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日本人女子大生の摂食障害はBMIに関わりなく月経前症候群の有無に関連 オンライン横断研究調査

国内の女子大学生および大学院生を対象とする横断研究調査の結果、摂食障害傾向のある学生は月経前症候群の有病率が高いことが明らかになった。一方、摂食障害傾向の有無でBMIに有意差は認められないという。大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科の森野佐芳梨氏らの研究によるもので、「BMC Women's Health」に論文が掲載された。

日本人女子大生の摂食障害はBMIに関わりなく月経前症候群の有無に関連 オンライン横断研究調査

月経前症候群(PMS)症状に、食事と栄養が関係している可能性を日本人で研究

生理前(排卵後の黄体期)にさまざまな身体的・精神的症状が現れる月経前症候群(premenstrual syndrome;PMS)は、女性のQOL低下の一因として知られている。女子大学生・大学院生の90.2%にPMS症状がみられるとする、国内研究の報告もある。

これまでの研究で、運動習慣のある人はPMS有病率が低いことのほかに、食事や栄養との関連も示唆されてきている。例えば、バランスのとれた食事や、ビタミンB6、ビタミンD、亜鉛がPMS症状を軽減する可能性が示されており、反対に朝食欠食や高脂肪食、ファストフード、コーヒー、アルコールの摂取は、症状の増悪因子である可能性が報告されている。

食事や栄養バランスの乱れがPMSに関連していることが確かであれば、現在の若年日本人女性の間では過剰な痩身願望による栄養不良リスクが高まっていることがかねてより指摘されていることから、そのことがPMSの有病率や重症度に影響を及ぼしている可能性が想定される。これを背景として森野氏らは、国内女子大生を対象に食行動とPMS症状との関連を探る横断的研究を行った。

約6%に摂食障害があり、摂食障害の有無でPMS症状の有病率に有意差

この研究は、オンライン調査として25歳未満の女子大学生・大学院生を対象に実施された。質問内容は、基本情報(年齢、身長、体重)と、PMS症状、食行動の3点。

PMS症状の評価

PMS症状は、米国産科婦人科学会の診断基準に用いられている10種類の症状と、先行研究で報告されている8種類の症状を加えて18種類の身体的症状および精神的症状を評価。それぞれの症状により日常生活に支障が出ているかどうかという問いに対して、「症状なし」、「症状があるが気になるほどでない」、「支障あり」の三者択一で回答してもらい、一つでも「気になる」もしくはが「支障あり」がある群と、そうでない群に分けて解析した。

食行動の評価

食行動は、摂食態度テスト(Eating Attitudes Test;EAT)の短縮版(EAT26)を用いて評価し、スコア20点以上を摂食障害傾向ありと判定した。また、EAT26のサブスケールを用いて、因子I(摂食制限)、因子II(過食と食への関心)、因子III(食のコントロール)のスコアを計算した。

摂食障害の有無でBMIに有意差はなし

171人の回答からデータ欠落のあるものを除外後、解析対象は130人となった。このうち8人(6.15%)が摂食障害傾向と判定された。摂食障害傾向の有無の2群で基本情報を比較すると、年齢、身長、体重に有意差がなく、BMIも同等だった(摂食障害傾向あり群21.0±2.0 vs なし群20.5±1.9 kg/m2、p=0.475)。

6割強の女子大生がPMS症状に悩まされていて、摂食障害傾向群では100%

一方、PMS症状に関しては、62.3%が18種類の症状のうちのいずれかに「気になる」と回答していた。これを摂食障害の有無で比較すると、18種類全体での解析および、10種類の身体的症状と8種類の心理的症状に分けての解析のいずれにおいても、摂食障害傾向あり群の有病率のほうが高いという有意差が認められた。詳細は以下のとおり。

PMS症状全体では摂食障害傾向あり群の有病率が100%、なし群は59.8%(p=0.023)、身体的症状については同順に100%、55.7%(p=0.014)、心理的症状については62.5%、27.1%(p=0.033)。

EAT26サブスケールの解析

次に、EAT26のサブスケールのスコアを比較すると、全体解析(身体的症状と心理的症状をあわせた解析)では、因子IIにPMS症状の有無による有意差が認められ、PMS症状のある群のスコアが有意に高値だった(p=0.012)。因子IとIIIは有意差がなかった。

身体的症状の有無での比較では、因子I(p=0.029)とII(p=0.005)に有意差があり、身体的症状あり群のスコアが高く、因子IIIは有意差が確認されなかった。心理的症状の有無での比較ではすべての因子のスコアに有意差がなかった。

BMIで評価可能な栄養状態とは別の食行動がPMSに関与している可能性

以上の結果を基に著者らは、「日本人女子大学生の食行動はBMIに影響を及ぼすか否かにかかわらず、PMS症状に影響を及ぼすと考えられる」と総括している。

なお、論文の考察では、先行研究のなかには、痩せの学生のほうがPMS重症度が高いというものや、肥満者のほうがPMS有病率が高いといったものがあるが、本研究ではBMIとの関連がみられなかったことに触れ、「従来から指摘されているBMIで評価可能な栄養状態とは異なる食関連行動がPMSリスクに影響を与えている可能性があり、PMSの保健指導に新たな視点が求められているのかもしれない」と述べられている。

また、EAT26サブスケールの因子II(過食と食への関心)とPMS症状との関連、とくに身体的症状との強い関連が認められたことから、「PMSには高脂肪または高糖質食品の摂取が影響を及ぼしている可能性がある」とのことだ。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between premenstrual syndrome and eating disturbance in college students: a cross-sectional study」。〔BMC Womens Health. 2024 Jun 7;24(1):330〕
原文はこちら(Springer Nature)

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