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HMBの安全性、効果、栄養面などについて、国際スポーツ栄養学会(ISSN)が12項目の見解を公表

国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)はこのほど、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(β-hydroxy-β-methylbutyrate;HMB)に関する見解(position stand)をまとめ、同学会発行の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に発表した。

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ISSNによるHMBに関する12項目の見解

国際スポーツ栄養学会(ISSN)のポジションスタンドは、ISSNの編集者と評議会が、読者の関心を引くトピックを特定してそのトピックに関するエキスパートに執筆を依頼する招待論文であり、執筆された草稿はレビューと修正が加えられたうえでISSNの公式見解として承認される。ISSNでは、2013年にβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)に関する初の見解を発表していたが、その後10年以上たち新たなエビデンスが蓄積されたことから、改めて文献レビューを行い再度見解をまとめた。

新たな見解の策定に際して、HMBの形態、安全性、作用機序、生理学的効果、栄養面に関する科学文献のスコープレビューが行われて、750件を超える原著論文とレビュー論文が収集・検討された。まとめられた見解は以下の12項目。

  1. HMBは、ヒトと動物の双方で自然に生成されるアミノ酸であるロイシンの代謝物である。HMBに関しては二つの形態(Calcium HMB〈HMB-Ca〉とfree acid form of HMB〈HMB-FA〉)が研究されている。HMB-FAはHMB-Caと比較して、血流中のHMBを高めるようであるが、最近の結果は一貫性がみられない。

  2. 入手可能な安全性および毒性データによると、HMB-CaやHMB-FAの摂取に関して、少なくとも1年間は、ヒトが経口摂取しても安全であることが示唆されている。

  3. HMB-CaとHMB-FAは、ヒトの耐糖能とインスリン感受性に悪影響を及ぼさない。若年成人では糖代謝が改善することがある。

  4. HMBの主な作用機序は、筋タンパク質の合成を促進し、筋タンパク質の分解を抑制するという二つのメカニズムによるものと思われる。HMBによるラパマイシン標的タンパク質複合体1(mechanistic target of rapamycin complex 1;mTORC1)の活性化は、ロイシンの感知経路(Sestrin2-GATOR2複合体)とは関係していない。

  5. HMBは筋肉の損傷を軽減して筋肉の回復を促進し、筋肉の成長と修復を速める可能性がある。また、HMBには抗炎症作用があり、筋肉の損傷や疼痛を軽減するのに役立つ可能性がある。

  6. 運動直後にHMBを摂取すると、筋タンパク質の合成を促進し、炎症反応を抑制する効果があると考えられる。HMBは、ヒトが急性および慢性的に摂取した場合、有益な生理学的効果をもたらす。

  7. 運動トレーニングと組み合わせて、体重1kgあたり38mgのHMBを毎日摂取すると、除脂肪体重の増加および/または脂肪量の減少により、年齢、生物学的性別、ベースラインのトレーニング状況を問わずメリットがもたらされ、体組成が改善される可能性がある。HMBによる体組成の最も顕著な改善効果は、強力なレジスタンストレーニングと栄養管理による研究で認められた。

  8. HMBは、トレーニングを行っていない人の筋力とパワーを向上させる可能性があるが、トレーニングを行っているアスリートのパフォーマンスに対するメリットは研究により異なり、研究期間が長くなるにつれて(6週間以上)増大する。また、HMBの運動パフォーマンスに対する有益な効果は、回復の改善によってもたらされると考えられている。

  9. HMBサプリメントは、とくにトレーニングを受けたアスリートの有酸素運動能力にプラスの影響を与える可能性があるようだが、効果のメカニズムは不明である。

  10. HMBサプリメントは、運動をせず座位行動の多い高齢者にとって、筋力、機能性、筋肉の質を改善するために重要かもしれない。運動とHMBサプリメントの効果は研究により異なるが、特定の条件下ではこの組み合わせが加齢に伴うサルコペニアの治療に有益な効果をもたらす可能性がある。

  11. HMBは、疾患や怪我による不活動期間中の筋肉の廃用性萎縮を回避するのに効果的である可能性がある。HMBによるミトコンドリア動態と脂質代謝への作用は、筋タンパク質の合成と分解の速度に対するHMBの効果とは独立し、廃用性萎縮を予防しリハビリテーションをサポートする、潜在的なメカニズムである可能性がある。

  12. 特定の栄養素と組み合わせたHMBの効果は、特定の条件下では強化される可能性がある。

HMBと他の栄養素との併用効果

論文ではこれら12項目について詳細な解説が加えられている。本稿では12番目の項目のみ、一部を紹介する。

HMB+プロバイオティクス

ある研究では、特定のプロバイオティクス株をHMB-CaやHMB-FAと併用摂取すると、摂取後のピークHMBレベルが16%、総HMB曝露量が19%向上したと報告されている。また、激しい軍事訓練中にHMB-FAを摂取すると炎症が大幅に軽減され、プロバイオティクスとの相乗効果も認められたという。

HMB+クレアチン

HMBとクレアチンの併用が運動パフォーマンスに及ぼす影響を調べた研究は合計9件ある。ある研究では、それらを単独で使用した場合と比較して、併用によって無酸素運動能力、持久力が向上し、体組成が改善されたという。このほかにも併用の有用性を示す報告がある。その一方で、併用は運動パフォーマンスに有意な上乗せ効果を示さないとする結果も複数報告されている。

HMB+アミノ酸

L-アルギニンやL-リジンをHMB-Caと併用した研究では、高齢者の筋肉量に対する効果が確認された。しかし、ビタミンDが欠乏している人ではこの効果がみられなかった。このほかに、HMB-CaをL-アルギニン、L-グルタミン、タウリンと併用すると、レジスタンストレーニングの効果が運動単独より有意に増加したという報告もあるが、エビデンスは不足している。

HMB+ビタミンD

HMB-Ca、ビタミンD、ビタミンCを含む強化ヨーグルトを高齢者が摂取したところ、筋肉の健康に対する有益な効果が確認され、筋力が有意に上昇したという。このほかにも高齢者での有用性を示唆する報告が複数あるが、若年のアスリートでの研究は不足している。

文献情報

原題のタイトルは、「International society of sports nutrition position stand: β-hydroxy-β-methylbutyrate (HMB)」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2025 Dec;22(1):2434734〕
原文はこちら(Informa UK)

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