スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

スポーツ栄養におけるアントシアニンが豊富なサプリメントのエビデンス

色の濃い果物やベリーに豊富に含まれているポリフェノールであるアントシアニンの機能性を、スポーツパフォーマンスの視点からレビューした、英国の研究者による論文が発表された。アントシアニンが豊富なニュージーランド産のブラックカラント(カシス、クロスグリ)の抽出物を用いた大半の研究で、スポーツパフォーマンスへの有意な効果が報告されているという。要旨を紹介する。

スポーツ栄養におけるアントシアニンが豊富なサプリメントのエビデンス

プロローグ:濃い色のベリーのアントシアニンの機能性を探る

果物や野菜はポリフェノールの供給源であり、とくに濃い色のベリー類はアントシアニンを豊富に含んでいる。アントシアニンは、ポリフェノール分類上の主要クラスであるフラボノイドの主要なサブクラスであり、その機能性がアスリートや身体活動量の多い人から注目されてきた。具体的には抗炎症作用と抗酸化作用によって健康上のメリットを発揮し、高強度運動や長時間運動で保護的に働くことが期待されている。

本論文の著者らは、アントシアニンが豊富なブラックカラントの摂取がスポーツパフォーマンスに及ぼす影響を調べた研究を総括し、そのうえで将来の研究のため未解決の課題を整理している。なお、開示すべき利益相反(conflict of interest;COI)に関する情報はないことが宣言されている。

スポーツと運動におけるアントシアニン

2005年に日本の研究者らが、アントシアニンに富むブラックカラント濃縮物の摂取2~3時間後に、前腕で測定した血流量が22〜26%増加することを報告した。この研究では一晩の絶食および前日はアントシアニンが豊富な食品の摂取を禁止するという条件で実施されていた。これと同様の研究が他国からも報告され、その研究ではニュージーランド産ブラックカラント抽出物の摂取により、有意な血流量増加を報告している。後者の研究もやはり、アントシアニンを含む食品の摂取を24時間禁止したうえで実施された。

アスリート対象の初期の研究の一つは、男性ボート競技のエリートアスリートに対してチョークベリージュース(1日あたり34.5mgのアントシアニン)を4週間連日摂取するという研究が行われ、抗酸化能(グルタチオンペルオキシダーゼ活性)が34%上昇し、活性酸素種(SOD)レベルを9%低下させたことが報告されている。その後、ランニング誘発性酸化ストレスや炎症、ハーフマラソン後の筋肉損傷などに対するブラックカラントの有用性が報告されてきている。

アントシアニンとスポーツパフォーマンス

パフォーマンスへの影響についてのエビデンスとしては、2015年に無作為化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験でその有用性を示した研究が嚆矢と言える。その研究では、16.1kmの自転車エルゴメーターのタイムトライアルで、男性サイクリストの記録が2.4%短縮された。検討に用いられたのはニュージーランド産ブラックカラントからの抽出物をカプセル化したもので、連続7日間摂取し(アントシアニンとして105mg/日)、トライアルの2時間前に最後の摂取を行っていた。この間、とくに食事制限は行われていない。

ランニングパフォーマンスに対する影響も検討されている。高強度断続的トレッドミルランニングでの無作為化プラセボ対照二重盲検クロスオーバーデザインによる検討では、総距離で10.6%(プラセボ3,871±622m vs ニュージーランド産ブラックカラント抽出物4,282±833m)のパフォーマンス向上が報告されている。この研究でもやはり研究参加者へ食事制限を求めていない。このほか、ニュージーランド産ブラックカラント抽出物の有効性は、疲労回復に対するエルゴジェニック効果などが複数の研究で示されている。

ただし、ニュージーランド産ブラックカラント抽出物の摂取によるパフォーマンス向上効果が、常に観察されたわけではない。男性サイクリストの16.1kmのタイムトライアル試験などで有意差が認められなかったという報告も存在する。観察された結果の不一致は、アントシアニンが豊富なサプリメントの有用性を確立していくため、今後解決すべき課題を示すものと言える。

アントシアニンが豊富なサプリの研究の方向性

スポーツ栄養の分野でのアントシアニンが豊富なサプリメントの有用性の研究は、緒についたばかりである。これまでの研究の多くは、パフォーマンス評価のスタンダードな手法である、無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバーデザインで検討されてきているが、適切な介入期間が不明のままである。アントシアニンやアントシアニンの代謝産物の生物学的利用能は明らかでないが、一定程度の負荷期間(つまり連日のアントシアニン摂取)が必要であることを示唆する知見も得られている。今後は、アントシアニンやアントシアニンの代謝産物の生物学的利用能を明らかにし、それらとスポーツパフォーマンスとの潜在的な因果関係を明確にする必要があるだろう。

まとめると、スポーツ栄養の研究で用いられているアントシアニンは、アントシアニンが豊富なニュージーランド産ブラックカラント抽出物を使用した研究が多くを占め、パフォーマンスへの有意な効果が示されてきている。ただし、最適な摂取戦略、すなわち摂取期間、タイミング、および用量は不明であり、アントシアニンの詳細な作用メカニズムの解明とともに、その確立が求められている。

文献情報

原題のタイトルは、「Anthocyanin-Rich Supplementation: Emerging Evidence of Strong Potential for Sport and Exercise Nutrition」。〔Front Nutr. 2022 Mar 31;9:864323〕
原文はこちら(Frontiers Media)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ