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十代後半の女性の低体重や肥満は、いずれも後年の不妊症リスクの増加につながる 日本ナースヘルス研究

18歳時点の低体重や肥満と、後年の不妊症リスク増加との間に有意な関連のあることが、国内の看護職女性を対象とした疫学研究から明らかになった。若年期の月経不順などの交絡因子を調整後にも、この関連は維持されるという。研究代表者の群馬大学食健康科学教育研究センターの井手野由季氏らの論文が「Maturitas」に掲載された。

十代後半の女性の低体重や肥満は、いずれも後年の不妊症リスクの増加につながる 日本ナースヘルス研究

思春期後期のBMIの逸脱は、成人後の不妊症のリスクを高めるか?

妊娠を希望した時点での低体重(やせ過ぎ)や肥満が、不妊症のリスクであることは既に知られている。ただし、大半がまだ結婚をしておらず、「妊娠などずっと先の話」と考えているであろう10代女子のBMI適正範囲からの逸脱が、将来の妊孕性に及ぼす影響については、摂食障害やアスリートでの研究を除いてほとんど研究されておらず、依然として不明。一方で日本では近年、若年女性の低体重化が重要な健康課題の一つとして位置付けられている。

これらを背景に井手野氏らは、「日本ナースヘルス研究(Japan Nurses' Health Study;JNHS)」参加者を対象とした後方視的研究を行い、詳細に検討した。

18歳時点の低体重と肥満が後の不妊症と有意な関連

JNHSは20年以上にわたり追跡調査を行っている疫学研究で、登録時調査が2001~07年に国内の21歳以上の看護職女性4万9,927人が参加して行われた。今回の研究ではこの登録時調査データを用いた。適格基準を年齢が30~44歳で既婚、閉経前であること、除外基準をパートナーの男性不妊、癌の既往、18歳時点のBMIが不明などとして、1万5,907人を解析対象とした。

解析に必要なデータはすべて、自記式質問票により得た。例えば不妊症の有無については、「今までに妊娠しようとして、2年以上成功しなかったことがありますか?」という質問に対する「はい」「いいえ」の回答で判断した。

17.8%が不妊症

まず、解析対象とした1万5,907人の特徴をみると、年齢は37.3±4.2歳、現在のBMIは21.6±2.9、18歳時点のBMIは21.0±2.3kg/m2であり、2,825人(17.8%)に不妊の経験があった。

18歳時点のBMIをカテゴリーに分類すると、低体重(18.5kg/m2未満)群が12.8%、普通体重(18.5~25kg/m2)群82.3%、過体重(25~30kg/m2)群4.5%、肥満(30kg/m2以上)群0.4%だった。この4群を比較すると、現在のBMI、喫煙習慣、18~22歳時点での月経不順に有意差が認められた(p<0.0001)。一方、18~22歳時点での身体活動習慣、20~24歳時点での飲酒習慣、および教育歴に関しては差がなかった。

不妊症の割合については、18歳時点の低体重群が20.8%、普通体重群が17.2%、過体重群が17.9%、肥満群が35.0%であり(全体では前述のように17.8%)、群間に有意差が認められた(p<0.0001)。

交絡因子を調整後も、18歳時点のBMIカテゴリーと有意な関連

次に、不妊症リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、現在のBMI、喫煙・飲酒習慣、20~22歳での月経不順、20~24歳での身体活動習慣、教育歴)を調整したロジスティック回帰分析を施行。すると、18歳時点の普通体重群に比べ、低体重群(OR1.31〈95%CI;1.16~1.47〉)、および、肥満群(OR1.82〈同1.04~3.17〉)において、不妊症のリスクが有意に高いという関連が示された。過体重群は有意な関連を示さなかった(OR0.93〈0.76~1.14〉)。

続いて、不妊症の原因別の解析が行われた。その結果、子宮内膜症(126人)、卵管の問題(160人)、卵巣の問題(409人)、子宮頸部の問題(11人)についてはいずれも、18歳時点のBMIカテゴリーと不妊症リスクとの間に有意な関連は示されなかった。一方、原因として最多を占めた、「不明」(1,606人)に関しては、18歳時点に低体重であったことと有意な関連(OR1.29〈1.11~1.49〉)が認められた(過体重/肥満は有意な関連なし)。

次の研究テーマは「思春期のBMIへの介入が不妊症リスク低下につながるか?」

著者らは本研究の解析データが自己申告に基づくものであることなどを、研究上の限界として挙げている。ただし、研究参加者が看護職女性であり、回答内容は比較的正確と考えられるとしている。

論文の結論は、「摂食障害やアスリートではない、日本の一般女性において、思春期の低体重および肥満は、その後の不妊症の潜在的なリスク因子である。さらに、原因を特定できない不妊症において、思春期の低体重が一因となっている可能性がある」とまとめられている。また、「今後のさらなる研究によって、思春期のBMIの逸脱を修正することが、その後の不妊症リスクの低下に寄与するかどうかが明らかになるのではないか」と付け加えられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Being underweight or obese in adolescence may increase the risk of female infertility later in life: The Japan Nurses' Health Study」。〔Maturitas. 2025 Feb:193:108172〕
原文はこちら(Elsevier)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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