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更年期症状と食事を摂るタイミングの関連を調査 脂質食品をいつ摂るかが心臓の不快感の強さや頻度と関連

女性の更年期症状の現れやすさが、脂質食品を摂取するタイミングと関連しているとする研究結果が報告された。イタリアの過体重・肥満の閉経後女性を対象に行われた横断研究によるもので、著者らは更年期障害の栄養療法として時間栄養学の応用可能性を示すものとしている。

更年期症状と食事を摂るタイミングの関連を調査 脂質食品をいつ摂るかが心臓の不快感の強さや頻度と関連

女性の更年期と時間栄養学

性ホルモン分泌の変化による女性の更年期は、体重増加、内臓脂肪蓄積、インスリン感受性低下、心血管代謝疾患リスク上昇などの変化をもたらしやすい。これらの変化が食習慣を含むライフスタイルにより修飾されることも知られている。

一方、多くの研究から食事摂取のタイミングが生体リズムに影響を及ぼし、疾患リスクにも影響を与える可能性が示唆されてきている。エネルギー産生栄養素の中でとくに脂質はホルモンバランスへの影響が大きいことが報告されており、また動物実験では脂質摂取の時間帯により概日リズムが変化することが示されている。

これらの知見から、更年期の女性、とくに過体重や肥満である心血管代謝リスクが高い閉経後女性では、脂質食品の摂取タイミングが更年期症状の出現に関係している可能性が想定される。しかしこれまでのところ、そのような視点で行われた研究の報告はみられない。

BMI25以上の閉経後女性100人の食事・栄養素摂取タイミングと更年期症状の関連を検討

この研究は、2023年にイタリアのフェデリコ2世ナポリ大学の内分泌外来を受診した、過体重または肥満の閉経後女性全員を対象にスクリーニングを実施し、適格条件を満たし研究参加の同意を得られた患者を対象に実施された。適格条件は閉経後(月経が1年以上ない、または子宮摘出後)でBMI25以上であり、除外基準はホルモン療法やインスリン療法中の患者、慢性疾患(呼吸器、腎臓、肝臓、脳などの疾患)、重度のメンタルヘルス疾患、食品アレルギー、何らかの特定の食事スタイルを採用していることなどだった。

100人の閉経後女性がこれらの基準を満たし解析対象とされた。おもな特徴は、年齢57.2±7.3歳、BMI36.0±7.4で、23%が喫煙者、81%が運動不足であり、44%が脂質異常症、43%が高血圧、13%が2型糖尿病だった。

更年期症状の評価

更年期症状の有無と強さは、更年期障害評価尺度(Menopause Rating Scale;MRS)で評価した。MRSは11の症状について、それぞれ0~4点で回答してもらい、合計スコアは0~44点の範囲となる。

本研究参加者の平均スコアは22.7±7.8で、中等度以下(スコア12点以下)が9%、やや重度(marked)が10%、重度(severe)が81%だった。頻度の高い症状は、不安、性的問題、関節や筋肉の不快感(いずれも85%)、睡眠障害(81%)などだった。

食習慣の評価

食習慣は7日間の食事記録により把握したうえで、起床から昼食にかけて摂取したものを1日の前半の食事、昼食終了の間食から就寝にかけて摂取したものを1日の後半の食事と二分し評価した。

摂取エネルギー量は1,436.3±401.2kcalで、1日の前半に53.3±13.5%、後半に46.7±13.5%摂取していた。炭水化物は170.7 ± 69.2gで、1日の前半に60.2 ± 17.1%、後半に39.8 ± 17.1%摂取していた。タンパク質は64.3 ± 18.5gで、1日の前半に46.9 ± 19.4%、後半に53.1 ± 19.4%摂取していた。脂質は58.0 ± 21.2gで、1日の前半に48.9 ± 19.4%、後半に51.1 ± 17.9%摂取していた。

脂質を1日の後半に多く摂るBMI25以上の閉経後女性は心臓の不快感が強い

エネルギー量と脂質摂取量の多寡は全体の中央値に基づき分類した。

まず、夕食の摂取エネルギー量の多寡で二分したうえで特徴を比較すると、年齢、初経・閉経年齢、BMI、閉経後の体重増加、運動習慣の有無、自然閉経/外科的閉経の割合、脂質異常症・高血圧・糖尿病の割合には有意差がなかった。評価した項目の中で唯一、喫煙率のみに有意差が認められ、夕食の摂取エネルギー量が多い群の喫煙率が高かった(10 vs 36%、p=0.002)。

1日の前半の摂取エネルギー量、脂質摂取量の多さは心臓の不快感の少なさと関連

次に1日の前半の摂取エネルギー量の多寡で二分したうえで、更年期障害評価尺度(MRS)のスコアを比較すると、心臓の不快感のスコアに有意差が認められ、摂取エネルギー量が少ない群のほうがその症状が強く認められた(1.5±1.3 vs 1.0±1.2、p=0.045)。その他の10項目の症状、および11項目合計のスコアは、有意差がなかった。

1日の前半の脂質摂取量の多寡で二分したうえでMRSスコアを比較すると、やはり心臓の不快感のスコアに有意差が認められ、脂質摂取量が少ない群のほうが強かった(1.5±1.3 vs 0.9±1.2、p=0.013)。一方、膀胱症状については、1日の前半の脂質摂取量が多い群で強く認められた(0.7±1.1 vs 1.2±1.3、p=0.040)。その他の9項目の症状、および11項目合計のスコアは、有意差がなかった。

1日の後半での脂質摂取量の多さは心臓の不快感の強さと関連

次に1日の後半の摂取エネルギー量の多寡で二分したうえでMRSスコアを比較すると、有意差のある症状は特定されず、11項目合計のスコアも有意差がなかった。

1日の後半の脂質摂取量の多寡で二分したうえでMRSスコアを比較すると、心臓の不快感のスコアに有意差が認められ、脂質摂取量が多い群のほうが強かった(0.9±1.2 vs 1.6±1.3、p=0.007)。その他の10項目の症状、および11項目合計のスコアは、有意差がなかった。

脂質摂取のタイミングが心臓の不快感の強さと有意に相関

最後に、1日の前半の脂質摂取量(%)、および、1日の後半の脂質摂取量(%)と、心臓の不快感のスコアとの関連を検討。交絡因子未調整モデルで、1日の前半の脂質摂取量が多いほど心臓の不快感のスコアが低く、反対に1日の後半の脂質摂取量が多いほど心臓の不快感のスコアが高いという有意な関連が認められた。

年齢、BMI、総摂取エネルギー量を調整後にも同様の有意な関連が認められた(r=0.219、p=0.028〈1日の前半の脂質摂取量についてはr=-0.219〉)。

この結果に基づき著者らは「エネルギーと脂質を1日の後半に摂取する習慣は、過体重・肥満の閉経後女性における更年期症状の頻度や強さと関連していた。この食習慣は、これらの女性の心血管系の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。よって、エネルギーと脂質を1日の早い時間帯に摂取するという時間栄養行動を採用することが、過体重または肥満の閉経後女性に有益である可能性がある」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Timing matters: lipid intake and its influence on menopausal-related symptoms」。〔J Transl Med. 2025 Aug 18;23(1):934〕
原文はこちら(Springer Nature)

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