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タンパク質+筋トレは除脂肪体重や上・下半身筋力にプラスに作用するが、握力との関連はない?

健康な成人のみを対象に実施された74件の研究のメタ解析から、タンパク質摂取量が除脂肪体重や上半身、下半身の筋力と有意に関連しているとする論文が発表された。ただし、その有意な関連は筋力トレーニングと並行して摂取タンパク質量を増やした場合に認められた。また、サルコペニアやフレイルの診断基準に含まれている握力とは、この対象での検討では有意な関連がなかった。

タンパク質+筋トレは除脂肪体重や上・下半身筋力にプラスの影響も握力との関連はなし?

健康な人のみを対象とする研究のみでのメタ解析

タンパク質摂取量と除脂肪体重や筋力との関連については、これまでにさまざまな対象で検討が実施されてきており、それらの研究報告を対象としたメタ解析も既に行われている。ただし、メタ解析の対象に含める研究によって、結果が異なることが当然予想される。例えば、肥満者や疾患既往者を含むのか否か、あるいは、筋力トレーニングを行っているか否かを区別するのか、タンパク質を食事以外に摂取している人の扱いなどは、いずれも結果に影響を及ぼし得る。

今回紹介する研究は、疾患を有する人や肥満者を対象に含む研究を除外したメタ解析の結果である。著者らによると、以前に報告されたメタ解析の結果は、これらの点がクリアにされておらず、結果の解釈が制限されていたという。

システマティックレビューの手法

システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項(PRISMA)に準拠し、システマティックレビューの国際前向き登録簿(PROSPERO)に登録したうえで研究が実施された。

文献検索には、Medline、Embase、CINAHL、Web of Sciencesを利用。適格基準は、18歳以上の健康な成人を対象とした無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)の英語論文とした。筋力トレーニングの有無や、食事以外にタンパク質摂取の有無、介入期間については制限しなかった。

除外基準は、プロトコルに減量を含むもの、肥満者や自己申告による糖尿病や癌、フレイル、感染症など疾患有病者を含むもの、比較対照群のない研究、および、体組成や筋力に影響を及ぼし得るサプリメント(クレアチン、ホスファチジン酸、オメガ-3脂肪酸、アナボリックステロイド、β-ヒドロキシ-β-メチル酪〈HMB〉など)を利用した介入を含むRCT。

検索でヒットした8,957件から、重複削除と論文タイトル・アブストラクトに基づくスクリーニングにより164報に絞り込み、全文精査によって最終的に74件のRCTの報告を抽出した。

タンパク質摂取量を増やすのみの介入は影響が乏しい

74件のRCTにおいて、タンパク質摂取の介入群では総タンパク質摂取量が1~4.4g/kg/日の範囲であり、研究の33%は1.2~1.59g/kg/日、54%は1.6g/kg日以上だった。一方の対照群は0.8~2.3g/kg/日だった。ただし対照群でも研究の約80%はベースライン時点で、摂取タンパク質量が1.2g/kg/日に達していた。

平均年齢は19~85歳の範囲であり、介入期間6~108週間(76%は8~12週間)だった。

メタ解析は、除脂肪体重、ベンチプレス、下半身の筋力、および握力について実施された。それぞれ、該当する研究全体での解析に加え、筋力トレーニングを伴う介入か否か、65歳未満か否か、および摂取タンパク質量で層別化した解析が行われた。

主な結果は以下のとおり。

除脂肪体重の変化に対するタンパク質摂取介入の効果

除脂肪体重に対しては、該当する研究全体では、標準化平均差(standardized mean difference;SMD)0.22で、p<0.01、不均一性(I2)=7%であり、有意なプラスの影響が認められた。

ただし、筋力トレーニングを伴わない介入では、タンパク質摂取による除脂肪体重への有意な影響は認められなかった(p=0.38)。筋力トレーニングを伴う介入では、65歳未満では有意(SMD0.25、p<0.01、I2=8.1%)であり、一方、65歳以上ではわずかに有意水準に至らなかった(SMD0.13、p=0.06、I2=6.2%)。

また、筋力トレーニングを伴う介入であっても、介入群の摂取タンパク質量が1.2g/kg/日未満の場合、除脂肪体重への有意な影響は認められなかった(p=0.35)。摂取タンパク質量が1.2~1.59g/kg/日の筋力トレーニングを伴う介入では、65歳未満はわずかに非有意(SMD0.153、p=0.07、I2=2.8%)、65歳以上は有意(SMD0.20、p=0.03、I2=0%)という結果だった。摂取タンパク質量が1.6g/kg/日以上の筋力トレーニングを伴う介入では、65歳未満でも除脂肪体重への有意な影響が認められた(SMD0.30、p<0.01、I2=0%)。65歳以上に対して摂取タンパク質量1.6g/kg/日以上の介入を行い除脂肪体重への影響を検討した研究はなかった。

除脂肪体重に対するタンパク質摂取の影響は、全体的に不均一性が低かった。

ベンチプレスの変化に対するタンパク質摂取介入の効果

ベンチプレスのパフォーマンスに対しては、該当する研究全体では、標準化平均差SMD0.20、p<0.01であり、有意なプラスの影響が認められた。ただし、不均一性がやや高かった(I2=42.8%)。

筋力トレーニングを伴わない介入では、タンパク質摂取によるベンチプレスパフォーマンスへの有意な影響は認められなかった。筋力トレーニングを伴う介入では、65歳未満では有意(SMD0.18、p=0.01、I2=55%)であり、一方、65歳以上では非有意だった。

ベンチプレスパフォーマンスに対するタンパク質摂取の影響は、除脂肪体重に対する影響と比べて、全体的に不均一性がやや高かった。

下半身の筋力の変化に対するタンパク質摂取介入の効果

下半身の筋力に対しては、該当する研究全体では、標準化平均差SMD0.20、p<0.01であり、有意なプラスの影響が認められた。ただし、不均一性が高かった(I2=52.8%)。

筋力トレーニングを伴わない介入では、タンパク質摂取による下半身の筋力への有意な影響は認められなかった(p=0.44)。筋力トレーニングを伴う介入では、年齢層を問わず、有意なプラスの影響が認められた。具体的には、65歳未満ではSMD0.19、p=0.02、I2=52.8%、65歳以上ではSMD0.25、p=0.04、I2=60.6%だった。

筋力トレーニングを伴う介入であっても、介入群の摂取タンパク質量が1.6g/kg/日未満の場合、下半身の筋力への有意な影響は認められなかった(1.2g/kg/日未満ではp=0.95、1.2~1.59g/kg/日ではp=0.37)。摂取タンパク質量が1.6g/kg/日以上の筋力トレーニングを伴う介入では、年齢層を問わず、有意なプラスの影響が認められた。具体的には、65歳未満ではSMD0.38、p<0.01、I2=62%、65歳以上ではSMD0.55、p=0.03、I2=0%だった。

下半身の筋力に対するタンパク質摂取の影響は、ベンチプレスパフォーマンスに対する影響よりもさらに不均一性が高かった。

握力の変化に対するタンパク質摂取介入の効果

握力に対しては、該当する研究全体では、標準化平均差SMD0.150、p=0.10であり、有意な影響が認められなかった。サブグループ解析からも、有意な影響が認められる群はみつからなかった。

結論として、タンパク質摂取量を増やすだけではプラスの影響が乏しく、筋力トレーニングをあわせて行った場合に、除脂肪体重や筋力への若干のプラスの影響が示された。ただし、握力には影響がなかった。

サルコペニアやフレイルなどの診断基準に採用されている握力に対して、筋力トレーニングとタンパク質の摂取の併用が有意な影響を示さないという結果について、著者らは、本メタ解析の対象が健康な集団であって、ベースラインの摂取タンパク質の摂取量が高いことも関与しているのではないかとの考察を加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Systematic review and meta-analysis of protein intake to support muscle mass and function in healthy adults」。〔J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2022 Feb 20〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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