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アイスホッケートップ選手の筋グリコーゲンレベルと筋肉機能は、試合後2日で回復

アイスホッケー選手の試合後の筋肉機能とグリコーゲン回復の推移を、筋生検も施行して検討した結果が報告された。筋グリコーゲンは試合後に3割低下し、2日後に試合前のレベルに回復したという。デンマークの世界選手権出場レベルのエリート選手を対象とする研究の報告。

アイスホッケートップ選手の筋グリコーゲンレベルと筋肉機能は、試合後2日で回復

アイスホッケー選手の試合後の回復の推移を詳細に検討

アイスホッケーは試合時間は比較的短いものの、激しい身体接触を含む断続的な高強度運動が反復されるスポーツであり、かつリーグ戦では週に4試合程度行われ、回復のための時間が24時間未満の状態が続くことも少なくない。これまでに、サッカーでは試合後の筋力の低下が最大72時間続くことなどが報告されてきているが、アイスホッケー選手の試合後の回復を検討した研究は少ない。

サッカーではランニングによる負荷が大きいのに対して、アイスホッケーは氷上を滑るスケートという動作であり、筋肉への負荷の生じ方にも差があると考えられる。今回取り上げる論文の著者らは、これらを背景として若年エリート男子アイスホッケー選手の試合後の回復の推移の検討を行った。

試合後2日目まで、筋生検などを行い回復を評価

研究対象は、デンマークの男子U20代表チームに所属する16人。回復の評価のために行った試合はリーグ戦ではなく練習試合だが、できるだけ競技環境に近づけるため、観客を動員し公式審判が判定を行った。また、2021年の世界選手権最終メンバー選考の数週間前に行ったことから、各選手はベストの状態で臨んだと考えられる。

試合はトレーニングキャンプ中に行われ、参加者全員に対して1日3食の標準化された食事を提供。試合の48時間前からは高強度運動を禁止し、12時間前からはカフェインの摂取を禁止。また試合中の炭水化物の摂取も禁止した。

試合前、試合直後、1日後(19~23時間後)、2日後(37~39時間後)に、反復スプリントテスト、筋生検、低周波(20Hz)と高周波(50Hz)での筋肉電気刺激による最大随意等尺性膝伸筋収縮テスト(maximal voluntary isometric knee-extensor contraction test;MVIC)などで回復の推移を評価した。なおMVICについて論文では、低周波と高周波という異なる周波数での刺激を行うことで、中枢神経系の関与しない筋機能を評価可能と説明されている。このほか、試合中にはローカル測定システムによる各選手の氷上でのプレー時間(time on ice)と走行距離、および心拍数を把握した。

試合2日後には筋機能と筋グリコーゲンが回復

16人の選手のおもな特徴は、平均年齢19.4歳、身長184cm、体重85.2kg、体脂肪率14.4%、筋肉量41.8kg、アイスホッケーに即したYo-Yoテスト2,329m。ポジションはフォワードが9人、ディフェンスが7人。

評価結果は以下のとおり。

筋肉の機能

20Hzおよび50Hzの電気刺激で評価した筋機能は、試合直後と1日後(翌日)は試合前より低下していたが、2日目には試合前と有意差がなかった。膝伸筋ピークトルクは試合直後に11%低下していたが(p=0.001)、翌日には試合前と有意差がない程度に回復し(p=0.644)、2日目は試合前のベースライン値と同等だった(p=1.000)。なお、試合による筋機能の低下および回復の程度は、ポジションによる有意差は観察されなかった。

反復スプリントテスト

試合後にスプリントタイムはベースラインと比較して1%有意に遅くなった(p=0.041)。ただし翌日にはベースラインと同レベルになっていた(p=1.000)。なお、試合後の反復スプリントタイムの低下幅は、ポジション間で差はなかった(p=0.171)。

筋グリコーゲンレベル

筋グリコーゲンは、試合直後に平均で31%減少していた(p<0.001)。試合中の走行距離が長い選手(上位50%の8人で、最大4,790m)は、グリコーゲンレベルの減少幅が48%であり、より大きく減少していた。

ポジションで比較すると、ベースラインではフォワードとディフェンスの選手の筋グリコーゲンレベルに有意差はなかったが(p=0.225)、試合後の値はディフェンスのほうが低値であり、低下幅に有意差が認められた(50 vs 26%、p=0.072)。

試合2日目には、全選手の筋グリコーゲンレベルが完全にベースライン値に回復していた(p=1.000)。

評価指標の相関

総走行距離と試合前後での筋グリコーゲンレベルの低下幅との間に、強い正相関が認められた(r=0.79、p=0.001)。また、リンク上にいた時間(time on ice)もの筋グリコーゲンレベルの低下幅と正相関していた(r=0.68、p=0.011)。一方、最大トルク(MVIC)の相対的低下幅は、総走行距離とは関連が非有意だった(r=0.47、p=0.108)。

回復に充てられる時間が24時間未満の場合は、筋肉機能に問題も

以上の総括として論文の結論は、「アイスホッケーの試合後の筋肉のグリコーゲン貯蔵量、反復スプリント能力、筋肉機能の回復は急速であり、試合直後は有意に低下しているにもかかわらず、1~2日以内には試合前のレベルに回復している。ただし、電気刺激で誘発して測定した筋肉機能は、試合翌日時点ではまだ部分的に低下しているため、回復時間が24時間未満の過密スケジュールをこなさなければならない選手の場合、問題となる可能性がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「The recovery of muscle function and glycogen levels following game-play in young elite male ice hockey players」。〔Scand J Med Sci Sports. 2023 Dec;33(12):2457-2469〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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