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プロバイオティクスはアスリートの有酸素パフォーマンスを改善するか? メタ解析が示す結果は…

プロバイオティクスの有酸素パフォーマンスへの影響を検討した研究を対象とする、システマティックレビューとメタ解析の結果が報告された。結論は、わずかではあるが有意であるという。ただし、サブ解析からは、効果を期待できる期間、摂取方法、対象などが限られる可能性も示されている。

プロバイオティクスはアスリートの有酸素パフォーマンスを改善するか? メタ解析が示す結果は…

プロバイオティクスの可能性をシステマティックレビューで探る

ビフィズス菌、ラクトバチルス、エンテロコッカスなどのプロバイオティクスとして用いられる微生物は、免疫機能に影響を与え上気道感染症(upper-respiratory-tract infections;URTIs)を抑制したり、胃腸障害(gastrointestinal disorders;GI)や酸化ストレスを軽減する作用が知られている。URTIs、GI、酸化ストレスはいずれも激しい継続的なトレーニングを行っているアスリートにおいてリスクが高く、プロバイオティクス摂取のメリットが得られやすいと考えられ、その効果を示す報告もある。

一方、それらアスリートの健康状態への影響とは別に、プロバイオティクスは身体パフォーマンス、とくに有酸素パフォーマンスにプラスとなる可能性も報告されている。その機序としては、長時間の運動による消化管の低灌流に基づく透過性亢進を介した内毒素血症の抑制、吸収や代謝の改善、エネルギー源となり得る短鎖脂肪酸の生成亢進などが想定されている。

今回紹介する論文は、プロバイオティクス摂取の有酸素パフォーマンスへの影響を検討した研究を対象に、システマティックレビューとメタ解析を実施した結果の報告だ。

システマティックレビューの手法

文献検索には、PubMed/Medline、Web of Science、Scopusを用い、それぞれのデータベースのスタート時から2021年11月1日までに公開された文献を対象とした。検索キーワードには、プロバイオティクス、エクササイズ、スポーツ、アスリート、好気性などを設定した。

適格基準は、ディビジョンIに所属または週8時間以上もしくは週5回以上トレーニングを行っているアスリートを対象に、プロバイオティクス摂取による5分以上の有酸素パフォーマンスへの影響を検討した臨床試験であって、サプリメント摂取方法や研究資金源などに関する明確な情報が記されている英語論文。対象者に疾患罹患者が含まれている研究は除外した。

2名の研究者が独立して検索を行い、またハンドサーチによる検索も行った。それらの工程は、PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses.システマティックレビューとメタ解析に関する優先報告項目)に則して実施された。

抽出された研究の特徴

検索でヒットした692件から、重複削除、タイトルとアブストラクトに基づくスクリーニングを経て、32件を全文精査した。最終的に15件が抽出され(研究対象者数の合計388人)、そのうち3件はメタ解析に必要なデータが不足していたため、メタ解析については13件(同232人)で実施された。

15件中9件は単一のプロバイオティクス菌株を用いた介入で、6件は複数の菌株を用いていた。11件はカプセルで摂取され、2件は粉末、1件は錠剤、別の1件はプロバイオティクス飲料として摂取。摂取期間は3~14週間の範囲。摂取量は1.0×109~4.5×1010(colony forming unit;CFU.コロニー形成単位)。摂取タイミングは、食前、食後、食間、運動前、運動後、睡眠前、任意などさまざまであり、摂取タイミングが記されていない報告もあった。

対象者は8件が男性のみ、5件は男性と女性、他の2件は性別の定義が記されていなかった。

わずかだが有意なプラス効果が認められる

有酸素パフォーマンスの指標は、VO2maxで評価した研究と倦怠感で評価した研究が各7件で、他の1件は12分間のランニングおよび20mシャトルランで評価していた。

メタ解析の結果、プロバイオティクス摂取により有酸素パフォーマンスへのわずかな有用性が認められた。具体的には、標準化平均差(standardized mean difference;SMD)が0.29(95%IC;0.08~0.50)と有意だった(p<0.05)。

男性、単一株、高用量、短期間で有意な影響

次に、プロバイオティクスの摂取方法や研究対象などで層別化したサブグループ解析を実施。その結果、カテゴリーごとに以下のような差異が認められた。

まず、研究対象者の性別については、男性のみの研究ではSMD0.30(95%IC;0.04~0.56)と有意であるのに対して、対象に女性と男性が含まれていた研究ではSMD0.30(-0.19~0.79)と非有意だった。

菌株については、単一株を用いた研究はSMD0.33(0.06~0.60)と有意であるのに対して、複数の菌株を用いた研究ではSMD0.26(-0.08~0.60)と非有意だった。

摂取用量については、高用量(30×109CFU以上)用いた研究はSMD0.47(0.04~0.89)と有意であるのに対して、低用量(上記未満)用いた研究ではSMD0.20(-0.05~0.45)と非有意だった。

摂取期間については、4週間未満とした研究はSMD0.44(0.05~0.84)と有意であるのに対して、4週間以上とした研究ではSMD0.19(-0.08~0.47)と非有意だった。

最後に、有酸素パフォーマンスの指標については、倦怠感で評価した研究はSMD0.45(0.03~0.86)と有意であるのに対して、VO2maxで評価した研究ではSMD0.21(-0.11~0.52)と非有意だった。

摂取量や摂取期間と有酸素パフォーマンスは相関なし

上記のサブ解析からは、プロバイオティクスの摂取量や摂取期間が有酸素パフォーマンスへの影響に差異をもたらすと考えられた。ただし、回帰モデルでの検討からは、プロバイオティクスの摂取量や摂取期間と有酸素パフォーマンスとの有意な相関が認められなかった。

これらの結果から著者らは、「プロバイオティクス摂取による有酸素パフォーマンスへの効果は、摂取量や摂取期間などにより異なる可能性があり、また男性のほうが高い効果を期待できる可能性がある。ただし、回帰モデルでは摂取量や摂取期間と効果との関連が認められなかったことから、結果の解釈に注意を要する。プロバイオティクスのスポーツパフォーマンスへの影響を検討した研究は増えてはいるものの、より多くの研究が必要とされる」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Probiotic Supplementation on Exercise with Predominance of Aerobic Metabolism in Trained Population: A Systematic Review, Meta-Analysis and Meta-Regression」。〔Nutrients. 2022 Jan 30;14(3):622〕
原文はこちら(MDPI)

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