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アスリートの炭水化物に関する認識は間違っている? 持久系アスリート1,000人以上を調査

持久系スポーツのパフォーマンス向上のための栄養戦略では炭水化物の摂取が重要であり、具体的な摂取量を示した推奨も示されている。ところが、持久系アスリートはその推奨に関する知識が欠如していることを示す調査結果が報告された。英国の研究者の報告。

アスリートの炭水化物摂取に関する認識は間違っている? 持久系アスリート1,000人以上を調査

持久系アスリートの炭水化物摂取に関する知識に焦点を絞った調査

持久系競技のパフォーマンス向上に炭水化物の摂取が重要であることは、多くのエビデンスによって支持されている。それにもかかわらず、持久系アスリートの炭水化物摂取量が推奨値よりも少ないことがしばしば指摘されている。例えば、競技が2.5時間以上続く可能性のある大会で、推奨される60~90g/時の炭水化物を摂取する選手の割合は、トライアスロンで50%、自転車で30%、マラソンでは15%という報告があり、本論文の著者によると、このような報告はほんの一例にすぎないという。

アスリートの栄養に関する知識が不足していることもまた、よく指摘されることである。複数の研究から、アスリートの栄養に関する知識のスコアは33~78%の範囲とされている。ただし、これはさまざまな競技のアスリートを対象に、栄養に関する全般的な知識を検討した結果であり、持久系アスリートの炭水化物摂取に関する知識に特化した研究報告は少ない。

これを背景として本論文の著者らは既に、持久系アスリートの炭水化物摂取に関する知識を評価するための調査票(carbohydrates for endurance athletes in competition questionnaire;CEAC-Q)を開発。145人の持久系アスリートを対象とする小規模な調査によって、スコアが100点満点中46±19点であることを報告している。ただし、サンプル数が少ないため、アスリートの特性で層別化した解析はされていない。

そこで今回、より大規模なサンプルでの調査を実施し、どのようなアスリートがとくに低スコアなのかといった詳細な検討を行った。

1,000人以上の持久系アスリートが回答

この調査は、2019年8月~2020年6月に、オンラインで実施された。

知識レベル評価のための質問は前述の調査票(CEAC-Q)を用い、英語で行われた。CEAC-Qは、

  1. 炭水化物の代謝と利用、
  2. グリコーゲンローディング、
  3. 競技前の炭水化物摂取、
  4. 競技中の炭水化物摂取、
  5. 回復のための炭水化物摂取

という五つのセクションで構成され、各セクション20点、合計25問、100点満点で評価するというもの。

回答者は18歳以上で競技会に積極的に参加している持久系アスリートであり、ソーシャルメディアなどを通じて募集された。

上記の期間中に1,625人が回答を開始し、そのうち回答を完了し解析対象となったのは1,016人(脱落率37%)だった。解析対象者の年齢は36.7±10.7歳で、居住地は英国が40%、オーストラリア/ニュージーランドが22%、米国/カナダが18%、その他21%。行っている競技は、自転車39%、トライアスロン34%、ランニング25%のほか、ボート、競歩、クロスカントリースキー、オープンウォータースイミングなど。

性別、競技レベル、スポーツ栄養士の関与などによりスコアに有意差

解析対象全体のCEAC-Qスコアの平均は50±20点だった。属性により、以下のような有意差が観察された。性別に関しては男性のほうが高値(51±20 vs 48±20、p=0.033)、年齢については若年層のほうが高値(p<0.001)、教育歴が長いほうが高値(p<0.001)。

また、競技の種類や競技歴、競技レベル、公認スポーツ栄養士の関与、栄養に関する情報源によっても、以下のような有意差が観察された。

競技種目別では、自転車(52±21)、ランニング(50±20)、トライアスロン(48±19)の順で高かった(p=0.047)。競技レベルについては、レベルが高いほど高スコアだった(最低値はレクリエーションレベルの45±20、最高値はプロの57±16.p<0.001)。競技歴が長いほど高スコアだった(1年未満は38±20、10年以上は53±19.p<0.001)。公認スポーツ栄養士が関与しているアスリートのほうが高値だった(58±17 vs 47±20.p<0.001)。栄養に関する情報源については、「友人や家族」の場合に32±20と最低値であり、「科学ジャーナル」の場合に71±16と最高値だった(p<0.001)。

個々の質問に対する正答率

CEAC-Qを構成している五つのセクション別にスコアをみると、20点中10±5点であり、セクションによる有意な違いはなかった。ただし、個々の質問の正答率をみると、最低は6%、最高は84%の範囲で大きなばらつきが認められた。以下に、25問の中からいくつかピックアップして紹介する。

Q. カーボローディングで体内に貯蓄される炭水化物の分布は?
答え:筋肉8割、肝臓2割。正答率50%
Q. その量はおよそどのくらいか?
答え:400~600g。正答率25%
Q. 競技パフォーマンスの向上のためにグリコーゲン貯蓄量を最大化しておくことの効果が大きいのは、競技時間がどのくらい続くイベントか?
答え:選択肢の中では90分以上。正答率73%
Q. 競技前のグリコーゲンローディングに際して推奨される炭水化物摂取量は?
答え:9~12g/kg/日。正答率28%
Q. 炭水化物の豊富な食事は、競技スタートのどのくらい前に摂るべきか?
答え:1~4時間。正答率69%
Q. 競技時間が1時間未満のイベントで競技中にどの程度の炭水化物を摂取することが推奨されているか?
答え:30g未満またはマウスリンス。正答率30%
Q. 競技時間が1~2.5時間では?
答え:30~60g/時。正答率53%
Q. 競技時間が2.5時間では?
答え:60~90g/時。正答率48%

これらの結果に基づき著者は、「競技に最適な炭水化物の摂取に関する情報とアスリートの知識の間に、重大なギャップがあることが示された。多くのアスリートが炭水化物摂取によるパフォーマンス上の利点や、どのくらい摂取すべきかといったベストプラクティスの推奨事項を依然として認識していない。今後の研究ではその理由を解明し、このギャップを埋める作業が必要とされる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Mind the gap: limited knowledge of carbohydrate guidelines for competition in an international cohort of endurance athletes」。〔J Nutr Sci. 2023 Jul 3;12:e68〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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