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脳振盪によるダメージ抑制にはオメガ3脂肪酸が有用か 7人制ラグビーカナダ代表選手を調査

7人制ラグビー・カナダ代表選手のオメガ3脂肪酸の摂取量を調査した結果が報告された。オメガ3脂肪酸は、脳振盪などによる神経のダメージを抑制する可能性が示唆されている。著者らは調査結果に基づき、サプリメントでオメガ3脂肪酸を摂取している選手でも血中レベルは十分でないと指摘している。

ラグビーによる脳振盪によるダメージ抑制にはω3脂肪酸が有用か カナダ代表選手を調査

魚をあまり食べない北米では、オメガ3脂肪酸レベルが低い

ラグビーは世界で最も人気のあるフルコンタクトチームスポーツと言え、2016年のリオデジャネイロオリンピックで7人制ラグビーが夏季正式種目に採用されて以来、北米で人気が高まっている。その人気の高まりを背景に、ラグビーに関連する怪我、とくに脳震盪が増加している。脳振盪の発生率は、15人制では7.7回/1,000人時間、7人制では8.3回/1,000人時間と報告されており、ラグビーに伴うスポーツ障害として上位にランクされている。他のスポーツとの比較では、アメリカンフットボールよりは発生頻度が低いものの、アイスホッケーよりは高い。

一方、エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)といったオメガ3脂肪酸(n-3FA)は、心臓血管系、認知機能、神経の発達に重要な役割を果たすことが報告されており、外傷発生以前からのDHA摂取が外傷性脳損傷後の軸索損傷を軽減することが示されている。しかし、北米の一般人口は魚介類摂取量が少ないためn-3FAレベルが低く、アスリートでも同様の傾向がある。

例えば、全米大学体育協会(NCAA)のデータによると、所属するアスリートのn-3FA摂取量は平均100mg/日であり、北米での一般的な推奨量の500mg/日や国際オリンピック委員会(IOC)のエリートアスリートに対する推奨量である2g/日をはるかに下回っている。しかし、カナダのエリートラグビー選手のn-3FA摂取量に関するデータはないことから、本研究の著者らはそれを調査した。

カナダの国際レベルのラグビー選手で調査

カナダの男性、女性ナショナルチーム、7チームに連絡を取り、18歳以上の代表レベルの選手を募集。脳震盪と診断されていないことなどの適格基準を満たす34人が研究に参加した。男性が19人で年齢は24.84±2.32歳、BMI27.57±1.67、女性は15人で23.45±3.10歳、BMI24.61±1.66。全員が過去1年以上にわたって、7人制ラグビーの国際大会レベルで活動していた。

n-3FAの摂取量は、EPA、DHA、およびα-リノレン酸(ALA)について、競技シーズンに入る前に、21項目の食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いて把握した。また、赤血球の脂肪酸組成を測定し、EPA、DHA、ALA、およびアラキドン酸(AA)の占める割合を評価するとともに、EPAとDHAが占める割合である「オメガ3脂肪酸インデックス(O3I)」を計測した。

なお、O3Iは冠動脈性心疾患(CHD)のリスクとの関連が検討されている指標で、4%以下はCHDハイリスク、4~8%は中リスク、8%超は低リスクとされる。カナダ人の一般人口ではO3I4.5%と報告されている。

カナダのエリートラグビー選手はオメガ3脂肪酸摂取不足

解析対象アスリートのO3Iは1.71~10.03%の範囲で、平均は4.54±1.77%だった。男性と女性で比較した場合、有意差はなかった。また、n-6/n-3比やEPA/AA比なども性別による有意差はみられなかった。

全体のほぼ3人に2人に当たる23人(男性12人、女性11人)が、オメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取していた。論文では、結果の解析を性別とサプリメントの摂取の有無別に行っている。

サプリを摂取していてもO3Iが低いアスリートが少なくない

前述のCHDリスク評価のカテゴリーに当てはめると、以下に示すように、多くのアスリートが中リスクまたは高リスクに該当した。とくに、オメガ3脂肪酸をサプリメントとして摂取していない群では、低リスクに該当する選手は、男女ともにゼロだった。

各カテゴリーの該当者の割合は以下のとおり。サプリメント摂取群では、低リスク8.7%、中リスク52.2%、高リスク39.1%。サプリメント非摂取群では、低リスク0%、中リスク54.5%、高リスク45.5%。

サプリ摂取している群のオメガ3脂肪酸摂取量は北米の推奨量を満たしている

一方、食事摂取頻度調査票(FFQ)で把握されたオメガ3脂肪酸摂取量は、以下に示すとおり、プリメント摂取群では北米での推奨値である500mg/日を満たしていた。しかし、サプリメント非摂取群のオメガ3脂肪酸摂取量は、極めて低値だった。

EPA摂取量は、赤血球EPA(r=0.434,p=0.01)およびO3I(r=0.347,p=0.045)と正相関していた。DHA摂取量と赤血球DHAの相関は有意でなく(r=0.273,p=0.12)、O3Iとの相関も有意水準未満だった(r=0.323,p=0.06)。ただし、DHA摂取量は赤血球EPAと正相関していた(r=0.391,p=0.02)。ALA摂取量は、血中EPAやDHA、またはO3Iとの相関がなかった。

各カテゴリーの該当者のオメガ3脂肪酸摂取量は以下のとおり(単位はmg/日)。

サプリメント摂取群
EPADHAALA
男性1,272±536636±2680.78±0.78
女性1,189±451595±2260.11±0.07
サプリメント非摂取群
EPADHAALA
男性0.05±0.030.11±0.070.78±0.78
女性0.07±0.070.16±0.140.11±0.07

食事介入によって血中EPAやDHAレベルが改善するか?

著者によると本研究は、エリートレベルの男性と女性のラグビー選手のn-3FA状態を調べた初の調査だという。結果の主要なポイントとして、「サプリメントなしで8%を超える低リスクカテゴリーのO3Iに該当するラグビーアスリートはいないこと、食事摂取だけではエリートアスリートのn-3FA推奨量を満たせないこと、n-3FAサプリメントを使用しているアスリートは、人口ベースの推奨事項を満たしているだけでなく上回っていること、それにもかかわらずO3Iは8%未満のままであり、O3Iスコアを上げるにはより高用量のサプリメントが必要な可能性がある」とまとめている。

また、今後の研究として、「不十分なn-3FA摂取が競技シーズン中にもみられるかどうか、および食事介入によって血中のEPAやDHAレベルが改善するかどうかを検証する必要がある」としている。n-3FAサプリメント摂取についての考え方は、「EPAとDHAの摂取量を増やすことに伴うリスクは非常に低く、潜在的なメリットはかなり大きいと思われる。食事からのn-3FA摂取を増やすことに加えて、サプリメントの使用を検討する必要があるのではないか」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「An Evaluation of Omega-3 Status and Intake in Canadian Elite Rugby 7s Players」。〔Nutrients. 2021 Oct 25;13(11):3777〕
原文はこちら(MDPI)

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