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ウコンや鶏肉エキスなどの多成分サプリが、ラグビー試合後の筋肉損傷マーカーを抑制

ウコン、鶏肉やりんごのエキス、古代泥炭などからなる多成分サプリメントが、ラグビーの試合により生じる筋損傷を抑制することを示唆するデータが報告された。対プラセボでCKやLDHというマーカーに有意差が認められたという。台湾からの報告。

ウコンや鶏肉エキスなどの多成分サプリが、ラグビー試合後の筋肉損傷マーカーを抑制

多成分化で相乗効果への期待

多成分サプリ(multi-ingredient supplement;MIS)は、複数の成分を1回で摂取できるという利便性に加えて、それぞれの成分が相乗的に働くことを期待して作られることが多い。例えば分岐鎖アミノ酸とクレアチン、β-アラニンからなるMISには、下り坂のランニング後の炎症マーカーの抑制に資することなどが報告されている。

今回紹介する研究では、ウコン、鶏肉エキス、りんごエキス、古代泥炭からなるMISが、ラグビーによる筋損傷を抑制するかが検証された。ウコンの主成分であるクルクミンは、抗炎症作用と抗酸化作用を有することが報告されている。鶏肉にはイミダゾールやカルノシンが豊富で、やはり抗炎症作用、抗酸化作用があり、またとくにアジア地域で鶏肉は疲労回復によいとされている。りんごエキスと古代泥炭はポリフェノールとマルチミネラルを供給し、筋肉の機能回復に向くとされている。

研究室内でなくラグビーの試合で効果を検討

研究の対象は国立台湾体育運動大学の学生から募集された、競技歴3年以上の男子ラグビー選手15人。研究デザインは、二重盲検無作為化クロスオーバー試験で、多成分サプリまたはプラセボによる介入を各14日行ったのち、80分(ハーフタイム15分)のラグビーの試合を実施。試合直前と直後、試合終了24時間後、48時間後に血液サンプルを採取し、筋損傷マーカーとしてクレアチンキナーゼ(creatine kinase;CK)と乳酸脱水素酵素(lactate dehydrogenase;LDH)、炎症マーカーとして腫瘍壊死因子-α(tumor necrosis factor-α;TNF-α)、酸化ストレスのマーカーとしてマロンジアルデヒド(malondialdehyde;MDA)を測定した。各条件の試行には14日間のウォッシュアウト期間を設けた。

研究期間中に2名が負傷のため脱落し、解析は13名で行われた。身長は1.76±0.08m、体重86.0±22.8kgで、ポジションはフォワード8名、バックス5名だった。

多成分サプリ(MIS)の成分の1日あたり用量(mg)は、ウコンエキス10、鶏肉エキス100、リンゴエキス・泥炭20であり、そのほかの成分としてMISおよびプラセボともに、無水クエン酸3,220、重炭酸ナトリウム1,780、ソルビトール1,520、グルコース500などが含まれていた。

筋損傷マーカーへの影響

クレアチンキナーゼ(CK)

クレアチンキナーゼ(CK)は、試合直前から直後にかけて、MIS条件(p<0.001、効果量〈d〉=1.86)、プラセボ条件(p=0.002、d=1.97)ともに有意に上昇した。しかし試合終了24時間後に、MIS条件ではベースライン(試合直前)のレベルまで低下していたのに対して、プラセボ条件では24時間後(p=0.009、d=1.13)、48時間後(p=0.045、d=0.77)にも有意に高い状態が続いていた。また、24時間後時点で両条件間に有意差が認められた(p=0.029、d=0.90)。

乳酸脱水素酵素(LDH)

乳酸脱水素酵素(LDH)は、CK同様に試合直前から直後にかけて、MIS条件(p=0.036、d=0.78)、プラセボ条件(p=0.012、d=1.44)ともに有意に上昇した。しかし試合終了24時間後に、MIS条件ではベースラインレベルまで低下していたのに対して、プラセボ条件では有意に高い状態が続いていた(p=0.001、d=1.07)。

炎症や酸化ストレスのマーカーへの影響

炎症マーカーの腫瘍壊死因子-α(TNF-α)は、両条件ともにベースラインから有意な変化がなく、条件間の差もすべての時点で非有意だった。酸化ストレスマーカーのマロンジアルデヒド(MDA)についても変化に乏しく、試合終了24時間時点でプラセボ条件においてわずかな上昇傾向がみられたが、ベースラインとの差および条件間の差は非有意だった。

MISによる回復促進がスケジュールに好ましい影響をもたらし得る可能性

著者らは本研究の強みとして、実験室環境でのシミュレーションではなく、実際のラグビーの試合によって筋肉にダメージを生じさせて研究を行った点にあるとしている。実験室環境では、ラグビーの試合で実際にアスリートが経験するような、高強度の加速や減速、身体の接触の反復を模倣することは難しいため、本研究の結果はより実用的な意味合いを持つという。

その結果は、ウコン、鶏肉、リンゴ、古代泥炭を含む多成分サプリ(MIS)が、男子大学生アスリートのラグビー試合後の筋損傷を軽減する可能性があることを示唆するものだった。ただし、試合後の炎症や酸化ストレスのマーカーに対するMIS摂取の影響は、統計的に有意でなかった。

論文の考察には、「MISの配合は成分間の相乗効果が生じるように設計されており、各成分の摂取量を減らすことができる。MISはラグビーの試合後の筋損傷を軽減すると考えられ、回復の促進とそれによるトレーニングスケジュールの改善、試合出場機会の確保といった点で重要な役割を担うのではないか」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「A Multi-ingredient Supplement Reduced Markers of Muscle Damage after a Rugby Match in Collegiate Male Players」。〔J Physiol Investig. 2024 Nov 26〕
原文はこちら(Wolters Kluwer)

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