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競技中の「トラマドール」使用禁止へ 世界アンチドーピング機構(WADA)が2024年禁止物質リストを公開

世界アンチドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)は9月28日、2024年の禁止物質リストを公開した。2024年からの大きな変更点として、鎮痛目的で使用されているオピオイド製剤のトラマドールが禁止される。そのほか、ステロイド注腸剤のウォッシュアウト期間(薬物が体内から無くなるまでの期間)の記載が表に追加されたり、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドがモニタリングプログラムの対象に追加されるなどの変更があった。新たな禁止リストは、2024年1月1日に発効する。

競技中の「トラマドール」使用禁止へ 世界アンチドーピング機構(WADA)が2024年禁止物質リストを公開

大幅な変更はトラマドールに関する規定

2024年の大きな変更点として、トラマドールに関する規定の変更が挙げられる。オピオイド系鎮痛薬のトラマドールは、2022年5月の時点で2023年からの禁止リスト草案に盛りこまれ、同年9月23日の執行委員会(ExCo)で使用禁止が承認されていた。ただし、その後、変更の周知期間が1年間延長されたという経緯がある。2024年1月1日からは、競技でのトラマドール使用が禁止される。

トラマドールは過去数年間、WADAの監視プログラムの対象に含まれてきた。そのプログラムを通じて収集されたデータは、スポーツ領域で使用が少なくないことを示していた。トラマドールの乱用は、身体依存、物質使用障害、過剰摂取のリスクを伴い、世界の多くの国でその懸念のために規制薬物扱いとなっている。また、WADAの資金提供により実施された研究では、トラマドールがスポーツのパフォーマンスを向上させる可能性が確認されている。

WADAのOlivier Niggli事務局長は、「アスリート、そのサポートスタッフ、そしてすべての関係者に対し、2024年にスポーツで禁止される物質や方法の不用意な使用を避けるため、主要な変更点の概要を熟知することを奨励する」と述べている。

オピオイド系鎮痛薬「トラマドール」とは

トラマドール塩酸塩(おくすり110番)

主な変更点の概要と解説(抜粋)

2024年1月1日に発効する禁止リストについて、これまでとの変更点の一部を抜粋する。詳細はWADAのWebサイトで確認のこと。

常に禁止される物質と方法(競技内および競技外)

承認物質

例として、2,4-ジニトロフェノール(DNP)、トロポニン活性化剤(Reldesemtiv、Tirasemtivなど)が追加された。

アナボリック剤

例として、トレストロン(7α-メチル-19-ノルテストステロン、MENT)、ジメタンドロロン(7α,11β-ジメチル-19-ノルテストステロン)などが追加された。

ペプチドホルモン、成長因子とその関連物質や模倣物

明確化のため、男性におけるテストステロン刺激ペプチドという項目の下に、ブセレリン、デスロレリン、ゴセレリンなどが、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト類似体の例として明記され、ヒストレリンが例として追加された。

GnRHの分泌を刺激し、結果としてテストステロンを刺激するキスペプチンとそのアゴニスト類似体も追加された。

カプロモレリンとイブタモレン(MK-677)が成長ホルモン分泌促進薬(GHS)の例として追加された。これらは、成長ホルモン(GH)の産生を刺激する天然ホルモンであるグレリンやインスリン様成長因子-1(IGF-1)の模倣物。

競技中に禁止される物質と方法

刺激物質

栄養補助食品中に存在することから、2-フェニルプロパン-1-アミン(BMPEA、β-メチルフェネチルアミン)が、特定の刺激物質の例として追加された。

麻薬

2024年1月1日よりトラマドールは競技会での使用が禁止される。推奨されるウォッシュアウト期間は、2024年1月1日までに通知される。なお、ウォッシュアウト期間とは、最後の投与から競技期間の開始時(競技者が参加する予定の競技会前日の午後11時59分)までの時間。ただし、特定のスポーツについてWADAが別のウォッシュアウト期間を示している場合はそれが優先される。

糖質コルチコイド

注腸を含むグルココルチコイド投与後のウォッシュアウト期間が表形式で示された(本稿では表を省略)。注腸の場合、すべての糖質コルチコイドは3日、例外としてトリアムシノロンは10日。

モニタリングプログラム

必要な有病率データが得られたため、サルメテロールとビランテロールはモニタリング対象から削除された。

トラマドールは禁止となるため、モニタリング対象から削除された。

競技での使用パターンを監視するため、タペンタドールとジヒドロコデインがモニタリング対象に追加された。

スポーツにおける利用率と使用パターンを監視するために、GLP-1アナログのセマグルチドがモニタリング対象に追加された。

関連情報

2024禁止表国際基準(英語版)が公開されました(JADA)
WADA publishes 2024 Prohibited List(プレスリリース)
2024 Prohibited List(2024年の禁止薬物リスト(英語、フランス語、トルコ語を選択可))
2024 Summary of Major Modifications and Explanatory Notes(2024年の主な変更点と解説)

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