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スポーツクライマーのサプリ利用はちぐはぐ? エビデンスの高いものを摂取していない傾向

スポーツクライマーのサプリメントの使用状況に関する調査結果がポーランドから報告された。競技レベルにかかわらず、多くのスポーツクライマーがサプリを利用しているものの、エビデンスの低いものの摂取が多くて、豊富なエビデンスのあるものはあまり摂取されておらず、スポーツクライミング領域でサプリ摂取に関する情報が不足している状況が示されたという。

東京2020で正式種目となったスポーツクライミング

アスリートのサプリ利用率は9割を超えると報告されていて、一部の競技ではほぼ100%という報告もある。アスリートのサプリ使用目的は、高強度トレーニングのために不足しがちな栄養素を補うことと、パフォーマンス向上が主なものだが、市場にあふれているサプリの中には、ドーピングリスクのあるものも紛れ込んでいる。一つのパターンは、製造工程の管理が不十分であるために、微量の禁止物質が他の製品に含まれてしまう場合に発生する。より悪質なパターンとしては、禁止物質を使用しているにもかかわらず、それをラベルに表記しないというパターンがある。そのようなサプリを摂取してしまい、意図せずにドーピング違反となることもある。

そのようなドーピングリスクに加えて、サプリの誤った利用方法、例えば過剰摂取や不適切なタイミングでの摂取などにより、期待する効果が得られないばかりか、有害事象のリスクが発生することもある。サプリ摂取に際してこれらの注意が必要なことは、伝統的な競技領域においては、アスリートとサポートスタッフ、および関係者の間でよく知られている。ただし、比較的新興の競技においては周知徹底がなされていない可能性がある。

ボルダリングやリードクライミングというスポーツクライミングは、近年急速に人気の高まりをみせている競技。2021年の東京2020で初めてオリンピック正式種目として採用された、比較的新興の競技と言える。スポーツクライマーは、パフォーマンス向上を意図して、筋力を維持しつつ体重、体脂肪を減らそうとすることが多い。そのために摂取エネルギー量を制限し、主要栄養素および微量栄養素が不足しがちなことが多く、それをサプリで補っている可能性もある。

ただ、これまでに多くの競技ごとのサプリ利用状況が調査されてきているが、スポーツクライミングでのサプリ利用状況はいまだ十分調査されていない。今回紹介する論文の研究は、以上の状況を背景として行われた。

サプリ利用率は女性7割弱、男性8割強

この研究は、ポーランド西部の都市、ヴロツワフで行われた。研究参加者は、クライミングジムのトレーナーを介して、またはソーシャルメディアによって募集された。適格条件は、過去1年以上、定期的にスポーツクライミングを行っていること、除外基準は、クライミングのトレーニング頻度が週に1回未満であり、レクリエーションレベルと判断されるアスリート。なお、この研究は、2019~2021年にかけて、新型コロナウイルス感染症パンデミック中の外出が困難な状況で行われた。

参加者数は110人で、女性40人、男性70人。国際ロッククライミング研究協会(International Rock Climbing Research Association;IRCRA)のグレード評価スケールに基づき、中級レベルが48人、上級レベルが50人、エリートレベルが12人と判断された。サプリの摂取状況の把握には、以前にカナダのアスリートでの調査に用いられ、精度が検証済みのアンケートに、クライミングに関する要素を追加したアンケートを用いた。

25%がベジタリアンの集団で調査

まず、日常の食習慣について問うと、半数近い46%が雑食と回答。30%は動物性食品の摂取をなにかしら制限しているとし、25%はベジタリアンで3%はビーガンだった。ほかに4%が、何らかの栄養素の除去食を行っていた。

サプリを利用しているとの回答は、全体の77.3%であり、性別では女性クライマーは67.5%、男性クライマーは84.3%だった。

競技レベルにかかわらず多く利用されていたサプリは、プロテインサプリ、ビタミンC、ビタミンD、マグネシウム、アミノ酸(分岐鎖アミノ酸〈branched-chain amino acid;BCAA〉や必須アミノ酸のブレンド)などであり、エリートレベルではこのほかに、クレアチン、マルチビタミンも多く摂取していた。ただし統計的な有意差はなかった。

サプリの利用目的と情報源

サプリを摂取する目的として、「健康維持、栄養不足の予防」が最多(女性55%、男性53%)、次いで「回復の促進」だった(同順に42.5%、59%)。男性クライマーは、「回復の促進」、「免疫システムの強化、疾患予防」、「筋肉量・筋力・パワーの増強または維持」を多く挙げ、女性クライマーは、「健康維持、栄養不足の予防」が多かった。競技レベル別の比較では、エリートレベルで「回復の促進」が多く、他群との比較で有意差があった。

サプリに関する情報源は、インターネット(女性65%、男性86%)が多く、以下、クライマー同士からの情報、トレーナー、家族、雑誌が続き、次いで栄養士が挙げられ、その割合は女性で7.5%、男性は21%だった。

スポーツクライマーのサプリ使用に関する推奨事項をまとめる作業が必要

これらの結果からの考察として論文では、「スポーツクライマーは競技レベルにかかわりなく、サプリの使用に関する知識が大幅に不足しているのでないか」と述べられている。その根拠としては、オーストラリア国立スポーツ研究所(Australian Institute of Sport;AIS)によるABCD分類のカテゴリーA(スポーツにおける有益性のエビデンスのあるもの)の利用が少なく、その一方でカテゴリーBやCのエビデンスが不十分なものの利用が多いことを挙げている。例えば、カテゴリーAに含まれるβ-アラニンやクレアチン、硝酸塩、重炭酸ナトリウムを摂取しているスポーツクライマーも一定数存在していたが、他のサプリの利用率に比べて高くなかったとしている。

これら、エビデンスの裏付けが弱いサプリが好んで利用される背景として、恐らく、主要な情報源がインターネットであるためではないかとの推測も示されている。ただし著者らは、インターネットに信頼できる情報を開示することで、優れた教育手段となり得る可能性があるとも述べている。結論として、スポーツクライミングにおけるサプリ利用の推奨事項を作成し、適切な栄養教育を通じて、スポーツクライマーやこの領域の関係者に情報を伝達する必要があるとしている。

なお、本研究の限界点として、ポーランドの1都市のみで実施された調査であり、スポーツクライマー全体の傾向とは言えないことを挙げ、より大規模なサンプルでの調査の必要性も記している。

文献情報

原題のタイトルは、「Evaluation of Supplement Use in Sport Climbers at Different Climbing Levels」。〔Nutrients. 2022 Dec 25;15(1):100〕
原文はこちら(MDPI)

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