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高ケトン血症の運動パフォーマンスへの影響、内因性と外因性で異なる

血中ケトン体レベルを、ふだんの食事を変更することで内因性に上昇させた場合と、ケトン飲料を摂取することで外因性に上昇させた場合とでは、運動パフォーマンスへの影響が異なるとする研究結果が報告された。一般的な食事を対照群として、計3群で比較した結果。

高ケトン血症の運動パフォーマンスへの影響、内因性と外因性で異なる

体内のケトン体を増やす二つの方法を比較

中等度から高強度(70%VO2peak超)の運動ではグリコーゲンが主要なエネルギー源として使われるが、グリコーゲンの貯蔵には限りがあるため、長時間(1時間超)の運動には何らかの対策が必要になる。その対策の一つとして、ケトン体を基質として利用しグリコーゲンの消費を抑制可能ではないかとする考え方がある。ケトン体のエネルギー消費への寄与割合は、条件により0~18%の範囲と報告されている。ただし、ケトン体が内因性に産生された場合と、外因性に供給された場合とで、その利用に差が生じるのか否かは明らかになっていない。

内因性に高ケトン血症を引き起こす方法は、低炭水化物食またはケトジェニック食と呼ばれる方法であり、厳格な炭水化物摂取制限によって血漿中のβ-ヒドロキシ酪酸(βHB)は3日前後で顕著に上昇し、5~6週間でプラトーに達する。一方、外因性に高ケトン血症を引き起こすには、ケトンエステルを摂取するという方法がとられる。

今回紹介する論文の著者らは、これら二つの方法による高ケトン血症の運動パフォーマンスへの影響を比較検討した。

21人を3群に分けて12日間介入

25人の研究参加者が公募または口コミによって募集された。適格条件は、年齢が18~45歳で週に6時間の運動トレーニングを過去3カ月以上継続していること、疾患や怪我のないこと、糖・脂質代謝に影響を及ぼし得る医薬品やサプリメントを服用していないこと、登録前の2カ月以上は炭水化物の多い一般的な食習慣であること。募集された被験者は、サイクリング、ランニング、トライアスロンまたはボートのいずれかのスポーツを行っていた。

25人中7人が内因性高ケトン血症を引き起こすケトン食療法の実施を希望。他の18人が無作為に、外因性高ケトン血症を引き起こす群、または一般的な炭水化物摂取量とする対照群に割り当てられた。12日間の介入期間中に4人が脱落し、最終的な解析は各群7人の計21人で行われた。

内因性高ケトン血症と外因性高ケトン血症は同じではない

介入前の各群の年齢、性別(女性の割合)、身長、体重、VO2peak、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)に有意差はなかった。

内因性高ケトン血症を引き起こす群では、摂取エネルギー量が有意に近い増加

高ケトン食により内因性高ケトン血症を引き起こす群(End Ket群)は、炭水化物5%、脂質80%、タンパク質15%を目標とする食事の維持が求められた。その遵守状況は、食事記録、毛細血管採血検体を用いる簡易測定器による朝食前血中βHB濃度、および24時間畜尿によるβHB排泄量により評価した。

ケトンエステルを摂取し外因性高ケトン血症を引き起こす群(Ex Ket群)は、習慣的な食事を継続したうえでβHB飲料を摂取してもらった。βHB飲料摂取後は、約10時間、血中βHB濃度が上昇すると予測された。

対照群(CHO群)は、アスリートに推奨される一般的な高炭水化物食を維持してもらった。

介入中に、内因性高ケトン血症を引き起こす群(End Ket群)では炭水化物が減り脂質が増え、対照群(CHO群)は反対に炭水化物が増え脂質が減った。外因性高ケトン血症を引き起こす群(Ex Ket群)は摂取栄養素量に有意な変化がなかった。なお、摂取エネルギー量は、CHO群とEx Ket群の2群は有意な変化がなかったのに対して、End Ket群は境界域(p=0.05)の増加が認められた。

介入前および介入中の摂取量は以下のとおり。矢印の左が介入前、右が介入中の数値で、*は介入前からの有意な変化を示す。単位は摂取エネルギー量はkcal、その他は%。

End Ket群

摂取エネルギー量3,660±719→4,118±945、炭水化物48.5±9.4→4.2±1.8*、脂質35.7±10.0→83.5±4.6*、タンパク質15.7±3.5→12.2±3.5。

Ex Ket群

摂取エネルギー量2,907±725→±4,318±1050、炭水化物52.7±13.9→49.5±10.1、脂質29.5±10.4→27.6±9.3、タンパク質17.8±4.2→12.4±2.3。および、βHBは介入前0→介入後10.3±1.9。

CHO群

摂取エネルギー量3,988±1,308→3,967±660、炭水化物53.5±4.7→65.72±7.69*、脂質34.0±2.2→21.8±4.7*、タンパク質12.4±4.4→12.6±3.0。

体重、尿中βHB量の変化

介入前の体重は3群で有意な群間差はなかった。介入中はCHO群とEx Ket群は有意な変化がなかったが、End Ket群は3.1±1.0kg有意に減少した。体組成は3群ともに介入による有意な変化を認めなかった。

24時間畜尿による尿中βHBは、介入前には3群すべてほとんど観察されなかった。介入中は、CHO群に比較しEnd Ket群は最大650倍、Ex Ket群は最大150倍に上昇した。

End Ket群で持久力が有意に低下

持久力パフォーマンスは、一晩絶食後に自転車エルゴメーターを用いて70%VO2peakの負荷で90分の定常運動を実施し、10分間の休憩を挟んで75%VO2peakで5分ごとに5%ずつ負荷を増やすという方法で評価した。介入前のこのテストの結果に有意な群間差はなかった。

介入11日目に行った同様のテストの結果、CHO群(平均差5分56秒〈95%CI;-7分12秒~19分6秒〉)と、Ex Ket群(同4分35秒〈-8分32秒~17分42秒〉)は有意な変化がなかった。それに対してEnd Ket群は、約65%有意に低下していた(-36分18秒〈-49分24秒~-23分6秒〉,p<0.001)。

End Ket群で自覚的運動強度(RPE)が有意に上昇

脂質の酸化速度は、CHO群とEx Ket群は介入前後で有意差がなく、End Ket群は2.8倍に増加した(p=0.02)。それに伴い、呼吸交換比(respiratory exchange ratio;RER)はEnd Ket群でのみ有意に低下していた(p<0.006)。

自覚的運動強度(rating of perceived exertion;RPE)は、End Ket群は有意に上昇(5.4±1.5→6.2±2.0,p=0.02)した一方、Ex Ket群は有意に低下した(5.6±1.5→4.3±1.3,p=0.02)。CHO群も有意に低下していた(5.2±1.1→4.2±1.0,p<0.05)。

このほか、Ex Ket群でインスリン感受性の低下が認められるなど、代謝への影響の差異が観察された。

これらの検討の結果として著者らは、「炭水化物制限とケトン補給はともに高ケトン血症を誘発するが、運動能力や代謝に異なる影響を及ぼす」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「The effects of endogenously- and exogenously-induced hyperketonemia on exercise performance and adaptation」。〔Physiol Rep. 2022 May;10(10):e15309〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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