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月経困難症の痛みをオメガ3サプリで軽減できるか? 既報研究のメタ解析で有意な結果

女性の月経痛をオメガ3(ω3)サプリメントによって軽減されるか否かを、システマティックレビューとメタ解析により検討した結果が報告された。300~1,800mgを2~3カ月摂取することの有用性が確認されたという。

月経困難症の痛みをオメガ3サプリで軽減できるか? 既報研究のメタ解析で有意な結果

女性の大半が生理の痛みを抱えている

月経期間中の下腹部や背部の痛みを特徴とする月経困難症は、最も一般的な婦人科疾患であり、初経発来から閉経前女性における有病率は、報告により45~95%とされている。腹部や背部の痛みのほかにも、睡眠の質の低下、気分の変調などにより、欠勤・欠席、生産性の低下などを招き、アスリートではトレーニングの質の低下、および競技会と重なった場合には成績への影響が生じやすい。

月経困難症の病因は多因子であることが想定されるが、主要な原因は子宮収縮と疼痛発生に関与するプロスタグランジンの過剰産生と考えられている。月経困難症に対して用いられる非ステロイド性抗炎症薬(COX2阻害薬、いわゆる“痛み止め”)は、プロスタグランジン産生を抑制することで痛みを軽減するが、長期の使用に伴い、胃潰瘍や消化管出血、頭痛、眠気、腎機能障害などの副作用の懸念が高まる。

一方、栄養介入により月経困難症の症状を改善する試みが続けられており、オメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(n-3LCPUFA)に関する知見が蓄積されてきていて、既にメタ解析の結果も発表されている。ただしそのメタ解析は、解析対象研究が無作為化比較試験5件のみであり、そのうち4件はイランで実施されたものであって、同国の食習慣の影響を受けた対象での解析結果と判断される。

以上を背景として本論文の著者らは、システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に則して、最新の報告を対象に含めたシステマティックレビューとメタ解析を行った。

11件のRCTと1件のクロスオーバー試験を抽出してメタ解析

文献検索には、Embase、Scopus、Web of Science、MEDLINE、CINAHLなどのデータベースを用い、月経困難症の女性に対するn-3LCPUFAによる介入を行い、痛みやプロスタグランジンレベルを比較検討した英語論文を検索した。レビューや学会発表、n-3LCPUFAによる介入をほかの手段による介入と並行して行った研究は除外した。

検索により179報がヒットし、重複削除後の126報を2人の研究者がタイトルと要約に基づき、独立してスクリーニングを実施。30報を全文精査の対象として、最終的に12報が包括基準を満たすと判断された。なお、採否の意見の不一致は、3人目の研究者を加えた多数決により決定した。

解析対象研究の特徴

12件中11件は無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)で、そのうち9件は二重盲検試験だった。他の1件はクロスオーバー試験。

研究参加者数は合計881人で、平均年齢は21.7歳(範囲13~33)。6件の研究は原発性月経困難症の患者が対象であり、他の6件は月経困難症のタイプ(二次性が含まれるか否か)が記されていなかった。

n-3LCPUFAの摂取は、すべての研究でサプリメントとして摂取する介入が行われており、食事による介入効果を調査した研究はなかった。最も一般的に用いられていたn-3LCPUFAサプリの用量は、300mgのn-3LCPUFAを含む1,000mgの魚油サプリであり、介入期間は2カ月または3カ月だった。

介入効果の評価には、7件の研究ではビジュアルアナログスケール(visual analog scale;VAS)を用い、他の研究は自己評価アンケートや月経症状スケールなどを用いていた。すべて月経痛の程度を評価しており、プロスタグランジンレベルへの影響を検討した研究はなかった。

メタ解析から有意な疼痛軽減効果が示される

メタ解析の対象となり得る十分なサンプル数のある報告は8件だった。そのうち2件は介入効果が非有意と報告し、他の7件は介入により月経痛が有意に改善されると結論づけていた。

メタ解析の結果は、効果量(d)=-1.020(95%CI;-1.526~-0.514)であり、n-3LCPUFAによる介入は月経痛を有意に抑制することが明らかになった。ただし、データの不均一性は大きかった(I2=89%)。

なお、バイアスリスクの検討からは、出版バイアスがないことが確認された。

鎮痛薬の使用量も減少

鎮痛薬の使用量への影響は、7件の研究で検討されていた。そのうち6件では、n-3LCPUFA介入群の鎮痛薬使用量が対照群より有意に少ないことを報告していた。

副作用については4件の研究報告に記載があり、そのうち3件で、脂性肌、座瘡、吐き気などの軽度の副作用が報告されていた。

以上に基づき論文の結論には、「1日にEPAとDHAの合計で300~1,800mgのn-3LCPUFAを2~3カ月にわたって補給すると、月経困難症の女性の痛みと鎮痛薬の使用量が軽減されることが示唆された。またn-3LCPUFAの補給は、限られた人に軽度の有害事象のリスクが生じるようであり、忍容性は高い」と述べられている。ただし、月経困難症の病態の首座と考えられるプロスタグランジンへの影響を検討した研究がなく、作用機序が不明であることなど、今後の研究の必要性も指摘している。

文献情報

原題のタイトルは、「Omega-3 long chain polyunsaturated fatty acids as a potential treatment for reducing dysmenorrhoea pain: Systematic literature review and meta-analysis」。〔Nutr Diet. 2023 Aug 6〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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