養素によっては有意差が存在したフェーズもあった。具体的には以下のとおり。
エネルギー摂取量およびエネルギー産生栄養素等摂取量の変化と群間差
エネルギー摂取量は、競技期の初期と後期はともに移行期より有意に少なく、移行期と競技期初期の摂取量はEGがNEGより有意に多かった。
同様に脂質の摂取量も、競技期の初期と後期はともに移行期より有意に少なく、移行期と準備期の摂取量はEGがNEGより有意に多かった。タンパク質の摂取量については、移行期においてEGがNEGより有意に多かった。
炭水化物の摂取量の変化は有意でなく、群間差も非有意だった。
ビタミン・ミネラル摂取量の変化と群間差
ビタミンB1の摂取量は、競技期の初期と後期はともに移行期より有意に少なく、移行期から競技期初期にかけての3時点で、EGの摂取量はNEGより有意に多かった。なお、ビタミンB1は、競技レベルの2群間で摂取量の変化に有意な交互作用が認められた、唯一の栄養素だった。
また、ビタミンB6の摂取量については、移行期と競技期初期においてEGがNEGより有意に多かった。その他の微量栄養素の摂取量の変化は有意でなく、群間差も非有意だった。
アスリートの栄養素等摂取量はシーズンを通して変化を把握する必要がある
これらの結果について、論文では以下のような考察が加えられている。
まず、競技期に観察されたエネルギー摂取量の低下は、体重あたりのパワーを高めることを意図したものと考えられるとしている。とくに脂質の摂取量の低下が顕著であったことから、この目的のために脂質を少なめにするという調整が行われた可能性が示唆されるという。
次に、競技レベルで比較した場合、全体として競技期初期まではいくつかの栄養素の摂取量に群間差が存在していたものの、競技期後期には有意差が消失していたことに関して、競技期後期の食事調査の時期は8月であったことから、暑さによる食欲の低下が影響している可能性があるとしている。このことから、季節変化に伴う疲労、とくに夏の暑さといった要因は、競技レベルにかかわらずアスリートの適切な栄養摂取を妨げるのではないかと述べられている。
このほかに、EGの摂取量がNEGより高値で推移していたことに関して、パフォーマンスの目標を達成するためにはシーズンを通して適切なエネルギーを維持することが不可欠なことから、摂取量の差がパフォーマンスの差と関連している可能性もあるとされている。また、ビタミンB群の摂取量がフェーズにより変化し競技期に減少していたことについて、食事量の減少に伴うものと考えられるが、ビタミンB群はエネルギー代謝に必要な補酵素であるため、競技期でもこれらビタミンやミネラルの摂取量を維持することが重要ではないかとしている。
著者らは研究の限界点として、サンプルサイズが小さいこと、食事調査に用いたFFQ NEXT短縮版ではサプリメントからの摂取量を十分に把握できていない可能性があることなどを挙げ「結果の一般化には留意が必要」としたうえで、「本研究は陸上競技跳躍選手の栄養素等摂取量の変化に関する基礎データとなり得る。得られた結果は、競技パフォーマンスを最適化し、怪我や病気のリスクを管理するために、シーズンを通して摂取量をモニタリングすることの必要性を強調している」と結論づけている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Variations in energy and nutrient intake across competitive-season phases in relation to athletes’ competitive schedule: the case of university male track and field jumpers by competitive level」。〔Phys Act Nutr. 2026 Jun;30(2):38-42〕
原文はこちら(Korean Society for Exercise Nutrition)








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