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「人種のサラダボウル」ニューヨーク在住の若年女性で、最も肉を多く食べている人種/民族を調査

年齢と性別が一致する異なる人種/民族で、肉の摂取量や肉を食べることに関連すると考えられる背景因子などを比較検討した研究結果が報告された。若年女性では、黒人の肉摂取量が最も多いという。人種のサラダボウルと呼ばれるニューヨーク市で行われた研究。

「人種のサラダボウル」ニューヨーク在住の若年女性で、最も肉を多く食べている人種/民族を調査

肉の摂取量は文化的背景によって規定される?

論文のイントロダクションによると、人類の歴史を通じて多く社会で肉は最も貴重であり、ときに神聖な食べ物として扱われてきたという。ところが近年、健康、環境への負担、経済平等性などの面で、肉を摂取することにプレッシャーがかかるようになってきている。健康面では、肥満、心血管疾患、癌などの非感染性疾患のリスク増大と関連のあることが明らかとなっている。それにもかかわらず、経済協力開発機構(OECD)のデータによると、世界の肉の年間摂取量は2021年で1人あたり42.4kgであり、2030年には43.7kgに増加すると予測されている。これまでの研究は、肉の摂取量を決定する最も影響力のある因子の一つはその個人の文化的背景だと報告している。さらに、そのような文化は民族性によって定義されるという。

一方、食習慣は通常、家庭内のプライバシーが確保された環境で、幼少期から長年の生活によって身につく。よって食習慣は、人々の習慣の中で最も変更が難しい習慣である。そのため、肉の摂取を減らす必要があるとしたら、その介入はその個人が所属する文化や社会、それを規定する民族の差異に着目する必要がある。これとは別に、一般に性別も食習慣に大きくかかわる。男性は女性より肉の摂取量が多く、菜食は女性によって支持されることが多い。

このように、肉の摂取量を左右する因子は数多く考えられる。しかし、民族の違いに焦点を当てた研究は、これまでほとんど行われていない。これを背景として、今回紹介する論文の著者らは、米国の年齢層が異ならない、同性、具体的には若年女性の肉の摂取とそれに関連する態度、信念などの民族的な相違に着目した研究を行った。

黒人、東アジア人、白人、ヒスパニック系に分類して比較

この研究は横断研究としてアンケート調査により実施された。ニューヨーク市内の大学キャンパス内に掲示されたポスターや、それを見て応募した研究参加者からスノーボール方式で協力者を増やしていき、572人が参加。研究参加の適格基準は、年齢20~29歳の女性であり、菜食主義者や人種的マイノリティーでないこと、および栄養学を学んでいないこと。この基準に該当する520人を、黒人、東アジア人、白人、ヒスパニックの四つのカテゴリーに分類した。

アンケートの質問項目は、ふだんの肉の摂取量、好みの調理方法、好みの肉(赤身肉、鶏肉、加工肉)、将来の摂取量の見通し(いつかは食べなくなる、減らす、変更しない、増やす)、家庭で食事をする頻度などのほか、婚姻状況や世帯収入、宗教などの社会経済人口学的特徴に関連する、計36項目で構成されていた。

黒人女性はヒスパニック系女性の2倍近く肉を摂取している

解析対象者の人種/民族は、白人25%、黒人20%、東アジア人35%、ヒスパニック系20%だった。

全体の35%が無宗教と回答し、次いでキリスト教、ローマカトリック、その他の順だった。また、大半(89.2%)が独身者で、とくに東アジア人では99.5%を占めていた。世帯年収は、白人と黒人では「2万5,000ドル未満」が最も多く、ヒスパニック系は「7万5,000ドル以上」が最も多かった。東アジア人では「2万5,000~5万ドル未満」が最多だった。

BMIは平均21.2±3.1でヒスパニック系、黒人、白人、東アジア人の順に高かった。11.3%が何らかの慢性疾患を有していて、最も頻繁に報告された疾患は糖尿病であり、ヒスパニック系でその割合が最も高かった。また、90.6%の回答者は、家庭内にベジタリアンはいないと回答した。

肉の摂取量第2位は東アジア人

1年あたりの肉の摂取量は、黒人が64.2kgで最多だった。2位は東アジア人で53.6kg、続いて白人が46.9kg、最も少ないのはヒスパニック系の35.8kgだった。黒人の若年女性の肉の摂取量と、同世代のヒスパニック系女性の摂取量の間に、1.8倍の開きがみられた。

摂取する肉の種類別に比較すると、黒人は他の民族よりも有意に多くの鶏肉を食べ(p<0.001)、東アジア人は有意に多くの豚肉と加工肉を食べていた(p<0.001)。好みの調理法は民族に関係なく、グリル/ロースト/炙り焼きが好まれ、また副菜としては野菜が最も摂取されていた。

過半数が今後、肉の摂取量を減らすと回答

対象者の半数以上が、将来的に肉の摂取量を減らす意向を示し、その割合に人種/民族による有意な差はなかった。このほか、東アジア人は肉をハレの日に食べるものと位置づける認識が強かった(p<0.001)。

肉を摂取することの健康への悪影響を与えるのではないかとの懸念、動物の命を奪うことの罪悪感などについては、人種/民族による差はみられなかった。

文化の違いが肉の摂取量を大きく左右している

論文中には上記のほかに、多変量解析の結果として示された、肉の摂取量に独立して関連する因子などが記されている。

結論は、「われわれの研究結果は、文化の違いが肉の摂取行動に大きな影響を与える可能性があることを示唆している。食品の選択に影響を与える数々の因子について、より理解が深まれば、民族的に多様な社会における肉の摂取行動を変える実践的な介入についての洞察を得られるであろう。昨今、肉の過剰摂取に対する懸念が高まるなか、人、そして地球にメリットをもたらすには、文化にあわせた、持続可能な介入が必要である。本研究で特定された肉摂取量の民族差に基づいて、健康的な食行動を効果的に改善するための、それぞれの文化に適した栄養プログラムを確立するには、さらなる研究が求められる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Ethnic differences in attitudes, beliefs, and patterns of meat consumption among American young women meat eaters」。〔Nutr Res Pract. 2023 Feb;17(1):73-90〕
原文はこちら(The Korean Nutrition Society and the Korean Society of Community Nutrition)

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