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「摂取量=吸収量ではない」エナジードリンク・コーヒー・紅茶などのカフェイン吸収量を解析

コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインのうち、実際に体内に吸収される割合(バイオアベイラビリティー〈生体利用能〉)を、消化管を模した実験系で検討した研究結果が報告された。検討した飲料の中では、コーヒーの生体利用能は最も低かったが、カフェイン含有量そのものが高いため、吸収されるカフェインの量としては多くなりやすいことなどが示されている。

「摂取量=吸収量ではない」エナジードリンク・コーヒー・紅茶などのカフェイン吸収量を解析

「カフェインの含有量×摂取量=体内で利用されるカフェイン量」ではない

カフェインはコーヒーや紅茶などの植物成分に含まれている天然化合物で、その作用は古くから研究されてきている。また、炭酸飲料、エナジードリンク、サプリメントなどに用いられ、精神的な刺激作用を有する食品として世界中で広く摂取されている。加えて、反応時間の短縮や身体機能の刺激作用があるため、アスリートの間ではとくに多く利用されている。

その一方、よく知られているように、カフェインには、心拍数増加、不安、不眠などの悪影響があるため、多くの国や組織が摂取上限量を示している。例えば欧州食品安全機関(European Food Safety Authority;EFSA)は、1機会につき200mg以上または1日につき400mgを超えるカフェインは悪影響を来し得ると警告している。ただし、EFSAの推奨は、飲食物中の成分のバイオアクセシビリティーやバイオアベイラビリティーが考慮されていないため、カフェインを含む飲料の摂取量の情報のみでは、実際の曝露量の推定が不確かなものになってしまう可能性がある。つまり、バイオアクセシビリティーやバイオアベイラビリティーが低い飲料と高い飲料では、カフェインの量が同等になる容量を摂取したとしても、実際に体内で利用されるカフェインの量が異なる。

このような未解決のギャップに対応するため、本論文の著者らは、ヒトの消化管を模したin vitro実験系で、カフェインのバイオアクセシビリティーとバイオアベイラビリティーを製品ごとに検討した。なお、バイオアクセシビリティーとは摂取した成分のうち消化過程で吸収可能な状態になる割合のことで、バイオアベイラビリティーとは実際に体内に吸収・利用される割合のことであり、後者については日本語で「生体利用能」と呼ばれている。

ヒト消化管を模したin vitro実験系で、さまざまな飲料のカフェイン生体利用能を評価

この研究では、スペインのマドリードのスーパーマーケットで販売されている、さまざまなブランドのソフトドリンク、エナジードリンク、コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェイン摂取後の動態が、ヒトの消化管を模したin vitroのモデルで分析された。このモデルは、口腔・胃・小腸に相当する酵素やpH環境を再現したもので、吸収可能な状態に消化されるカフェインの割合(バイオアクセシビリティー)を評価。また、腸管での吸収を模倣した分子量12kDaの透析膜を用いて、透過したカフェイン量から、バイオアベイラビリティー(生体利用能)を推定した。

カフェイン含有量はコーヒーが顕著に高い

まず、各飲料に含まれているカフェインの量を測定し、製品ラベルに記されている値とよく一致することを確認した。
測定された含有量はコーヒーが最も高く、2,333mg/Lだった。コーヒー以外では、エナジードリンクが242~330mg/L、紅茶は約170mg/L、緑茶は約100mg/L、ソフトドリンクは100mg/L未満だった。

バイオアクセシビリティーは、カテゴリーによらず、どれもほぼ100%

次に、摂取したカフェインのうち吸収可能な状態になる割合をみると、83~112%の範囲に分布し、総じて高いバイオアクセシビリティーが認められた。示されたこのように高いバイオアクセシビリティーについて論文中では、「カフェインの溶解性が高いため消化管内での消化過程でほとんど分解されないことを示唆していると考えられる」と考察されている。

バイオアベイラビリティーは、コーヒーは低いが吸収量自体は多い

続いて評価したバイオアベイラビリティーは、52~79%の範囲に分布していた。製品カテゴリー別にみると、ソフトドリンクが65.6~79%、緑茶が76%、紅茶70~75%、エナジードリンク52~72%で、コーヒーは62%と低かった。著者らは、「コーヒーに含まれるカフェインのバイオアベイラビリティーは高くはないが、コーヒーはカフェイン含有量自体が多いため、吸収されるカフェインは多くなるだろう」としている。

摂取1機会あたりのカフェインの体内吸収量はエナジードリンクが多い

最後に、上記の各飲料のカフェインのバイオアベイラビリティーを基に、解析対象とした製品の容量(ボトル製品の場合)、または標準的な1杯あたりの容量(コーヒー、紅茶、緑茶)を摂取した場合に、生体に吸収されるカフェインの量を求めた。すると、エナジードリンクは1本で89~115mgとなり、製品カテゴリー別で最も多く、次いでコーヒーが43~86mgだった。そのほかの飲料は、紅茶が24~25mg、緑茶15mg、ソフトドリンク10~24mgとなった。

なお、この試算に基づくと、仮にコーヒー以外からカフェインを一切とらないと仮定した場合、エスプレッソコーヒーのシングルなら1日最大9杯、ダブルなら最大4杯まで摂取が許容されるという。ただし、カフェインはコーヒー以外の飲料や嗜好品、医薬品などにも含まれているため、実際にはこれより少量で推奨の上限に達する。

これらの結果に基づき論文の結論には、「製品のラベルにはカフェイン含有量が記載されているが、最終的に血液中に到達する量は、製品により大きく異なる可能性がある」とし、また健康リスクの評価のため、エナジードリンクに含まれているカフェインの上限量設定を検討する必要性に言及している。

文献情報

原題のタイトルは、「How much consumed caffeine is actually absorbed? Bioaccessibility and bioavailability in energy drinks, infusions and soft drinks」。〔Food Chem. 2025 Jul 21;492(Pt 3):145626〕
原文はこちら(Elsevier)

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