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男性サッカー選手のためのエネルギー要件と栄養戦略 文献レビューからの提案

男性サッカー選手の栄養戦略に関するレビュー論文が報告された。英国の研究者らによるもので、消費/摂取エネルギー量の推定方法や、試合の前日、試合日(試合前、試合中、試合後)、および試合の翌日の栄養戦略などについてまとめられている。一部を抜粋して紹介する。

男性サッカー選手のためのエネルギー要件と栄養戦略 文献レビューからの提案

イントロダクション:サッカーの特徴

サッカーは、低強度運動と高強度運動の繰り返しを伴う要求の厳しい断続的なスポーツ。プロレベルでは1試合あたり約11~13km走行し、中でもミッドフィールダーが最も長い距離を走る。走行距離全体のうち、1,150mは20km/時を超える速度であり、このスプリントが約60回繰り返される。サッカー選手は、キックオフ直後の15分間と比較して最後の15分間の走行距離は大幅に減少することが明らかになっている。また、試合中には好気性代謝と嫌気性代謝の双方が重要となる。

サッカーと倦怠感

サッカーの試合中の倦怠感は、結果に大きな影響を及ぼす。試合の最後の10分間に、相手チームにゴールを決められることは、そのチームの選手の倦怠感の蓄積を表すという研究も報告されている。

サッカーの倦怠感に関与する潜在的なメカニズムは多々存在するが、栄養関連で影響を与える主な要因は2つで、筋グリコーゲンの枯渇と低血糖に起因している可能性がある。炭水化物の可用性が低いことによる血糖値の低下は、脳は主として血糖をエネルギー源とすることから、倦怠感につながると考えられている。また、ドリブルのスピードが炭水化物摂取後に比較してプラセボ摂取後は有意に遅いことが観察されている。ただし、これらの研究では、シミュレーションの最中に低血糖が観察されたことはない。では、正常血糖の範囲内で高値の血糖レベルは、サッカーのパフォーマンスを向上させるのだろうか。この点については、今後の研究を要する段階だ。

サッカーと栄養摂取

試合前日の栄養

試合前日の主な栄養上の焦点は、筋肉と肝臓のグリコーゲン貯蔵を増加させることにある。持久系アスリートを対象に行われた研究からは、10g/kgの高炭水化物食によりその後24時間の筋グリコーゲン貯蔵が最適化されると報告されている。実際には、試合前日に6g/kgの炭水化物の摂取を達成するにも、あらゆる機会に炭水化物を摂取する必要がある。

ところで、グリセミックインデックス(GI)はどの程度考慮すべきだろうか? 高GI食品は消化吸収が速いため、より多くの糖質を取り入れるのに向いているかもしれない。ただし、高GI食、またはその反対の低GI食が、24時間にわたるグリコーゲン負荷に有利であるかどうかに関するエビデンスはない。

試合日の試合前の栄養

短期間で筋肉グリコーゲンの大幅な喪失を補充することはできないため、試合前日の食事は試合当日の試合前の食事よりも重要である可能性がある。

一方、肝臓のグリコーゲンはより迅速に補充される可能性があるが、一晩の絶食で有意に減少し36時間後には完全な枯渇が予想される。つまり、肝臓グリコーゲンの約33%が12時間という一晩の絶食中に失われる可能性があり、キックオフまで炭水化物が摂取されない場合は、最大50%が失われた状態となり得る。

試合前の栄養摂取に関連して、近年あらたに考慮すべき要素が増えている。エリートサッカーの試合ではキックオフ時間が大幅に異なる点だ。これは、主としてテレビ中継の需要による。開始時間は早ければ12:00または12:30で、遅い場合には20:00となる。キックオフ時間が明らかに早い場合は試合前に1食であるものの、15:00スタートの場合は2食摂取する戦略を考慮する必要があり、20:00キックオフでは3食戦略が望ましい。開始時間が早い場合、試合前日の十分な炭水化物摂取がより重要性を増す。

試合前の栄養に関する一般的なコンセンサスは、キックオフの3~4時間前に1~3g/kgまたは1~4g/kgの比較的高い炭水化物摂取である。その際、高GI食では3~4時間後に反応性低血糖を来し得るため、低GI食が有利と考えられている。

試合中の栄養

試合中の栄養上の主な考慮事項は、炭水化物と水分の十分な摂取である。ただし、サッカーというスポーツの特性から、水分を摂取できるタイミングを予定しておくことはできない。確実な機会は、試合前とハーフタイムの2回だけだ。

また、サッカーの試合中の運動強度では、胃内容排出が遅延し、適切な水分補給を妨げる可能性がある。よってプレーヤーは、プレーの中断の際には可及的に水分を摂取することが賢明と言える。

試合日の試合後の栄養

回復の主な焦点は、水分補給と筋肉タンパク質の回復に加えて、試合による筋肉と肝臓のグリコーゲン消費を戻すことだ。通常、これは試合後2時間以内に達成する必要がある。次の試合までの間隔が狭い場合、特に重要。

運動後の炭水化物摂取は早ければ早いほどよい。試合後に十分な炭水化物を摂取できないプレーヤーは、運動停止から2時間後に炭水化物を摂取したとしても、4時間までのグリコーゲン再合成が約50%低下するリスクがある。

試合の翌日の栄養

試合の翌日の栄養戦略は、しばしばないがしろにされやすい。しかし、翌日も選手はまだエネルギー不足の状態にあり、適切な炭水化物摂取などの栄養戦略が重要。また、20g/日のクレアチン一水和物摂取が、高炭水化物食による筋グリコーゲンの増加をサポートする可能性が報告されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Energy Requirements and Nutritional Strategies for Male Soccer Players: A Review and Suggestions for Practice」。〔Nutrients. 2022 Feb 4;14(3):657.〕
原文はこちら(MDPI)

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