スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

アーモンドによる運動後の回復促進の可能性 一般成人で筋肉痛、最大トルク、CKに有意差

心血管代謝の健康に対する効果のエビデンスのあるアーモンドが、運動後の回復にも役立つことを示唆する研究結果が報告された。一般成人を対象とするクロスオーバー研究で、プラセボ条件に比べて運動負荷後の疼痛やクレアチンキナーゼの低下が速やかで、膝関節の最大トルクは高いという有意差が認められたという。

アーモンドが運動後の回復促進を示唆 一般成人対象研究で筋肉痛、最大トルク、CKに有意差

アーモンドのエルゴジェニック効果を検証

アーモンドやくるみなどのナッツ類に関しては近年、心血管代謝疾患や全死亡リスクを抑制するとの研究結果が多く報告されている。なかでもアーモンドは、100gあたり19gのタンパク質を含み、分岐鎖アミノ酸(BCAA)も豊富であることから筋肉に対する有用性が注目されている。さらに銅や亜鉛も豊富で、これらのミネラルがもつ抗酸化作用は、運動後の回復、とくに運動誘発性筋損傷(exercise-induced muscle damage;EIMD)を抑制する理論的な根拠がある。またサプリメントに比べてコストや入手しやすさという点での優位性もある。

アーモンドのEIMDに対する有用性を検討した研究も既に報告されている。ただし、既報研究ではクレアチンキナーゼ(CK)は低下したが、筋肉痛やパフォーマンス指標には有意な影響が認められなかった。今回取り上げる論文の著者は、既報研究で十分な有効性がみられなかった一因として、アーモンドの摂取期間が4週間であり、短すぎた可能性があると述べている。

これを背景として今回の研究では、摂取期間を倍の8週間に延長したうえで検討が行われている。

適度な運動をしている一般成人を対象とする無作為化クロスオーバー試験

この研究の参加者は、健康な成人でBMIが23~30の範囲であり、週に1~4時間の構造化運動(目的と計画性のある運動)を行っていることを条件に募集された32人。喫煙者、過去1カ月以内に炎症や酸化ストレスに影響を及ぼす薬剤(NSAIDsまたはステロイドなど)やサプリメント(ω3脂肪酸、ビタミンCやEなど)の利用者、筋骨格系の障害がある人は除外されている。

試験デザインは無作為化クロスオーバー法で、VO2maxや心拍数などのベースラインデータを取得後、8週間にわたりアーモンドまたはコントロール食(等エネルギー量の無塩プレッシェル)を1日2オンス(約57g)摂取したのち、65~70%VO2maxで-10%の勾配でのダウンヒルランニングを30分間実施して、筋損傷を誘発。その24時間、48時間、72時間後に、ビジュアルアナログスケールによる筋肉痛の程度を評価。また、膝の屈曲と伸展の最大トルク、垂直ジャンプによるパフォーマンスの回復を把握するとともに、採血により筋損傷のマーカーであるクレアチンキナーゼ(CK)とミオグロビン(Mgb)、炎症のマーカーであるC反応性蛋白(CRP)、および抗酸化能を測定した。

アーモンド1食分は344kcalで、タンパク質11.5g、脂質30.6g、炭水化物11.6gであり、コントロール食は344kcal、タンパク質9.4g、脂質1.6g、炭水化物71.9g。これらを1日のどのタイミングで摂取するかは指定せず、研究参加の判断に任せた。摂取遵守率は、アーモンド条件では84%、コントロール条件では90%だった。

すべてのプロトコルを終了した参加者は26人(うち女性が14人)だった。主な特徴は、年齢37.2±6.3歳、BMI26.3±3.3、VO2max38.6±12.4mL/kg/分であり、1日の歩数は1万1,055±5,691歩だった。

アーモンド条件でEIMDの回復が促進される

解析の結果、全体としてアーモンド条件ではコントロール条件よりも速く、運動誘発性筋損傷(EIMD)が回復していたことが示された。詳細は以下のとおり。

クレアチンキナーゼ(CK)の変化

ダウンヒルランニングにより、中等度の筋損傷が生じたことが、クレアチンキナーゼ(CK)の変化から示唆された。CKは両条件で24時間後にピークに達し、ベースライン(運動負荷前)に比べてアーモンド条件では171%増加、コントロール条件では180%増加していた。

運動負荷の72時間後に、アーモンド条件のCKはピーク値から50%有意に低下していたが、コントロール条件の低下幅は33%であり非有意だった。

筋肉痛の変化

最大収縮時の疼痛の程度(VAS)は、24時間後(条件間の差が37%)および48時間後(同33%)時点において、アーモンド条件のほうが有意に低値だった(p=0.026)。

膝関節トルクの変化

膝関節屈曲(120°/秒)の最大トルクは、24時間後(同12%)および72時間後(同9%)時点において、アーモンド条件のほうが有意に高値だった(p=0.004)。

その他

その他に評価した垂直ジャンプ、CRP、Mgb、および抗酸化能には、条件間の有意差は認められなかった。

これらの結果に基づき論文の結論は、「アーモンドの摂取は、最大収縮時の主観的な痛みを軽減し、CKを低下させ、遠心性運動後の筋力を維持するように働く。総合すると、我々の研究結果は、アーモンドが筋損傷を生じ得る運動からの回復を促進する効果的な機能性食品として機能する可能性があるという考え方を裏付ける、予備的なエビデンスと位置づけられる」と総括されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Almond Consumption Modestly Improves Pain Ratings, Muscle Force Production, and Biochemical Markers of Muscle Damage Following Downhill Running in Mildly Overweight, Middle-Aged Adults: A Randomized, Crossover Trial」。〔Curr Dev Nutr. 2024 Aug 7;8(9):104432〕
原文はこちら(Elsevier)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ