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筋力トレーニングに費やす時間が長い人ほどテロメア長が長い 米国国民健康栄養調査

米国国民健康栄養調査から、筋力トレーニング量と、寿命のマーカーとされるテロメア長との間に、有意な関連があるという研究結果が報告された。年齢や人種、喫煙、収入などのさまざまな交絡因子を調整後にも、筋力トレーニングに費やす時間が長い人ほど、テロメア長が長いという。

筋力トレーニングに費やす時間が長い人ほどテロメア長が長い 米国国民健康栄養調査

米国国民健康栄養調査のデータを用いて、筋トレとテロメア長との関連を検討

テロメアは染色体の末端に位置する構造であり、塩基配列が多いほどテロメア長が長くなる。テロメア長は細胞老化の指標であって、多くの研究において、寿命のマーカーとしての可能性が示されている。

1999~2002年の米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)に参加した20歳以上の米国成人1万291人のうち、7,827人の白血球テロメア長が測定されていた。この研究では、そのうち年齢が70歳以上、妊娠中の女性、交絡因子のデータ欠落者、およびテロメア長が平均から標準偏差の10倍以上逸脱していた1人を除外し、4,814人(42.9±0.4歳、女性51.4%)を解析対象とした。

筋トレにあてる時間で3群に分類

過去30日間に行った48種類の身体活動の実施状況を質問し、そのうち筋力トレーニングについて、1週間あたりの実施回数と1回あたりの時間を乗算して、1週間の筋トレ時間を算出。10分未満を筋トレ非実施群(全体の93.1%)、週10~50分を中等度実施群(同3.1%)、60分以上を高度実施群(3.8%)と、3群に分類した。

このほかに共変量として、人種/民族、BMI、累積喫煙量(パックイヤー)、収入、世帯人員を評価した。

週に90分の筋トレで3.9年分の生物学的老化抑止

すべての共変量を調整後、筋トレ非実施群のテロメア長は5,894±38塩基対(base pairs;bp)、中等度実施群は6,017±79bp、高度実施群は6,119±122bpであり、筋トレに長い時間をあてている人ほどテロメア長が長く、それぞれの群間に有意差が認められた(p=0.019)。

また、筋トレにあてている時間を連続変数として解析すると、1週間あたりの筋トレ時間が10分長いごとに、テロメア長が6.7±1.8bp長いという有意な関連が認められた(p=0.0006)。これを基に寿命に対する影響を推算すると、1週間あたり90分の筋トレを行うことは、3.9年分の生物学的老化抑制と関連していると考えられ、また1回1時間、週3回、計180分の筋トレは、7.8年分の老化抑制と関連すると計算された。

共変量とテロメア長の関係

論文では筋トレ以外の共変量とテロメア長との関連についても述べられている。

年齢はテロメアの長さと強く関連していて、高齢になるほどテロメア長は直線的に短くなり、1歳あたり15.5bp短縮していた(p<0.0001)。性別ではテロメア長に有意な差はなかった(p=0.1931)。人種/民族については、年齢を調整後、非ヒスパニック系白人のテロメアが最も短く、メキシコ系アメリカ人または「multiracial」(多くのルーツをもつ)と回答した人が最も長かった。世帯人員については4~5人の人のテロメアが最も長く、それより少ない、または多い人は短かった(p=0.0199)。

このほか、累積喫煙量はテロメア長と強い相関が認められ(p<0.0001)、BMIカテゴリーについては普通に比べて肥満群でテロメア長が短かった。一方、筋トレ以外の47種類の身体活動を合計した代謝当量(METs)は、テロメア長と関連がなく(p=0.7927)、所得水準も関連がなかった(p=0.1630)。

「筋トレが寿命を延ばす」とは言えない

筋トレがテロメア長の長さと有意に関連しているという結果について、著者らは以下のような考察を加えている。

身体の健康に対する筋トレの有効性については、エビデンスが確立している。生物学的老化は、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患などの慢性疾患によって加速されるが、筋トレはこのような慢性疾患によって引き起こされるダメージの一部を軽減し、筋肉量の低下を抑制・増加させ、安静時代謝を上げ、体脂肪量を減らし、心血管の健康を改善する。これらを介して細胞の老化を遅らせる可能性がある。つまり、筋トレは、慢性疾患と代謝リスク要因の影響を軽減することで、生物学的老化プロセスを遅延させ、テロメアの長さとして現れる細胞老化を軽減すると考えられる。

解釈上の留意点

一方、著者らは本研究には以下の限界点があることを述べている。

まず、NHANESは横断的デザインで実施されているため、本研究の解析結果から因果関係の考察はできず、筋トレを長くしていることがテロメア長が長いことの理由とは言えないとしている。次に、筋トレ時間は自己申告で評価しており正確でない可能性がある。また、筋トレを行っている人は、日常のライフスタイルが良好であって、それが結果に影響を及ぼしていることも考えられるという。

文献情報

原題のタイトルは、「Telomere Length and Biological Aging: The Role of Strength Training in 4814 US Men and Women」。〔Biology (Basel). 2024 Oct 30;13(11):883〕
原文はこちら(MDPI)

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