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カフェインは投てき選手のスローイングのパフォーマンスにもプラスに働く

カフェインには、さまざまな競技でのパフォーマンスに対するエルゴジェニック効果が知られているが、新たにスローイングに対する効果をメタ解析で検討した結果が報告された。結果は有意だという。

カフェインは投てき選手のスローイングのパフォーマンスにもプラスに働く

スローイングに焦点を絞ったメタ解析

スローイングの動作が含まれる競技として、野球やハンドボールなどの球技が挙げられるが、それらはスローイング以外のテクニックやスピードなども結果を左右する。それに対して、砲丸投げ、円盤投げ、やり投げ、ハンマー投げなどの投てき競技は、スローイングのパフォーマンスが評価のすべてとなる。

スローイングのパフォーマンスを高めるためのトレーニングの特徴として、例えばベンチプレスでは挙上速度が重要になる。1RM(repetition maximum)の80%でトレーニングする場合、通常はその50%程度を減速フェーズが占めるが、スローイングの成績向上には減速フェーズはできるだけ少なくして、加速度をつけることが望まれる。そのため、一般的な条件でカフェイン摂取の影響を検討した研究の結果が、スローイングにも当てはまるとは言えない。

そこで本論文の著者らは、スローイングパフォーマンスに対するカフェイン摂取の効果を検討した既報文献のみをピックアップして、メタ解析を実施した。このような目的でのメタ解析は、本報告が初めてとのこと。

7種のデータベースから10件の研究を抽出

文献検索には、SPORT Discus、PubMed/MEDLINE、Scopus、Web of Scienceなど、7種のデータベースが用いられ一次検索が行われた。また、Google Scholarでヒットした情報の参考文献、論文筆頭著者個人のコレクションを対象とする二次検索も行った。

適格基準は、健康な成人を対象に、スローイングパフォーマンスに対するカフェイン摂取の影響をプラセボ対照で比較した研究であり、全文が公開されている英語論文。スローイングパフォーマンスの評価には、投てきの記録(例えば、砲丸やメディシンボールの投球距離)または速度(例えばベンチプレスの挙上速度)を採用しているものを適格とした。学会発表の抄録などは除外した。これらの検索は、2022年9月26日に、2名の研究者が独立して行った。

一次検索で267報がヒット。重複、およびタイトルと抄録に基づくスクリーニングを経て、17報を全文精査の対象とし、9報が適格と判断された。除外された研究の多くの除外理由は、介入にカフェイン単独ではなく、他の栄養成分も用いていたことだった。

一方、参考文献の二次検索では694報がヒットしたが、それらからは適格基準を満たすものは見つからず、筆頭著者のコレクションからの1報のみが追加され、計10報の報告が残った。それらのうちの1報は、異なる二つの群で比較対照試験を行っていたため、研究件数としては11件がメタ解析の対象とされた。

メタ解析対象研究の特徴

10報の論文は2012~22年に発表され、二重または三重盲検試験として実施されていた。研究の参加者数は合計151人(女性40人、男性111人)で、1試験あたりの中央値は13人。6件はレジスタンストレーニングを行っている個人を対象としており、ほかにハンドボール選手、砲丸投げ選手で評価した研究が各2件だった。

カフェインの摂取量や方法は、8件は2~12mg/kgの範囲の用量で液体またはカプセル、2件は100mgのカフェインガムまたは75mgのカフェインジェルだった。評価方法は、4件ではメディシンボール(2、5、9kg)、2件は砲丸投げ(女性4kg、男性7.26kg)で、他の3件はベンチプレスの挙上速度(1RMの30%の負荷)だった。

投てきの記録や挙上速度でカフェイン優位

11件の比較対象試験のうち、カフェイン摂取に有意な効果を報告した研究が5件、プラセボ優位とする研究が1件、非有意という結果が5件だった。

メタ解析の結果は、カフェイン摂取の有意なエルゴジェニック効果を支持するものだった(標準化平均差〈Standardized mean difference;SMD〉0.19〈95%CI;0.05~0.33〉、p=0.007、I2=62%)。感度分析として、プラセボ優位とした1件の研究を外れ値として除外した解析を行うと、カフェインのエルゴジェニック効果は若干増加した(SMD0.23〈95%CI;0.12~0.33〉、p<0.0001、I2=32%)。

評価項目やカフェイン摂取量で層別化したサブグループ解析

評価項目別のサブグループ解析

投てきの記録で評価した研究では、SMD0.15(95%CI;-0.09~0.40、p=0.22、I2=76%)であり、有意差がみられなかった。ただし、前述のように、プラセボ優位と報告していた1件の研究を除外した感度分析では、投てきの記録でも、カフェイン摂取の有意性が認められた(SMD0.25〈95%CI;0.07~0.43〉、p=0.007、I2=51%)。

挙上速度で評価した研究は有意な結果だった(SMD0.24〈95%CI;0.10~0.37〉、p=0.0006、I2=28%)。

カフェイン摂取量別のサブグループ解析

3mg/kg以下のカフェインを使用した研究は有意な結果だった(SMD0.18〈95%CI;0.05~0.31〉、p=0.006、I2=41%)。

3mg/kg超のカフェインを使用した研究では、SMD0.17(95%CI;-0.08~0.41、p=0.19、I2=73%)であり、有意差がみられなかった。ただし、前述同様、プラセボ優位とした1件の研究を除外した感度分析では、3mg/kg超でも有意性が認められた(SMD0.29〈95%CI;0.16~0.43〉、p<0.0001、I2=0%)。

投てきパフォーマンスの評価には、ある程度の負荷が必要か

以上より論文の結論では、「カフェインの投てきに対するエルゴジェニック効果は小さなものかもしれないが有意でだった」と述べられている。また、今後は「女性を対象とした研究データを充実させる必要がある」と課題も提示している。

なお、解析対象となった研究のなかで唯一プラセボが有意としていた研究について、「その理由は不明」としながらも、同研究が2kgという他の研究に比べて軽量のメディシンボールを用いて行われていたことから、カフェインの投てきにおけるエルゴジェニック効果を検討するには、ある程度の負荷の閾値が必要なのではないかとの考察を加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Ergogenic Effects of Caffeine on Ballistic (Throwing) Performance: A Meta-Analytical Review」。〔Nutrients. 2022 Oct 6;14(19):4155〕
原文はこちら(MDPI)

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