国内男子サッカー、陸上長距離走、自転車ロードレース選手のエネルギーバランスと主要栄養素摂取量の報告
日本人男性アスリートのエネルギーバランスがマイナスの傾向であることが報告された。筑波大学大学院人間総合科学研究科の麻見直美氏らが、サッカー、陸上長距離走、自転車ロードレースという3競技の選手を対象に行った横断調査の結果であり、「Physical Activity and Nutrition」に論文が掲載された。

単一チームではなく、環境の異なるさまざまなチームのアスリートを対象とした研究
アスリートは一般生活者よりもエネルギー消費量・摂取量がともに多く、また、とくに持久系競技ではエネルギーバランスが負に傾きやすいことが知られている。加えて、タンパク質は十分または過剰に摂取されやすいのに対して炭水化物が不足しがちであることも、複数の先行研究が報告している。しかし、これまでの研究の多くは、単一のチームのアスリートのみで調査している、または、特定のタイミングのみで調査しているなどの留意点があり、必ずしも全体像を把握できているとは言えない。
これを背景に麻見氏らは、サッカー、陸上長距離走、自転車ロードレースという3競技の男性アスリートを、さまざまなチームから募集し、通常トレーニング時に、エネルギー・栄養素等摂取量と身体活動量を調査するという横断研究を実施した。
3競技、90人の男性アスリートの食事と運動を調査
この研究には、90人の男性アスリートが参加した。競技別の参加者数は、サッカーは15チームから募集された45人、陸上長距離走は10チームから募集された24人、自転車ロードレースは10チームから募集された21人。なお、寮の居住者は除外されている。
年齢中央値は22歳(四分位範囲20~25)で、BMIは同21.7(20.2~23.0)、体脂肪率11.0%(10.0~13.0)であり、競技レベルは全員、Tier3(国内レベル)であった。
栄養素摂取量と身体活動量の調査は、試合やレ―スの直前または直後を除くタイミングで、トレーニング日と休養日の各1日、計2日、webベースで行われた。
食事については、各参加者がその日に摂取したすべての飲食物の写真と、食事記録を送信した。身体活動については、トレーニング時間・内容、起床・就床時刻、夜間以外の睡眠時間、外出時間と移動手段などを報告。これらに基づき、エネルギー摂取量(energy intake;EI)、炭水化物・たんぱく質・脂質摂取量、エネルギー消費量(energy expenditure;EE)を推定した。
なお、週あたりの休息日数は中央値1であり、競技別でもすべて1であった。
トレーニング日は競技にかかわらず、エネルギーバランスが大きくマイナス
解析の結果、全体として摂取量は消費量より少なく、とくに自転車ロードレース選手のトレーニング日には1,000kcal近くの差がみられた。詳細は以下のとおり。データはすべて、中央値kcal(四分位範囲)。
対象全体
トレーニング日;エネルギー摂取量(EI)2,816(2,379~3,325)、エネルギー消費量(EE)3,350(2,934~3,793)、エネルギーバランス-717(-1,095~90)。EIとEEの間に有意差が認められ(p<0.001)、競技別の解析でもすべての競技で、EEと比較してEIが有意に少なかった。
休養日;EI 2,553(2,132~3,015)、EE 2,354(2,133~2,601)、エネルギーバランス173(-242~646)。EIとEEの間に有意な差は認められなかった。ただし、競技別の解析ではサッカーのみはEIが有意に多かった(p<0.05)。
競技別のエネルギーバランス
トレーニング日;サッカー-767(-1,079~98)、陸上長距離走-367(-907~169)、自転車ロードレース-948(-2,577~329)。
休養日;サッカー232(-242~639)、陸上長距離走129(-246~670)、自転車ロードレース207(-199~763)。
エネルギー摂取量、とくに炭水化物の摂取量の不足を防ぐ指導が必要
上記のほかに論文では、炭水化物・たんぱく質・脂質の摂取量や、食事のタイミング別の摂取量について、詳細な解析結果が示されている。ここでは考察として述べられているポイントをいくつか抜粋して紹介する。
全体的にエネルギーバランスが負に傾いていて、自転車ロードレースはとくに顕著
まず、解析対象とした3種類の競技アスリートのすべてで、トレーニング日のEIがEEより有意に少なかった。本研究では、トレーニング以外の身体活動はすべて1.5METsとしてEEを算出したことから、総EEはより大きい可能性があるため、著者らは「示された負のバランスよりも、実際にはさらに負に傾いたエネルギーバランスとなっている可能性が示唆される」と推測している。とくに自転車ロードレースは他の2競技に比べて、よりマイナスのバランスとなりやすいと考えられるという。
一方、休養日には競技にかかわらず負のエネルギーバランスは観察されなかった。ただし、本研究参加者において休養日の頻度は週に1日にすぎず、トータルとしてみればトレーニング日に負であることの影響が強く現れる可能性があるとしている。
以上の結果と考察に基づき、「食事調査の特性として摂取量が過少評価された影響は否定できないものの、本研究参加者のエネルギーバランスはマイナスであると考えられ、改善が必要な可能性がある」と総括されている。
炭水化物が少なく、タンパク質が筋合成に使われていない可能性
多くの先行研究と同様に、本研究でも炭水化物の不足傾向と、タンパク質の過剰傾向がみられた。炭水化物摂取量が少なくエネルギーバランスが負の状態では、タンパク質を摂取しても筋肉の合成ではなくエネルギー基質として利用されることから、体づくりのためにも炭水化物を適切に摂取するような指導の必要性が、改めて確認された。
具体的な指導の方向性として、本研究からは、サッカーと陸上長距離走の選手は朝食と昼食の炭水化物摂取量が夕食より少なかったことから、朝食に米などの穀類を加えることの提案が有用な可能性があるという。
今後の栄養サポート計画の基礎的な資料となり得るデータ
著者らは本研究の限界点として、参加者の競技レベルがTier3に集約していたため、アスリート集団全体を代表しているといえないこと、食事調査の実施日が計2日に限られていたこと、およびエネルギー消費量の評価にゴールドスタンダードである二重標識水(DLW)法を用いなかったことを挙げている。ただし最後の点については、サンプルサイズが90と大きいことと、多くのチームの在籍者から募集したため遠隔地の居住者が多いことから、DLWの採用は現実的でなかったとしている。
論文の結論は、「本研究は日本人男性アスリートにおいて、トレーニング日のエネルギーバランスがマイナスである可能性を示している。とくに炭水化物の摂取量がアスリートに対する推奨量よりも少なかった。これらの知見は、競技パフォーマンスの向上を目的とした栄養サポート計画を検討するうえで有用な参考情報となり得る」とまとめられている。
文献情報
原典論文のタイトルは、「Energy intake and expenditure of Japanese male soccer, long-distance running, and road cycling athletes across multiple teams」。〔Phys Act Nutr. 2026 Jun;30(2):53-62〕
原文はこちら(Korean Society for Exercise Nutrition)








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