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スポーツ栄養のトレンド! 第18回国際スポーツ栄養学会(ISSN)の発表演題ダイジェスト

今回は、国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)の第18回学会抄録集から、いくつかの研究発表をピックアップして紹介する。

第18回国際スポーツ栄養学会(ISSN)の発表演題の中からピックアップして紹介

大学生長距離ランナーの上気道感染症リスクに対するベリーの有用性

原題:A Nutritional Intervention to Attenuate Upper Respiratory Tract Infections in Collegiate Distance Runners.

持久系アスリートは上気道感染症(URTI)のリスクが高いことが知られている。一方、ベリーには、ビタミンC、抗酸化物質、ポリフェノールなどの免疫にかかわる化合物が豊富に含まれている。そこで、ベリーの習慣的な摂取により、持久系アスリートのURTIの罹患率が低下するとの仮説のもと、研究が実施された。

対象は、ふだんトレーニングを行っている大学生長距離ランナー14人。粘膜免疫のマーカーとして唾液免疫グロブリンA(SIgA)レベルの上昇、および、全身性ストレス反応のマーカーとして唾液中コルチゾールの低下を評価した。

クロスカントリーのシーズンを対照期間として、14人全員が通常の食事を摂取。続くトラックシーズンを介入期間として、8人が毎日の食事に、生または冷凍のベリーを2カップ摂取した。

対照期間と介入期間の双方で、週あたりの走行距離と、なんらかの疾患の症状および日常生活動作(ADL)の低下との間に相関がみられた。この相関の傾きと上昇の程度は、対照期間が介入期間よりも大きかった。

SIgAレベルは40~60マイル(64~97km)走行していた群で最も高く、また介入期間よりも対照期間のほうが高かった。唾液コルチゾールレベルは、対照期間では60~80マイル(97~129km)走行していた群で最高だったが、介入期間ではその群が最低だった。これにより、ベリーによる介入がコルチゾールレベルを低下させ、高強度トレーニングに対するストレス反応を抑制するように働いた可能性が考えられた。

インスタグラムを利用した消防士への栄養教育に有意な減量効果

原題:The Effects of Nutrition Intervention Through a Social Media Platform (Instagram) on Nutrition Knowledge and CVD Risk Factors Amongst Fire-Fighters.

消防士は身体活動量の多い職業ではあるが、勤務中の死亡原因のトップは心血管疾患(CVD)であり、高血圧、肥満、脂質異常などの危険因子の管理が必要とされる。近年、ソーシャルメディア(SNS)が健康情報提供のプラットフォームとしても注目されるようになりつつある。そこで、インスタグラムを通じて配信される栄養コンテンツが、消防士の健康と栄養知識に影響を与え得るかが検討された。

53人の消防士に対しインスタグラムによる栄養指導を実施。スポーツ知識アンケート(ANSKQ)の正答率は、46±13%から52±13%へと有意に向上した(p<0.0017)。カテゴリー別にみると、一般的知識は60%から65%へと5ポイント上昇し(p<0.04409)、スポーツ栄養の知識は39%から45%へと6ポイント上昇した(p<0.0108)。また、6週間で体重が有意に減少した(-1.54±2.29kg,p<0.00007)。血圧は有意な変化がなかった。

発表者は、「SNSは消防士の健康増進に有益なツールとなり得る」としている。

ATP摂取によるパフォーマンス向上の急性効果を得るために必要な用量の検討

原題:Dose-Ranging Study of Acute ATP Supplementation to Improve Athletic Performance.

アデノシン三リン酸(ATP)の経口摂取によるパフォーマンスへの急性効果を得るための最低必要量が検討された。

レクリエーションレベルのトレーニングを継続している男性20人(28.6±1.0歳、81.2±2.0kg、175.2±1.4cm、1RM141.5±5.0kg)を対象とする無作為化クロスオーバーデザインにて、ATP400mg、200mg、100mg、プラセボを1回接種後に、1RMの80%の負荷で失敗するまでを4セット反復してもらった。各条件間のウォッシュアウト期間は1週間。

プラセボと比較しATP400mgは1セット目の反復回数を有意に増加させ(+13%,p<0.04)、総反復回数(+7%)や総重量(+6%)も増加した。200mgは1セット目の反復回数の数値は増加した(+6%)。100mgはプラセボと有意差がなかった。これらより、ATPの急性効果を得るための最小用量は400mgと決定された。

高用量のクルクミン摂取による貧血発症の症例報告

原題:High-dose Curcumin Supplementation Induces a Decrease in Hemoglobin and Fatigue in a Resistance-Trained Male: a Case Report.

元重量挙げ選手で約31年間、レジスタンストレーニングを行い、直近の約1年間に高用量のクルクミン摂取を続けていた男性(47歳、104.5kg、182.9cm)の症例報告。以前から1日に、クレアチン一水和物5g、必須アミノ酸7.5g、ホエイプロテイン40g、魚油2.5gなどを継続的に摂取しており、2019年1月からクルクミン5gを追加した。それにより自覚的な関節痛の軽減を認めたが、6月に高強度運動中の疲労を感じ始めた。

11月になり医師の助言と本人の述べる“研究”のため、クルクミン摂取を中止。ヘモグロビンは、10月が11.8g/dL、11月13.1g/dL、12月14.6g/dLと回復し、疲労感なく以前のトレーニングを行えるようになった。著者らは「慢性的な高用量のクルクミン摂取は貧血を誘発し、運動中の極度の疲労を引き起こす可能性がある」と述べている。

エナジードリンクの急性摂取が一部の認知機能指標を向上

原題:The Effects of an Energy Drink on Measures of Cognition.

トレーニングを行っている12人(25±5歳、男性3人/女性9人、1.66±0.08m、69.4±12.3kg、体脂肪率21.4±5.1%、カフェイン摂取量194±144mg/日、有酸素トレーニング5.1±2.9時/週、レジスタンストレーニング3.3±1.5時/週)を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験によりエナジードリンク摂取の認知機能への影響を検討した。

3日以上のウォッシュアウト期間の前後でエナジードリンクまたはプラセボ摂取の45分後に、パターン比較処理速度などにより認知機能を評価し、続けてトレッドミル負荷試験を行った。認知機能に関しては、パターン比較処理速度がエナジードリンク摂取条件で有意に優れていた(p=0.0301)。また、PVTテストでの誤スタート回数が、エナジードリンク摂取条件で少なかった(p=0.0254)。その他の指標に有意差はなかった。

結論は、「エナジードリンクの急性摂取はパターン比較処理速度を向上させ、PVTタスクでの誤スタートを減らす。ただし、走行パフォーマンスへの影響は認められなかった」とまとめられている。

筋力トレーニング+魚油摂取が若年女性の下半身のパワーを向上

原題:Fish Oil Supplementation Combined with a Resistance Training Program Enhances Lower-Body strength in Young Women.

レクリエーションレベルのトレーニングを行っている女性8人(28.4±5.5歳、167.3±8.8cm、69.6±11.1kg、体脂肪率31.4±3.8%)を2群に分け、両群にレジスタンストレーニングの指導を行ったうえで、1群にはEPA+DHAを4g/日、他の1群にはプラセボ(同量のベニバナ油)で10日間の介入を行った。

両群ともに、下半身と上半身の筋力(いずれもp<0.001)と除脂肪体重(p=0.005)は時間の経過とともに有意に増加し、体脂肪率は有意に低下した(p=0.007)。さらにEPA+DHA群はプラセボ群に比較し、下半身の筋力の上昇幅が有意に大きかった(p=0.024)。上半身の筋力の変化量のプラセボ群との差はわずかに有意水準に至らず(p=0.056)、除脂肪体重や体脂肪率の変化量は有意差がなかった。

なお、群間差の効果量は、下半身の筋力がd=2.17、上半身の筋力d=1.78、除脂肪体重d=0.99、体脂肪率d=1.35であり、下半身の筋力以外は非有意であるものの大きな値が示された。これにより「これらの効果が臨床的に関連している可能性があることは明らか」と述べられている。

コラーゲンペプチドが身体活動量の多い中年期成人の膝の痛みを改善

原題:Collagen Peptide Supplementation Improves Measures of Activities of Daily Living and Pain in Active Adults

高齢者では身体の痛みがADLを制限する主要な原因であり、QOL低下と疾患リスク増加に関連していることから、痛みのコントロールが重要。しかし薬剤による疼痛管理はしばしば副作用を伴う。それに対してコラーゲンペプチド(CP)は、結合組織の修復や痛みの軽減作用が報告されている。ただし長期摂取の有効性のエビデンスは十分でない。この研究では、健康で活動的な中年期成人を対象とする二重盲検無作為化比較対照試験で、6カ月の介入による痛みとADLに対する影響が検討された。

61人を無作為に以下の3群に群分けした。CP20g群(21人〈うち男性11人〉)、CP10g群(19人〈同7人〉)、プラセボ群(21人〈12人〉)。膝の症状のスコア(KOOS。高値であるほど状態が良好であることを意味する)を用いて疼痛を評価するとともに、ADLスコアの経時的変化を評価した。また、介入期間中の身体活動量の中央値で二分し、身体活動量との関連も調べた。

身体活動量の多い群ではCP投与と痛みスコアの有意な関連が認められた。身体活動量の少ない群では有意な関連は示されなかった。身体活動量の多い群ではCPの投与量にかかわらず、痛みスコアが有意に改善したが(20g群+2.6%、10g+4.2%)、プラセボ群は有意に低下した(-6.8%)。また、CPの投与量とADLスコアとの間には有意な関連があり、身体活動量の多寡にかかわらず改善し(20g群+0.3%、10g群+4.1%)、プラセボ群は有意な変化がなかった(-1.5%)。

結論は、「6カ月にわたるコラーゲンペプチドの摂取が、中年期成人のADLに対する保護効果、および身体活動量が多い人の痛みの改善をもたらす可能性がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Proceedings of the Eighteenth International Society of Sports Nutrition (ISSN) conference and expo」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2022 May 20;19(Suppl 1):1-69〕
原文はこちら(Informa UK)

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