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乳製品の摂取量が多いほど骨折、心血管疾患、全死亡リスクが低下 コペンハーゲン在住1,746人を30年間追跡

平均30年という長期間追跡した縦断研究から、発酵乳製品の摂取量が骨折リスクと逆相関し、低脂肪乳の摂取量が心血管疾患や冠動脈心疾患のリスク、さらには全死因リスクとも逆相関するというデータが報告された。デンマークの一般市民1,700人以上を対象とする研究の結果である。

ひと口に乳製品といっても、種類はいろいろ

乳製品は、タンパク質や微量栄養素が豊富に含まれているため、健康的でバランスのとれた食事において重要とされるが、その反面、飽和脂肪酸が多く含まれており、心血管代謝への悪影響を及ぼす可能性がある。これまでに乳製品と健康アウトカムの関連を検討した研究が複数行われているが、結論は一貫性がみられない。その理由として、乳製品にはさまざまなタイプがあり、例えば発酵乳製品を含むか含まないかといった違いや、牛乳のみでみても高脂肪乳と低脂肪乳などの違いがあり、それらの違いが結果に影響を及ぼしていると考えられる。

そこで今回紹介する論文の著者らは、乳製品全体の摂取量およびサブタイプに分類した摂取量と、健康アウトカムとの関連を検討した。

コペンハーゲンの居住者1,700人強を30年間追跡

この研究では、コペンハーゲンに住む30、40、50、60歳の市民4,807人に参加協力を依頼。3,608人がベースラインの健康診断に参加した。参加者全員に7日間(1週間)の食事日誌を記録してもらい、111品目の食品の重量(計量不能の食品はサイズを記録)を把握した。この食事日誌の記録が不十分な参加者と、ベースライン時に心血管代謝疾患や骨折のあった参加者を除外し、1,746人を解析対象とした。

乳製品摂取量との関連を評価したアウトカムは、心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)、冠動脈心疾患(coronary heart disease;CHD)、骨折、全死亡の発生率など。

総乳製品摂取量は週あたり365.1g

解析対象者の平均年齢は47±11.0歳で、女性が52.2%、BMIは24.5±3.7であり、総乳製品摂取量は365.1±244.4g/週(範囲0~2,086.1g/週)。

総乳製品摂取量の四分位数で全体を4群に分けて比較すると、第4四分位群(乳製品摂取量の多い上位25%)は、より若く、男性の割合が高く、非喫煙者でBMIが低く、摂取エネルギー量が高く、身体活動量が多く、教育歴が長く、マルチビタミンサプリメントの利用率が高く、飲酒量は少ない傾向があった。また、高血圧(140/90mmHgで定義)、心筋梗塞の家族歴、コレステロール、中性脂肪が低い傾向があった。

総摂取エネルギー量を調整後、第4四分位群はタンパク質と炭水化物の摂取量が有意に多く、脂質は少なかった。

発酵乳製品は骨折リスクを下げ、低脂肪乳はCVD、CHD、全死亡リスクを下げる可能性

平均30年の追跡期間中に、総CVDイベントが904件、CHDイベントは332件、骨折は447件、全死亡は680件記録されていた。解析に際しては、イベント発生率に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、BMI、総コレステロール、中性脂肪、摂取エネルギー量、喫煙状況、飲酒量、身体活動習慣、教育歴、心筋梗塞の家族歴、マルチビタミンの利用、高血圧の有無)の影響を調整した。

総乳製品摂取量は、上記の交絡因子を調整する前は、骨折以外のイベントリスクとの関連があり、摂取量が多い群で低リスクだった。ただし、交絡因子調整後は、いずれのアウトカムとも有意な関連が認められなかった。

発酵乳製品の摂取量が多いと骨折リスクが低下

続いて、発酵乳製品、低脂肪乳の摂取量との関連を検討した。

まず、発酵乳製品の摂取量との関連では、CVD、CHD、および総死亡リスクは、有意な関連が認められなかった。ただし骨折については、発酵乳製品の摂取量が多い群ほど低リスクだった。

具体的には、第1四分位群(摂取量26g/週未満)を基準として、第4四分位群(同133g/週超)はHR0.67(95%CI;0.50~0.90)と33%低リスクであり、全体の傾向性p値が0.02だった。

低脂肪乳の摂取量が多いとCVD、CHD、全死亡のリスクが低下

次に、低脂肪乳の摂取量との関連では、上記の発酵乳製品とは反対に、骨折リスクとは有意な関連がなく、他の3つのアウトカムと有意な関連が認められた。

例えば、CVDは傾向性p値が0.03、CHDは同0.04であり、いずれも低脂肪乳の摂取量が多い群ほど低リスクだった。

また、総死亡に関しては、第1四分位群(摂取量19g/週未満)を基準として、第3四分位群(同58~194g/週)はHR0.66(95%CI;0.53~0.83)と34%低リスクであり、第4四分位群(194g/週超)はHR0.77(95%CI;0.61~0.97)と23%低リスクであって、全体の傾向性p値が0.004だった。

まとめると、乳製品の総摂取量は骨折や心血管代謝関連イベント、全死亡リスクと有意な関連はないが、乳製品のサブタイプ別に検討すると、有意な関連も認められた。ただし著者らは「残余交絡の影響も想定されるため、今後のさらなる研究が必要」と述べている。例えば、乳製品の摂取量が多いことに伴い、他の食品の摂取量が減っていて、そのことがイベントリスクに影響を与えているとも考えられるという。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between dairy consumption and cardiovascular disease events, bone fracture and all-cause mortality」。〔PLoS One. 2022 Sep 9;17(9):e0271168〕
原文はこちら(PLOS)

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