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ラストスパートに差が出る? クレアチンの持久力パフォーマンスへの影響をISSNがレビュー

クレアチン摂取による持久力パフォーマンスへの影響をまとめたレビュー論文が、国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に掲載された。一部を紹介する。

ラストスパートに差が出る? クレアチンの持久力パフォーマンスへの影響をISSNがレビュー

クレアチンは持久系スポーツにも有用か?

スポーツパフォーマンスを高めるエルゴジェニックエイドの中で、最もエビデンスの豊富なものの一つとしてクレアチンが挙げられる。ただ、それらのエビデンスの多くは筋力アップとの関連の研究であり、持久力パフォーマンスへの影響はあまり知られていない。この論文は、クレアチンの持久系スポーツのパフォーマンスに対するクレアチンのエビデンスを、メカニズムからレースで勝つための戦略への応用まで、広範なトピックを総括している。

クレアチン摂取により持久力パフォーマンスへ影響が生じ得ることのメカニズム

1990年代初頭に、クレアチン摂取によって筋肉内のクレアチン量が最大20%程度増加することが明らかになった。クレアチン摂取後は骨格筋のホスホクレアチン(クレアチンリン酸)の貯蔵が増加し、アデノシン三リン酸(ATP)再合成が促進されたり、回復を助けるように働く。疲労困憊に至る時間を延長する可能性があり、スプリント、無酸素作業能力、タイムトライアルなどに有意なプラスの作用をもたらすことが報告されている。

クレアチン摂取は、グリコーゲンの取り込みと貯蓄にも関連している。加えて、炎症と酸化ストレスを軽減し、さらにミトコンドリアの生合成を増加させる可能性がある。その一方で、クレアチン摂取に伴う筋量増大などによる体重の増加は、持久力パフォーマンスの向上効果を相殺するように働くことも考えられる。

持久力パフォーマンスに関する主なエビデンス

クレアチンの持久力パフォーマンスへの影響を検討した研究の結果は、研究プロトコルによって異なるようだ。全体的に、短時間(約3分)の運動や、低強度での継続的な運動中に高強度運動のバーストが繰り返し発生するような条件で評価している研究では、疲労困憊に至るまでの時間を延長し、総作業量を増やすことが示唆されている。

疲労困憊するまでの時間や総作業量が向上するとしたら、持久力パフォーマンスも向上すると考えられるが、必ずしも研究データに反映されているわけではない。これまでの研究からは、タイムトライアルの向上を示すことができていない。しかし、クレアチンが無酸素運動のパフォーマンスを向上させることは確かであることから、レース中に負荷が急速に高まる状況が発生するような場合や、しばしばレース結果を決定づける重要な瞬間であるラストスパート中のパフォーマンスの向上には、有効である可能性も考えられる。

実際への適用の可能性と推奨事項

現時点で科学的エビデンスに基づき、実際的な適用と推奨事項として、以下を提案することができる。

  • 体重負荷を伴わない持久系スポーツ(例えば自転車競技)の場合、クレアチン20g/日(0.3g/kg/日)4分、5〜7日間の摂取により、筋肉のクレアチン貯蔵量を充足(+20%)できる。その後の維持量は5g/日(0.03g/kg/日)。体重の負荷を伴う持久系競技アスリートの場合は、クレアチン摂取による水分貯留と体重増加の影響が生じる可能性があるため、ローディングフェーズは設けないほうがよい。低用量(3~5g/日)であっても4週間にわたって摂取すれば、クレアチン貯蔵量を充足させるのに十分。
  • クレアチンには高強度運動のパフォーマンスを向上させる働きがあるため、有酸素性高強度インターバルトレーニングによって有酸素能力を強化しようとするアスリートでは、クレアチンの使用が考慮される。
  • 最も研究されているクレアチンの形態は、クレアチン一水和物である。その他の形態のクレアチンがクレアチン一水和物よりも優れているというエビデンスは少ない。持久力パフォーマンスに対するクレアチンの有効性を検討したほぼすべての研究が、クレアチン一水和物を使用したもの。
  • クレアチンの摂取タイミングについては、クレアチントランスポーターのアップレギュレーションという点で、トレーニングにあわせて摂取することが有益と考えられる。クレアチンと炭水化物の同時摂取は、クレアチンの取り込みとグリコーゲンの再合成の双方を強化する効果的な戦略であると考えられる。
  • クレアチン摂取後の反応を男性と女性とで直接比較したデータは限られている。しかし、女性は筋肉内クレアチン貯蔵量が多いため、クレアチン摂取の反応性が低い可能性があり、また月経周期が異なる影響を与える可能性がある。
  • 小児や未成年の持久力パフォーマンスに対するクレアチンの影響のエビデンスは、現時点では乏しい。
  • クレアチンは、クロスカントリースキー、マウンテンバイク、チームスポーツ、水泳、ボート、トライアスロン、自転車競技など、高強度のバースト、複数回のサージ、ラストスパートを含む持久系スポーツに推奨される。
  • クレアチン摂取に対する反応には個人差があるため、オフシーズンのトレーニング中に摂取を試みることが推奨される。
  • クレアチンは、レクリエーションアスリートと高度に訓練された持久力アスリートの双方にとって有益と考えられる。

文献情報

原題のタイトルは、「Creatine supplementation and endurance performance: surges and sprints to win the race」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2023 Dec;20(1):2204071〕
原文はこちら(Informa UK)

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