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視覚障害者の身体活動量の実態と、その関連因子が明らかに――国内の全国横断研究

国内の視覚障害者の身体活動量とその関連因子に関する横断研究が行われ、その結果が論文発表された。視覚障害者の身体活動量は健常者より少ないことや、自己効力感を高めることで身体活動量を増やすことができる可能性などが示された。日本大学スポーツ科学部の辰田和佳子氏らの研究によるもの。

視覚障害者の身体活動量の実態と、その関連因子が明らかに――国内の全国横断研究

国内の視覚障害者の身体活動量の実態はほとんど不明だった

身体活動が身体的・精神的健康に重要であることは論をまたない。現在、世界保健機関(WHO)や多くの国の公的機関が、一般市民の身体活動量を増やすことを主眼としてガイドラインを策定している。しかし、視覚障害者の場合、転倒や衝突、転落などの恐れのために身体活動を控えることが少ないことが報告されている。身体活動量の低下は心身の健康の阻害要因となり、実際に視覚障害者は晴眼者よりも死亡リスクが高いことを指摘した報告もある。

ただし、それらの報告はいずれも海外で実施された研究の結果であり、日本国内に約164万人存在する視覚障害者の身体活動については詳しいデータがほとんどない。そこで辰田氏らは、国内の視覚障害者の身体活動量の実態と、それに関連する因子を明らかにするために、以下の調査を行った。

全国から200人弱の視覚障害者が調査に協力

この調査は2019年9~12月に、日本視覚障害者団体連合(日視連)の協力を得て行われた。日視連に所属している都道府県や都市単位の組織、計61団体に、各4人(男性と女性の高齢者と非高齢者を1人ずつ)の調査協力者を募集してもらった。同意の得られた184人の視覚障害者(ロービジョンおよび全盲)に、3軸加速度センサーを内蔵した活動量計を貸与し、休日を含む7日間の身体活動量を把握した。

活動量計は、睡眠や入浴、着替え、水泳などを除いて連続で装着してもらい、1日の装着時間が10時間に至らない場合は、解析対象から除外し、そのことを研究参加者へ事前に伝えた。

活動量計による身体活動量の把握とは別に、電話インタビューによって、日常の運動習慣や歩行速度、厚生労働省の「アクティブガイド」を知っているか否かなどを質問した。

解析対象者の主な特徴

184人の参加者のうち、活動量計の装着時間が基準値未満だった人などを除外した169人のデータが解析された。

性別は男性が65.1%を占め、年齢は65歳未満が67.5%、自己申告に基づく視機能は全盲が69.2%であり、その他はロービジョンだった。また、先天性の視覚障害者が46.2%、有職者が76.3%、独居者が24.3%を占めていた。

BMIは、65歳未満の男性が24.0±3.9、同女性が22.8±3.7、65歳以上の男性が23.5±3.1、同女性が20.8±2.7だった。なお、視覚障害以外の障害を有する人は含まれていない。

身体活動量が晴眼者よりも少ない可能性

身体活動量については、中~高強度身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)、および、中強度身体活動(MPA)と高強度身体活動(VPA)の時間を評価するとともに、それらがWHOや厚労省の推奨値を満たしている割合を評価した。

年齢・性別にみた身体活動量

年齢・性別にみた身体活動量は以下のとおり。

65歳未満の男性のMVPA時間は中央値46分/日(四分位範囲28~67)、女性は36分/日(26~54)。65歳以上の男性のMVPAは26分/日(14~43)、女性は34分/日(14~63)。65歳未満と以上のいずれの年齢層も、性別による有意な群間差はなかった。

著者らは、本調査で明らかになった国内の視覚障害者のMVPA時間について、「海外からの報告に比べて短いものではない」と述べている。ただし、日本人晴眼者のMVPA時間は他の報告から、65歳未満男性50±30分/日、女性43±25分/日、65歳以上男性31±20分/日、女性42±29分/日と推算され、「その推算値より少ないと言える」と述べている。

ガイドライン推奨値を満たしている割合

WHOガイドラインが推奨する150~300分/週のMPAまたは75~150分/週のVPAを満たしている割合は全体で78%であり、属性別では65歳未満男性が84%、女性83%、65歳以上の男性64%、女性68%だった。

一方、厚労省「アクティブガイド」が推奨している、65歳未満は60分/日のMVPAを満たしている割合は、男性31%、女性22%だった。「アクティブガイド」には65歳以上に対するMVPA時間の推奨がないため、既報研究を基に30分/日を基準値として設定すると、男性44%、女性63%がこれを満たしていた。

身体活動量を増やすには自己効力感を高めることが必要か

続いて、MVPA時間が上位50%に該当することを従属変数とし、電話インタビューから把握した、日常の運動習慣や歩行速度、厚生労働省の「アクティブガイド」を知っているか否かなどを独立変数とするロジスティック回帰分析を施行。結果に影響を及ぼし得る因子(年齢層、性別、BMI、職業の有無、独居か否か、居住地域、障害の程度、障害を生じてからの期間)を調整後、MVPA時間上位50%に該当することに独立して関連する因子として、以下の因子が抽出された。

自己効力感(「推奨されている身体活動を自信をもって実行できると思うか」という質問に対する「はい」との回答で判定)がOR3.76(95%CI;1.87~7.52)、歩行速度(「同性・同世代の人よりも歩くのが早いか」で判定)OR3.62(1.79~7.32)、習慣的に運動をしていることがOR3.95(1.88~8.31)、および、身体活動の推奨事項を満たしていることがOR4.05(1.94~8.44)。

一方、「アクティブガイド」の存在やその身体活動量推奨量を知っているか否かや、ともに運動をする友人などがいるか否かは、MVPA時間が上位50%に該当することと有意な関連がなかった。

なお、調整因子に、障害の程度や障害を生じてからの期間を含めない解析の結果も、上記と大きな差はみられなかった。このことから著者らは、「視覚障害者のMVPA時間には、それらの因子は関連しないだろう」と述べている。

本研究から、国内の視覚障害者の身体活動習慣の実態が明らかになった。また、視覚障害者が十分な身体活動量を保つためには、自己効力感がポイントであることも示された。論文の結論は、「日本の視覚障害者のMVPA時間を増やすには、現実的な目標を設定し、推奨事項を達成するための段階的なプロセスを計画することが重要であり、自己効力感を改善するプログラムを開発する必要がある」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Assessment of Physical Activity and Related Factors among Adults with Visual Impairments in Japan」。〔Int J Environ Res Public Health. 2022 Feb 16;19(4):2244〕
原文はこちら(MDPI)

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