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肥満症の治療強化で、体重・内臓脂肪、健康障害リスクはどこまで下がる? 国内多施設共同RCT

肥満症の治療では、健康障害のリスク抑制を目的として減量を手段とする介入が行われる。では、肥満に伴う健康障害のリスク抑制には、体重をどのくらい減らせばよいのだろうか。また、国内の医療環境下でその目標にどのくらい近づけるのだろうか。これらの疑問に対する一つの答えが報告された。多施設共同無作為化比較試験(SLIM-TARGET)の結果であり、千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・老年内科学の越坂理也氏、横手幸太郎氏らSLIM-TARGET study groupによる論文が「Endocrine Journal」に掲載された。

肥満症の治療強化で、体重・内臓脂肪、健康障害リスクはどこまで下がる? 国内多施設共同RCT

日本人の肥満症の治療ゴール達成には何%の減量が必要? IoTツールの有用性は?

国内では、肥満に伴い健康障害が生じている状態または内臓脂肪型肥満を「肥満症」と診断し治療介入の対象としている。肥満症の治療目的は肥満に伴う健康障害リスクの抑制であり、減量はその主要な介入手段として位置付けられ、食事療法や運動療法、薬物療法、外科療法が行われている。

そして、減量の目標としては、日本肥満学会『肥満症診療ガイドライン2016』で提唱された-3%以上という数値が、現行のガイドライン(2022年版)でも推奨されている(BMI35以上の高度肥満では-5~10%を目安とし合併症を考慮)。しかし、この数値のエビデンスは強固なものとは言えず、この目標を達成するための治療法に関するリアルワールドでのエビデンスも十分とは言えない。また近年、IoT(internet of things)ツールが急速に普及し、身体活動量や血圧などのデータを患者-医療者間で共有し治療に役立てる環境整備が進められているが、その有用性のエビデンスは限られている。

これらを背景として、日本肥満学会が認定する肥満症専門病院26施設が参加して、「肥満症に対する効果的な治療戦略と健康障害の改善に資する減量数値目標を見出すための介入研究(SLIM-TARGET*)」が実施された。

* SLIM-TARGET:Study of weight loss intervention to find an effective strategy for obesity management and the TARGET

BMI25以上の肥満症患者を2群に分け、標準療法または強化療法で1年間介入

SLIM-TARGET試験の参加者は、BMI25以上で2種類以上の肥満関連健康障害を有する18~74歳の肥満症患者294人。スマートフォンを所有し自分で操作できることを条件とした。二次性肥満、管理不良の糖尿病や高血圧(HbA1c10%以上、SBP180mmHg以上)、重度の心肺・腎・肝機能障害、消耗性疾患、妊娠・授乳中などは除外されている。

年齢、性別、BMIの分布(高度肥満者の割合)の偏りに配慮したうえで、無作為に標準療法群と強化療法群の2群に割り付け、12カ月間介入し、介入終了後も12カ月間(計24カ月間)追跡した。

標準療法群

減量目標はベースラインから-3%以上、高度肥満では-5%以上。介入手段は、(1)日々の食事と体重の記録、(2)エネルギー摂取量を25kcal/kg以下とする食事療法(介入開始時と6~12カ月ごとに栄養士が指導)、(3)医療者監督下での週150分の中強度運動。

強化療法群

減量目標はベースラインから-7%以上、高度肥満では-10%以上。介入として、標準療法群に行った(1)~(3)を実施。ただし栄養指導は1~2カ月ごととしてフォーミュラ食も使用、運動量は週150~225分。6カ月以内に-3%(高度肥満では-5%)の減量が達成されない場合は治療をより強化した。また高度肥満者には、GLP-1受容体作動薬、マジンドールの使用、減量・代謝改善手術の施行を考慮した。

IoT介入

参加者全員に、IoT機能を備えた血圧計、活動量計、体組成計を供与した。また、標準療法群と強化療法群の各群から無作為に抽出された半数は、3種類の健康管理ソフトを各自のスマホにインストールしてもらい、医療スタッフが介入遵守状況をモニタリングし診療に活用した。

減量目標の達成率には有意差がないものの、肥満関連健康障害の寛解率には有意差

介入からの脱落等を除外し、解析対象は標準療法群139人、強化療法群140人となった。ベースライン時点において、強化療法群に高血圧患者と利尿薬の処方が多く、標準療法群にDPP-4阻害薬の処方が多いという差があった以外、年齢、性別、BMI、高度肥満者の割合、ウエスト周囲長、内臓脂肪面積、HbA1c、血圧、血清脂質、eGFRなどに有意差はなかった。また、8種類の肥満関連健康障害(各種代謝性疾患とMASLD、肥満関連腎症、睡眠時無呼吸症候群、筋骨格系疾患)の有病率や各種薬剤の処方率も有意差がなかった(前述の高血圧有病率、利尿薬・DPP-4i処方率を除く)。

体重の変化は差がなく、内臓脂肪面積の絶対値は強化療法群で大きく減少

介入12カ月後(介入終了時点)までの体重の変化は、標準療法群が-1.7%、強化療法群が-2.5%で有意差はなかった(p=0.214)。介入終了から12カ月後(ベースラインから24カ月後)では、同順に-2.3%、-2.5%で、やはり有意差がなかった(p=0.875)。

内臓脂肪面積は、12カ月時点で標準療法群は-4.5%、強化療法群は-7.9%と、両群で体重よりも顕著に減少しており、群間差は非有意だった(p=0.236)。ただし、絶対値で比較すると、標準療法群が-8.9cm2、強化療法群が-20.46cm2であり、後者が有意に高値だった(p=0.039)。24カ月時点では同順に-13.07cm2、-18.05cm2だった(p=0.552)。

主要評価項目の達成率には有意差はなし

主要評価項目は、12カ月後(介入終了時点)の減量目標への到達および2種類以上の肥満関連健康障害の改善とされていた。標準療法群の26.2%、強化療法群の24.8%がこれを満たし、達成率に有意差はなかった(年齢、性別、ベースラインのBMI・肥満関連健康障害の数を調整したオッズ比〈aOR〉0.930〈95%CI;0.512~1.688〉)。

副次評価項目のうち、健康障害の寛解率などは強化療法群が有意に良好

副次評価項目には、体重・内臓脂肪面積の変化、健康障害の状態、臨床検査値の変化、治療モチベーションの変化などが設定されていた。これらのうち、前述の体重と内臓脂肪面積の変化以外の主な結果は以下のとおり。

健康障害の寛解率

12カ月時点および24カ月時点に1種類以上の健康障害が改善した割合は、両群ともに約60%であり有意差はなかった。ただし、12カ月時点での健康障害の寛解率(健康障害が認められない参加者の割合)は、標準療法群6.2%、強化療法群16.9%であり、後者で有意に高かった(aOR3.079〈1.075~8.823〉)。

臨床検査値の変化

HbA1cは両群ともに介入3カ月後に低下し、強化療法群は24カ月後まで維持されたが、標準療法群は24カ月後にベースライン値へ戻っていた。血圧については、試験期間を通じて標準療法群よりも強化療法群が低値で推移し、とくに介入後の早期(3~6カ月時点)には有意な群間差が認められた。肝逸脱酵素のAST、ALT、γGTPは強化療法群で低い傾向にあった。

治療モチベーションの変化

治療に対するモチベーションを表すスコアは、24カ月時点において、標準療法群がベースラインから-1.9%の低下、強化療法群は+10.9%の上昇であり、有意差が認められた(p=0.004)。なお、IoTアプリケーション利用者において、肥満関連健康障害の改善が認められた参加者はアプリ使用を継続する傾向がみられた。

肥満症治療を強化し健康アウトカムを改善するうえでの課題が浮上

著者らは本研究の限界点として、研究期間(2018年1月~2024年3月)中にCOVID-19パンデミックが発生し運動機会の制限などの影響が生じたこと、ベースライン時点で既に血清脂質等への薬物治療が行われている患者が少なくなく、一部のアウトカムは介入の差を示しにくい状況であったことなどを挙げている。そのうえで、研究から得られた注目すべきポイントを、論文の考察においていくつか挙げている。

減量効果以上に内臓脂肪面積が減少

本研究では、介入による体重減少を上回る内臓脂肪面積減少が認められた。日本人は欧米人に比べて内臓脂肪が蓄積しやすいことが知られており、心血管代謝疾患との関連が強固であることから、体重減少が少なくても内臓脂肪が大きく減るという結果は、国内の肥満症治療の臨床に重要な意味をもつと考えられる。

モチベーションの向上、脱落・リバウンドの少なさ

強化療法群においてはモチベーションの向上が認められた。また脱落率は、標準療法群が23%、強化療法群は15%であった。これらが、介入終了の体重のリバウンドの少なさに寄与した可能性がある。

治療強化を阻むクリニカルイナーシャ

強化療法群では減量目標未到達の場合、より強力な介入を行うこととされていたが、GLP-1RAの処方率は20%前後で推移し、減量・代謝改善手術が行われたのは1例のみであって、マジンドールは処方されていなかった。これには研究実施時点のエビデンス状況や保険適用条件の影響もさることながら、医師-患者双方にみられるクリニカルイナーシャ(臨床的惰性)の存在の関与も想定される。

IoT活用の課題

IoTアプリ利用が割り当てられた参加者の多くが、3~6カ月で利用を中止していた。しかし減量目標に到達した参加者、健康障害が改善した参加者は、アプリ使用を継続する傾向にあった。中止の理由として、使いにくさ、関心の低さ、効果を実感できないことなどが考えられ、今後の改善が期待される。

これらの考察に基づき結論は、「強化療法を行ったにもかかわらず全体として減量目標に到達せず、主要評価項目の達成率に有意差は認められなかった。ただし、介入終了時点で健康障害が寛解していた参加者は、強化療法群が有意に多かった。また強化療法は内臓脂肪面積を減少させ、早期の血圧改善をもたらし、治療モチベーションを高めた」と総括されている。

文献情報

原典論文のタイトルは、「Study of weight loss intervention to find an effective strategy for obesity management and the TARGET of weight loss amount for reducing health disorders (SLIM-TARGET): a randomized controlled trial」。〔Endocr J. 2026 Sep 2〕
原文はこちら(J-STAGE)

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