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β-アラニン摂取の体組成への影響は? システマティックレビューとメタ解析

β-アラニンの摂取が運動パフォーマンス上のメリットにつながる可能性については、豊富なエビデンスが示している。では、体組成はどうだろうか? β-アラニン摂取の体組成への影響に焦点を当てたシステマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。

β-アラニン摂取の体組成への影響は? システマティックレビューとメタ解析

β-アラニンの体組成への影響は研究目的になりにくい?

体組成の改善(体脂肪量・率の低下と除脂肪体重の増加)のために、多くの栄養戦略が用いられている。一般的には、運動トレーニングと組み合わせたタンパク質摂取が推奨され、アスリート集団だけでなく一般人口の健康増進目的でも広く行われている。実際に、卵、牛乳、大豆、肉などのタンパク質が豊富な食品の摂取による除脂肪体重の増加への有用性は十分に確立されている。

また、タンパク質を構成しないアミノ酸であるβ-アラニンは、筋肉内のカルノシン濃度を高め、疲労閾値の上昇、高強度運動パフォーマンスの向上をもたらすサプリメントとして、アスリートの間での利用が増えている。その効果を示した研究も少なくなく、既にメタ解析の結果も報告されている。ただし、体組成への影響はあまり注目されておらず、研究数が少ない。体組成への影響を示した研究も、それを主要評価項目とはしておらず、副次的な評価にとどまっているものが大半である。

このように、エビデンスは少ないながら、β-アラニンが体組成を改善させたとする研究も存在する。しかしそれを否定するものもあり、結果に一貫性を欠いている。

これを背景として本論文の著者らは、システマティックレビューとメタ解析により、この点を検討した。

β-アラニンに関する20件のRCTを抽出

システマティックレビューとメタアナリシスのガイドライン(PRISMA)に則して、PubMed/Medline、Scopus、Web of Science、Embaseなどの文献データベースに2021年4月までに収載された論文を対象として、体組成に対するβ-アラニン摂取の影響を検討した無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)の報告を検索。

適格基準は、研究対象が18歳以上の成人であり、β-アラニン摂取による介入の影響をプラセボ等の対照群と比較し、結果を体組成関連指標(体重、体脂肪率、体脂肪量、除脂肪体重のいずれか)で検討しているものとした。一方、除外基準は、横断研究、症例対照研究、無作為化されていない研究、総説、β-アラニン以外のサプリメントとの組み合わせで介入している研究など。

一次検索で1,413件がヒットし、重複削除、タイトルとアブストラクトに基づくスクリーニングを経て、28件を全文精査の対象とした。そのうち8件はデータ解析に必要な数値の欠如のため除外し、最終的に20件のRCTの報告をメタ解析の対象とした。

20件の研究の特徴

20件の研究は2008~2021年に報告されており、計25の介入群が設定されていた。研究参加者数は計492人(範囲8~36人)、年齢は17.4~53.5歳、13件は男性のみ、4件は女性のみ、3件は両性を対象としており、体脂肪率は7.8~35.7%だった。

研究デザインは19件が並行群間比較、1件はクロスオーバーであり、β-アラニンの用量は1.6~6.4g/日で介入期間は3~10週間。2件を除いてすべて運動と組み合わせた介入が行われていた。

検討した体組成関連指標に有意差は認められない

体重に関しては16件の研究が行われていた。加重平均差(weighted mean difference;WMD)は-0.15(95%CI;-0.78~0.47)kg(p=0.631)で有意な影響はみられなかった。

体脂肪量に関しては6件の研究が行われていた。WMDは-0.24(95%CI;-1.16~0.68)kg(p=0.612)で有意な影響はみられなかった。また、体脂肪率に関しては16件の研究が行われていた。WMDは-0.06(95%CI;-0.53~0.40)%(p=0.782)で有意な影響はみられなかった。

同様に、除脂肪体重に関しては10件の研究が行われていたが、WMDは0.05(95%CI;-0.71~0.82)kg(p=0.889)であり、有意な影響はみられなかった。

層別化した解析でも有意差のあるサブグループはみられず

β-アラニン投与量(6g/日未満または以上)、介入期間(8週間未満または以上)、並行して行った運動のタイプ(筋力トレーニング、持久力トレーニング、それらの組み合わせ)に層別化して行った解析でも、有意な群間差がみられるサブグループは存在していなかった。

非有意の原因は、体組成が主要評価項目でなく、介入前の体組成が良好なことなど?

まとめると、β-アラニンによる介入の体組成に対する有意な影響は、どの指標で検討しても示されなかった。結論として著者らは、「この結果はβ-アラニンの摂取が、摂取量や運動トレーニングとの組み合わせの有無にかかわりなく、体組成関連指標を改善する可能性は低いことを示唆している」と述べている。

なお、スポーツパフォーマンスに対する効果のエビデンスがあるのにもかかわらず体組成への影響が否定的という結果の理由については、以下のような考察が述べられている。

理由の一つ目は、この領域の研究の主目的が運動パフォーマンスの向上であり、体組成の変化は副次的評価項目として検討されていることが多いこと。つまり、体組成の改善を目的とした研究デザインで実施されていないこと。

二つ目の理由は、スポーツパフォーマンスへの効果の検討という目的のため、研究対象者は、介入前の時点で既に体脂肪率が低く、体組成の改善の余地が少ない対象者が多く含まれていると考えられること。それに関連して、男性の被験者が多数を占めていること。

これら諸点が体組成への影響を評価しにくくしていると考えられるという。

ただし、研究間の不均一性は十分低く(大半の評価項目についてI2=0.0%)、本研究の結果の信頼性は高いと考えられることから、β-アラニンの体組成への有用性を見いだすには、より長期間の介入を行うなど、今後のさらなる研究が求められるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of beta-alanine supplementation on body composition: a GRADE-assessed systematic review and meta-analysis」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2022 May 31;19(1):196-218〕
原文はこちら(Informa UK)

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