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女性フィットネス選手の減量戦略の実態と普段の摂食行動を、カテゴリー別・経験別で検討

女性のフィットネス選手の減量戦略や、普段の摂食行動、それに影響を与えている因子などを横断的に調査した研究結果が報告された。約160人の選手を競技カテゴリーと経験で層別化して比較した結果が示されている。全体の4割近くに摂食障害のリスクがあることも明らかになったという。

女性フィットネス選手の減量戦略の実態と普段の摂食行動を、カテゴリー別・経験別で検討

過去の研究に比べてサンプル数の大きさが特徴

ビキニやフィギア、フィジーク、フィットネスなどのカテゴリーで構成されている女性のフィットネス競技の選手は、他のスポーツアスリートと異なり、身体的パフォーマンスはほとんど重視されずに審美的な基準で評価が決まる。要求される除脂肪体重と体脂肪量のバランスはカテゴリーごとにやや異なり、例えばフィギュア部門では、ビキニ部門よりも体脂肪量が低く除脂肪体重がより高い必要がある。

要求される審美性を達成するために、女性フィットネス選手の多くが競技会前に減量を行っているが、その実態は明らかでない。これまでに女性フィットネス選手の減量戦略を調査した報告が1件存在するが、サンプルサイズが限られていた。それに対して今回紹介する研究は、サンプル数の大きさが特徴だと論文では述べられている。

解析対象者の特徴

この研究は英国で実施された。英国内でソーシャルメディアやボディービル団体を通じた口コミなどにより、年齢が18~65歳、過去1年以内に競技会参加歴があることを条件に募集。摂食障害の既往がある場合は除外した。191人が応募した。

減量戦略と普段の摂食行動を、精度検証済みの質問票(rapid weight loss questionnaire;RWLQ)と摂食態度調査票(eating attitudes test;EAT-26)で評価。双方の質問にオンラインで回答を終了したのが178人で、そのうち適格基準を満たすのは158人(18~45歳、平均29±7歳)だった。

158人を、競技カテゴリーと経験に基づき、以下の4群に分類した。競技カテゴリーがビキニまたはフィットネスで経験が1年以下の「フィットネス初心者」62人(39.2%)、競技カテゴリーがビキニまたはフィットネスで経験が2年以上の「フィットネス上級者」53人(33.6%)、競技カテゴリーがフィギアまたはフィジークで経験が1年以下の「フィギア初心者」19人(12.0%)、競技カテゴリーがフィギアまたはフィジークで経験が2年以上の「フィギア上級者」24人(15.2%)。

カテゴリーと経験で減量戦略に若干の差

解析対象者は是シーズンに平均2±1(範囲1~8)回、競技会に参加して、参加前には99%が減量を行っていた。

減量と回復の程度

競技会参加前の減量幅は、カテゴリー間の有意差がなかった。ただし、フィットネスでは初心者(10.0±4.3kg)より上級者(8.8±4.7kg)のほうが減量幅が少ないのに対して、フィギュアでは初心者(8.4±2.4kg)より上級者(10.1±3.6kg)のほうが減量幅が大きいという逆の関係がみられた。

競技会参加後7日間の体重回復は、絶対量でフィットネスが2.4±1.7kgであるのに対してフィギアは2.7±1.5kgで有意に大きく(p=0.03)、相対体重回復率も有意差があった(p<0.01)。

減量の手段

減量の手段は競技カテゴリーや経験による有意な差異がなかった。

全体で94.0%が「常に」または「時々」、漸進的なダイエットに取り組み、84.0%が運動量を増やし、64.0%が食事量を減らしていた。

炭水化物制限は70.0%の選手が「常に」または「時々」実施すると回答した。また、水分摂取制限は、フィットネスとフィギュアの初心者群の70.0%以上で報告されたが、フィギュアの上級者では58.4%だった。塩分制限は44.0%が習慣的に行い、フィギュア初心者は60.0%が競技前に行っていた。

このほか、サウナ(4.3%)、スウェットスーツ(3.1%)の利用などが少数挙げられた。

女性フィットネス選手の食行動はコーチが左右し、栄養士の影響は少ない

摂食行動や減量戦略に最も影響を及ぼす存在として、コーチ、別のカテゴリーの選手、およびパートナーが挙げられた。

コーチは最大の影響力を持ち、すべてのアスリートの88.6%が「たいへん/いくらか影響力がある」と報告した。一方、栄養士は52.2%が「ほとんど影響力がない」「わずかに影響力がある」と回答された。

4割近くに摂食障害のリスク

全体の約37%が摂食態度調査票(EAT-26)のスコアが20以上であり、摂食障害のリスクがあると判定された。

EAT-26スコアは、初心者(19.2±12.1)と上級者(17.1±13.9)で有意差はなく、また、フィットネス選手(18.8±13.9)とフィギュア選手(16.5±10.2)にスコアの有意差はなかった。ただし、過食症と食物へのこだわりのスコアは、経験年数では有意差がないものの、フィギュア選手(4.7±3.7)のほうがフィットネス選手(3.8±3.7)よりも有意に高かった(p=0.01)。

栄養士などの専門家の活用を推奨

このほかに、下剤や利尿薬の利用などの不適切な体重管理法を行っている選手の割合も低くないことなどが明らかになった。結論は以下のようにまとめられている。

「競技カテゴリーや経験に関係なく、女性フィットネス選手はさまざまな減量手段を用いていた。37%が摂食障害のリスクを有し、42%がシーズンを通して2つ以上の非健康的な体重管理法を用いていた。女性フィットネス選手とそのコーチに対して、専門家(栄養士や心理学者など)の存在を活用することを推奨する。それにより、減量の実践に関連するリスクが軽減される可能性がある」。

文献情報

原題のタイトルは、「Weight loss practices and eating behaviours among female physique athletes: Acquiring the optimal body composition for competition」。〔PLoS One. 2022 Jan 14;17(1):e0262514〕
原文はこちら(PLOS)

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