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女性自転車選手の7割が減量のプレッシャーに曝され、8割は摂食障害のリスクを認識

女性のトップレベル自転車選手(サイクリスト)に関する摂食障害の実態を調査し、既報研究に基づく他の競技のアスリートや一般女性集団との比較をしながら考察を加えている論文が発表された。トップレベルの女性自転車選手は一般女性よりも摂食障害のリスクが高いこと、選手の多くはそのリスクを認識していることなどが明らかになったという。

女性の自転車選手の7割が減量のプレッシャーに曝され、8割は摂食障害のリスクを認識

国際自転車競技連合に登録されているトップレベルの女性選手を調査

スポーツアスリートの摂食障害(eating Disorders;ED)の有病率が高いことに関心が高まっている。これまでの研究から、そのハイリスク者は、女性と持久系スポーツアスリートであることが示されている。アスリートのEDリスクについてはさまざまな研究がなされているが、今回紹介する研究ではとくにトップレベルの女性自転車選手に焦点を当てながら、他の集団と比較した解析が行われている点が特徴。また、アスリート自身のEDまたは、乱れた食行動(disordered eating;DE)の認識についても調査している。

120人の選手を対象にEAT-26などで食行動等を評価

この研究は、国際自転車競技連合(Union Cycliste Internationale;UCI)に登録されているトップレベルの女性自転車選手を対象に実施された。2018年1月9日時点の409人の登録アスリートのうち、電子メールまたはFacebookで連絡可能だったのが368人で、そのうち136人がwebアンケートへの回答を開始。すべての質問に回答を終了したのは120人だった。

アンケートの質問項目は、身長や体重のほかに、26項目からなる摂食態度テスト(eating attitudes test;EAT-26)で過去6カ月間の食行動、体重変化、ED治療歴などを質問。また、乱れた食行動(DE)については、衝動的な大食(むちゃ食い)、自己誘発性嘔吐、下剤や利尿剤の乱用、オーバートレーニングについて把握する質問も含まれていた。

3人に1人は摂食障害(ED)精査対象とすべきスコア

解析対象者は20~44歳で平均25.2±4.5年、BMIは17.0~24.6の範囲で、22.5%がBMI 19.5未満であり、さらに10.0%はBMI 18.5未満だった。また、13.2%はEDの治療歴を有していた。

EAT-26のスコアの分布をみると、32.0%は20点以上であり、摂食障害(ED)の可能性の精査が必要な対象と判定された。それ以外に27.9%は10~19点の範囲であり、乱れた食行動(DE)と判定された。40点以上と極めて高いスコアを示したアスリートも、5.7%存在していた。

このEAT-26の分布を、過去の既報研究と比較すると、体操選手よりは低いものの、一般女性や陸上長距離アスリートよりも高値に分布していた。

乱れた食行動(DE)については、過食とオーバートレーニングが、全アスリートの半数以上で観察された。ただし、それらの行動の頻度は全体的に低く、週に1回またはそれ以上の頻度で行っていると報告したアスリートは4分の1未満だった。また、嘔吐や薬剤の使用はまれだった。

アスリートの仲間に摂食障害の患者がいるとの回答が9割

アスリートの8割以上が、自転車競技をDEやEDを発症するリスクの高いスポーツと考えていることもわかった。また、約9割のアスリートが、女性自転車選手の仲間にED患者がいると回答した。

7割のアスリートは、パフォーマンスを向上させるために減量を指示されたことがあると述べた。約2割のアスリートは、このアンケートへ回答することも不快だと回答した。

EDリスクの認識の程度を表すスコアは、EAT-26スコアとの間に、中等度の有意な正相関が存在した(r=0.379,p<0.001)。つまり、摂食障害のリスクが高いアスリートほど、自転車競技をEDリスクの高い競技と認識していた。

実際の体重と理想体重の乖離

自分の理想とする体重と実測値との比較では、「理想体重より実測値のほうが低い」とする回答が4.1%であり、「一致している」との回答は11.5%であって、その他の多くは「実測値が理想体重を上回っている」と回答した。

その乖離の幅をみると、54.1%は1.0~1.05の範囲の乖離であり、24.6%は1.05~1.1の乖離であって、他の5.8%は1.1以上乖離していた。

たび重なる注意喚起がトップレベルの女性自転車選手には届いていない

以上の結果を基に著者らは、「トップレベルの女性自転車選手は、DEやEDを発症するリスクを有しており、彼ら自身もそのリスクを認識している。また、そのハイリスク者を簡便に抽出可能な指標も存在している。DEやEDのリスクを抑制するには、予防活動と早期発見のためのサポート体制を強化する必要がある」と結論をまとめている。

また、それ以外に考察として、「アスリートのEDリスクについては既に多くの場所で注意喚起がされてきている。ところが、驚くべきことに、トップレベルの女性自転車選手のコミュニティーには、その注意喚起が実質的な影響を与えていないようである」とも述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Eating disorder risks and awareness among female elite cyclists: an anonymous survey」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2022 Sep 23;14(1):172〕
原文はこちら(Springer Nature)

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