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「高タンパク食でテストステロンが低下する」というメタ解析の結果をどう解釈するか?

「High-protein diets and testosterone(高タンパク食とテストステロン)」というタイトルの論文が発表された。テストステロンは男性ホルモンであり、タンパクの同化を促進し筋量や骨量を増加して、スポーツパフォーマンスにとってプラスに作用する。ところが最近、摂取タンパク質量とテストステロンレベルとの関連を検討した研究報告を対象とするメタ解析の結果、高タンパク食ではテストステロンが低下する可能性が示され(DOI: 10.1177/02601060221083079)、議論を呼んでいる(冒頭にタイトルを示した今回取り上げる論文は、その議論を整理する目的で執筆された、英ウスター大学の研究者による論文)。

「高タンパク食でテストステロンが低下する」というメタ解析の結果をどう解釈するか?

高タンパク食の定義

論文ではまず、「高タンパク食」が定義づけられていないことが議論を混乱させている一因だと指摘している。低炭水化物食を定義づけしようとする努力が行われているのと同様に、高タンパク食についても定義づけの努力がなされるべきだと著者は主張。そのうえで、「超高タンパク食(very high-protein diet)」、「低たんぱく食(low-protein diet)」、「高タンパク食(high-protein diet)」を以下のように定義づける提案を行っている。

超高タンパク食は、3.4g/kg/日超を提案

超高タンパク食の定義として、摂取量の許容上限を超えるレベルが提案される。アミノ酸に含まれている窒素は、体に取り込まれない分は尿素に変換されて排泄される。ただし尿素合成速度には限界があり、それを超えると体内にアンモニアが蓄積し毒性が生じ得る。また、消化管機能が低下して下痢や胃内容排出の遅延などが生じ、タンパク質の吸収が減少する。

4.4g/kg/日のタンパク質摂取を8週間継続するという研究では、30人中10人が脱落し、その理由として複数の参加者が消化管の不調や熱感の自覚を訴えたという。それに対して、約3.4g/kg/日までの高タンパク食は、少なくとも健康でスポーツを行っている人の場合は耐えられるようだ。

低タンパク食は、1.25g/kg/日未満を提案

低タンパク食の定義としては、基本的な生理学的機能の必要量を下回るレベルが提案される。米国の食事ガイドラインでは、窒素バランス研究に基づき、これを0.8g/kg/日と設定しており、このレベルは成人の97.5%が満たしている。ただし最近の指標アミノ酸酸化法による研究では、約1.25g/kg/日が適当である可能性が示唆されており、この値は一般人口のタンパク質摂取量に近い。

高タンパク食は、1.9~3.4g/kg/日を提案

高タンパク食の定義としては、平均的なアスリートにとって十分な摂取量が提案される。指標アミノ酸酸化法の研究では、その値は約1.9g/kg/日と見積もられている。興味深いことに、これは20世紀の狩猟採集民族の食事でみられるタンパク質摂取量の下限であり、それが現代ではアスリート集団に該当するレベルである。

上記三つのカテゴリー以外にあたる1.25~1.9g/kg/日、が「適度な(moderate)タンパク質食」ということになる。

超高タンパク食でのみ、テストステロン低下

論文では上記の定義私案に基づき、改めて前出の研究のメタ解析の対象になった報告を検討した結果が述べられている。それによると、超高タンパク食に該当する3.4g/kg/日超のタンパク質を摂取していた研究は、確かにすべてテストステロン低下との有意な関連を報告していた。しかし、3.4g/kg/日以下の高タンパク食での検討では、結果は一貫性が見られないことが明らかになった。

テストステロン低下との関連を報告した3件の研究は、いずれもクロスオーバーデザインで行われていた。

1件は、摂取エネルギー比44%と10%の条件で各10日間介入し、タンパク質摂取量は3.9g/kg/日と0.9g/kg/日であり、高タンパク条件ではテストステロン値が-20.7%低値だった。別の1件は摂取エネルギー比55%と25%で各7日間介入し、タンパク質摂取量は3.7g/kg/日と1.8g/kg/日であり、高タンパク条件ではテストステロン値が-29.8%低値だった。残りの1件は、摂取エネルギー比45%と20%の条件で各3日間介入し、タンパク質摂取量は3.5g/kg/日と1.6g/kg/日であり、高タンパク条件ではテストステロン値が-15.5%低値だった。

テストステロンに影響を与えているのはタンパク質摂取量

上記3研究において、タンパク質摂取量は3.5~3.9g/kg/日の範囲にあり、かなり類似していた。それに対して炭水化物摂取量は研究により大きく異なっていた。これは、テストステロン低下に影響を及ぼす栄養素が、炭水化物ではなくタンパク質である可能性が高いことを示している。実際に、炭水化物摂取量とテストステロン値との関連の研究のメタ解析からは、両者の関連が認められていない。

今後の研究テーマ

これらの検討から本論文の著者は、テストステロンの低下は炭水化物または脂質の摂取量の多寡ではなく、タンパク質の摂取量が過剰な場合に引き起こされる現象であると結論づけている。またそのメカニズムについて、高タンパク負荷によって発生する高アンモニア血症の抑制のために、尿素サイクルをアップレギュレートする反応の結果である可能性があると考察している。

また、今後の研究のために、超高タンパク食、高タンパク食の定義のコンセンサスを確立する必要があることを強調。加えて、タンパク源が異なればテストステロンへの影響も異なる可能性と考えられることから、動物性タンパクと植物性タンパクの異同、自然食品から摂取した場合とサプリメントなどで摂取した場合の異同の検討も今後の検討課題であり、かつ、より長期間介入した場合の影響も明らかにする必要があるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「High-protein diets and testosterone」。〔Nutr Health. 2022 Oct 20;2601060221132922〕
原文はこちら(SAGE)

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