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エリートサッカー選手が利用するサプリメントの影響を検討した研究の体系的レビュー

研究対象がエリートレベルであると判断される研究の報告のみを抽出して行われた、システマティックレビューの結果が、国際スポーツ栄養学会(International Society of Sport Nutrition)の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に掲載された。カフェイン、クレアチン、プロテイン、硝酸塩などの影響をまとめた、ポルトガルの研究者の論文。

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エリートレベルのサッカー選手でのエビデンスを探る研究

今日、サプリメントはアスリートの間で広く利用されており、サッカー選手も例外ではなく、報告により47.8~93.7%のサッカー選手がサプリを利用しているとされている。スポーツサプリの利用によってパフォーマンスが向上するとする報告は少なくないが、有意な影響を否定するものもある。

結果が有意とするものと有意でないとするものの違いを端的に示すことは困難だが、一つの傾向として、研究対象がアマチュアレベルでは結果が有意となりやすく、エリートレベルでは非有意となりやすいことは指摘可能だ。これは、エリートレベルであればサプリの利用の有無にかかわらず、既にパフォーマンスが最大化している可能性があるため、ある意味で当然かもしれない。しかし、アマチュアレベルで認められるパフォーマンスの「向上」という影響が、エリートレベルでは「向上」としては認められなくても、「維持」として発揮されている可能性はあるかもしれない。エリートレベルのアスリートは近年、より過密なスケジュールで試合に参加することが要求されることから、パフォーマンスの維持がより重要になっている。

以上を背景として今回紹介する論文の研究では、研究対象をエリートレベルのサッカー先週に限定した研究を抽出するというシステマティックレビューが行われた。

文献検索の手法

システマティックレビューは、システマティックレビューとメタアナリシスの優先報告項目(PRISMA)ガイドラインに従い、MEDLINE/PubMed、Web of Science、Scopus、EBSCOという文献データベースを用いて実施された。サプリメント、食事、栄養、サッカー、フットボール、パフォーマンスなどの単語をキーワードとした検索と、抽出した文献の参照文献のハンドサーチを施行。

包括基準は、研究対象が18歳以上で高度にトレーニングされた(世界レベルで活躍または国内リーグ戦に出場している)成人サッカー選手であり、サプリメント利用の影響を何らかのパフォーマンス指標(スプリントタイム、走行距離、ジャンプ力、筋力など)で評価している盲検化された無作為化比較試験またはクロスオーバー試験であって、査読システムのあるジャーナルに全文が英語で公開されている論文。発表日については制限しなかった。

除外基準は、レビュー、総説、社説、レター、学会発表抄録、研究対象がTier3~5以外に該当する研究、対象にTier3~5とそれら以外が混在していて結果が区別されずに報告されている研究、および、ラグビー、アメリカンフットボール、オーストラリアンフットボール、ゲーリックフットボールの選手のみを対象とした研究。

2人の研究者が独立して検索と採否を判定し、意見の不一致は3人目の研究者を加えた協議により解決した。

各サプリメントのサッカーパフォーマンスへの影響と留意すること

検索により1,043報がヒットし、重複の削除とタイトルおよび要約に基づくスクリーニングにより113報を全文精査の対象とした。参照文献のハンドサーチから抽出し追加したものを含め、最終的に18件の研究報告をレビューの対象として特定した。

それらの研究は2000~2021年に報告され、研究参加者数は合計307人(男性244人、女性63人)だった。検討されたサプリはカフェインが最多であり、ほかにクレアチン、プロテイン、炭水化物・電解質飲料、ビート根ジュース、重炭酸ナトリウム・ミネラルなどの影響が調査されていた。

以下、論文で検討が加えられている一部のサプリを抜粋して、それらに関する考察の要旨を紹介する。

カフェイン

カフェイン摂取の影響や高用量摂取に伴う副作用(吐き気、震え、不安、不眠症など)には個人差があるが、運動パフォーマンスに対するメリットは比較的一貫性があると言える。サッカー選手の場合、運動の約60分前に体重1kgあたり3~6mgを摂取するか、キックオフ前とハーフタイムに体重1kgあたり1~2mgを摂取することが推奨される。

ただし、いくつかの課題もある。例えば、サッカーの試合は夜遅い時間帯に行われることが多いため、カフェイン摂取による睡眠障害のリスクを考慮する必要がある。控え選手は試合に参加しない可能性があることから試合前にカフェインの摂取を控えることがあり、そのような時にプレーに呼ばれた場合はカフェインのメリットを得ることができない。

クレアチン

クレアチン摂取は、補給形態にかかわりなく、さまざまな運動パフォーマンスを向上させることが示されている。最も入手しやすい形態はクレアチン一水和物(CrM)である。CrMが他の形態のクレアチンより優れているのか否かは明確でないが、少なくとも、他の形態のクレアチンがCrMより優っているとする報告はみられない。

クレアチン摂取は、エリートレベルのサッカー選手に対し、性別を問わず競技シーズン中のパフォーマンス向上または維持に有益と考えられる。競技シーズン(16週間)を通じて1日あたり5gでも、反復的無酸素スプリントのパフォーマンスが向上することが示されている。なお、サッカー選手でのクレアチン摂取プロトコルを考慮する際、体重変化が生じやすい選手もいることに配慮が必要かもしれない。

プロテイン

プロテイン摂取に関する研究はその大半が筋肉量の増大または筋損傷後の回復に焦点を当てており、エリートサッカー選手を対象とした研究は限られていた。とはいえ、摂取量が現在の推奨値(1.6~2.2g/kg/日)に達していない場合、安全に摂取可能だろう。また、プロテインは1日を通して適切に配分し、例えば20~40gを1日6回摂取することは、サッカー選手にとっても有益と考えられる。

炭水化物

炭水化物は持久系スポーツのパフォーマンス維持の鍵である。ただし、エリートサッカー選手を対象とした研究は1件しか見つからなかった。その研究では、運動パフォーマンスに差がないと報告している。ただしこのネガティブな結果は、摂取された飲料に含まれる炭水化物の量が体重1kgあたり1.0gであったことにより説明可能かもしれない。現在の推奨では体重1kgあたり1~3gとされることが多い。

タルトチェリージュース

タルトチェリージュースは、フェノールとアントシアニンが含まれており、アスリートの間では回復ドリンクとして使用される。サッカー選手対象の研究として、2件が特定された。そのうち1件は回復を促進するとし、他の1件は回復促進作用はないと結論づけている。この矛盾した結果は、実験プロトコルの違いにより、研究対象選手に発生した筋損傷レベルが軽度であった場合に有意差が生じにくいといった理由によるものかもしれない。現時点では、エリートサッカー選手の回復に対するタルトチェリージュースのメリットは不確定といえ、今後の研究が必要。

栄養の専門家によるサポートチームへのトレーニングも必要

このほかに、ビート根ジュース、重炭酸ナトリウム/カリウムなどのミネラル、ヨヒンベの木の樹皮から作られたハーブ製剤などについて考察がくわえられており、それらはいずれも、エリートレベルのサッカー選手でのエビデンスは、現時点では限定的のようだ。

論文の結論には、「エリートサッカー選手は、科学的根拠に基づいた適切な栄養サポートを必要としている。サプリメントは選手の栄養要件を満たすのに便利かもしれないが、本レビューはその有効性や安全性に関して十分な認識をもつべきであることを示している。栄養の専門家がサポートチームに対するサプリメントに関するトレーニングを定期的に提供することで、サポートチームの知識と自信が高まり、アスリートへのより良いアドバイスにつながるのではないか。また、高度にトレーニングされたサッカー選手のサプリメント利用に関する、より多くの研究が求められる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of dietary supplements on athletic performance in elite soccer players: a systematic review」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2023 Dec;20(1):2236060〕
原文はこちら(Informa UK)

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