スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

神経性過食症の女性に対する「治療者誘導型オンライン認知行動療法」の有効性が国内多施設RCTで判明

神経性過食症の女性患者を対象とする、全国6大学の付属病院とナショナルセンター1施設による多施設共同ランダム化比較試験の結果、治療者誘導型オンライン認知行動療法の有効性をアジアで初めて、また世界で2例目として実証された。「JAMA Network Open」に論文が掲載されるとともに、関係機関のサイトにプレスリリースが発表された。この介入により、過食や代償行動のエピソードが減少し、寛解率も向上することが明らかにされたという。著者らは「病院に通う負担を軽減し、自宅で専門的な治療を受けることができる新しい選択肢として、今後の広い活用が期待される」としている。

神経性過食症の女性に対する「治療者誘導型オンライン認知行動療法」の有効性が国内多施設RCTで判明

研究の概要:治療アクセスが限られている過食症患者にオンラインで専門治療を提供

神経性過食症は、深刻な健康障害を伴う精神疾患だが、科学的根拠のある認知行動療法を提供可能な施設は都市部に偏在しており、専門家も少ないため、専門的な治療を受ける機会のない患者が多数存在する。このような問題を解決するため、日本文化に合わせた治療者誘導型オンライン認知行動療法が開発され、その有効性が全国6大学病院、1ナショナルセンターによる多施設共同ランダム化比較試験で検証された。

外来診療中の神経性過食症と診断された女性61人を対象とする研究の結果、通常治療のみのグループ(外来診療のみ)に比べて、治療者誘導型オンライン認知行動療法グループは、過食と代償行動(嘔吐・下剤乱用など)の回数が顕著に減少したことを、アジア圏で初めて実証した。これは2024年7月のドイツの研究チームの報告に次いで、世界で2番目の報告。

これにより、外来通院の負担を減らし、自宅で専門的な治療を受けられる新たな選択肢として、治療者誘導型オンライン認知行動療法の普及が期待される。

研究の背景と経緯:日本の文化を考慮したオンライン認知行動療法の模索

神経性過食症は有病率が増加しつつあり、慢性化や深刻な身体的・心理的な健康障害を引き起こすリスクを伴う。しかし、効果的な治療を受けられる機会は依然として限られている。

とくに日本を含むアジア圏では、神経性過食症の女性を対象とした治療者誘導型オンライン認知行動療法の有効性や受容性が十分に検証されていなかった。そこで本研究では、日本文化に適応させた治療者誘導型オンライン認知行動療法の有効性と受容性を、日本全国の多施設共同研究で科学的に評価した。

研究の内容:通常治療に比べ、過食や代償行動の合計頻度が有意に減少、寛解率向上

本ランダム化比較試験は、スウェーデンのリンショーピング大学の協力を得て、2022年8月~2024年10月まで、日本国内の6大学病院、1ナショナルセンター(福井大学、鹿児島大学、東北大学、千葉大学、徳島大学、獨協医科大学埼玉医療センター、国立精神・神経医療研究センター)で実施した。対象は、DSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders fifth edition;精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)で神経性過食症と診断され、BMIが17.5以上で、インターネット環境があり、過去2年間に同様の治療を受けていない13~65歳の女性。

合計61人が本臨床試験に参加し、治療者誘導型オンライン認知行動療法を加えたグループ(31人)と、通常治療のみのグループ(30人)に分けられた。平均年齢は27.8歳、平均BMIは21.1、平均病歴は9.3年で、約半数が就業者だった。

治療者誘導型オンライン認知行動療法を受けたグループでは、通常治療のみのグループに比べ、過食や代償行動の合計頻度の減少が統計的に有意に大きく(平均約10回減少)、重症度の改善が確認された(図1)。さらに、寛解率も統計的に有意に高くなった(約45~55% vs 約13%、図2)。

図1 過食および代償行動エピソード数の12週間後の変化

過食および代償行動エピソード数の12週間後の変化
治療者誘導型オンライン認知行動療法群(Guided ICBT group、左)では、治療前と比べて12週後に過食・代償行動の合計頻度が約10回減少し、重症度の有意な改善が認められた。通常治療群(Usual care group、右)では明確な変化は見られなかった。
(出典:徳島大学)

図2 各グループにおける寛解した患者の割合

各グループにおける寛解した患者の割合
摂食障害評価質問票(EDE-Q)の基準値(<2.34および<2.80)に基づき、寛解した患者の割合を示している。治療者誘導型オンライン認知行動療法(ICBT)群では、いずれのカットオフでも寛解率が約45~55%と高く、通常治療群(Usual care)の約13%に比べて統計的に有意な差が認められた。
(出典:徳島大学)

今後の展開:誰もが適切な治療を受けることのできる社会を目指す

本研究の結果から、外来診療中の神経性過食症の女性に治療者誘導型オンライン認知行動療法を提供することで、重症度が改善すること、そして寛解者が増えることが示唆された。

この治療法は、自宅で専門的な治療を受けることができる新しい選択肢として、今後の活用が期待される。著者らは、「より幅広い患者への対応や長期的な効果の確認を進めていき、地域による専門治療提供の障壁を取り除き、誰もが適切な治療を受けることのできる社会を目指していく」と述べている。

プレスリリース

神経性過食症女性に治療者誘導型オンライン認知行動療法を提供して過食と代償行動エピソードを減らすことに成功(徳島大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Guided Internet-Based Cognitive Behavior Therapy for Women With Bulimia Nervosa: A Randomized Clinical Trial」。〔JAMA Netw Open. 2025 Aug 1;8(8):e2525165.〕
原文はこちら(American Medical Association)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2025後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ