スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2023 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

歯の喪失による認知症リスク増大のメカニズムが明らかに 女性では果物・野菜の摂取が大きく影響

口腔の健康状態の悪化が認知症発症に影響する可能性が示されているが、そのメカニズムの一端が明らかになった。女性では、口腔と認知症との関係の8.45%を、野菜や果物摂取で説明可能だという。一方、男性では友人・知人との交流人数で、13.79%が説明されるとのことだ。東北大学の研究グループの研究によるもので、「Journal of Dental Research」に論文が掲載されるとともに同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。

歯の喪失による認知症リスク増大のメカニズムが明らかに 女性では果物・野菜の摂取が大きく影響

研究の背景:歯の喪失と認知症発症リスクの関連の背景にあるメカニズムを探る

認知症は要介護状態となる主要な原因の一つであり、認知症の予防と認知症の進行抑制は重要な課題。認知症発症の確立したリスク要因としては、高血圧や糖尿病など栄養に関連する要因や、精神状態の悪化や身体活動量の低下、社会的な交流の低下などが挙げられている。

また、口腔は会話や食事を行う際に使用する器官であり、栄養摂取や社会的な交流は口腔とも深く関係していると考えられる。そのため、栄養摂取や社会的な交流といった経路を介して口腔が認知症発症に影響する可能性が想定される。しかし、口腔状態と認知症発症との関係について、社会的な要因や栄養に関する要因がどの程度関与するのかを調べた研究は、これまでなかった。

そこで本研究では、歯の喪失は認知症発症リスクを増加させ、そのメカニズムは栄養摂取や社会的な要因で説明されるという仮説について検討を行った。

対象と方法:歯の本数と認知症発症の関係の媒介因子と影響の強さを検討

この研究では、日本老年学的評価研究機構のデータを縦断的に解析した。2010年のベースライン調査に加え、2013年、2016年の調査にも回答した人を対象とした。2013年の媒介変数の効果をみるため、ベースラインと2013年時点で要介護状態の人、2013年以前に認知症を発症していた人、死亡した人、および追跡不能者を除外。また、ベースライン時点で、認知機能関連項目スコアの認知機能低下を示す三つの質問すべてに「はい」と回答した人も除外した。

歯の本数(20本以上/未満)と、2013年から2016年までの認知症発症との因果関係を、何が媒介するかを分析。なお、認知症は、介護保険データの「認知症高齢者の日常生活自立度」のランクⅡ以上と定義し、媒介変数として、体重減少、十分な野菜や果物摂取(1日1回以上)、閉じこもり、交流人数(10人以上)の有無を設定した。

解析に際しては、人口統計学的要因(年齢、婚姻歴)、社会的経済指標(所得、教育歴)、併存疾患(高血圧・糖尿病の有無)、生活習慣(飲酒・喫煙状況、日々の歩行時間)の影響を統計学的に調整。認知症発症に及ぼすリスクを算出し、また、媒介分析により、それぞれの変数がどの程度その経路を説明するかを調べた。

結果:男性は交流人数、女性は野菜や果物摂取が、影響の強い媒介因子

解析対象者は3万5,744人で、女性が54.0%を占め、平均年齢は男性が73.1±5.5歳、女性73.2±5.5歳だった。ベースライン時点で、1万3,580人(38.0%)が20本以上の歯を有していた。2013年から2016年の間に認知症を発症したのは、1,776人(5.0%)だった。

多変量解析の結果、歯の喪失が認知症発症に有意に関連していることが確認された(HR1.14〈95%CI;1.01~1.28〉)。また、媒介変数による間接効果はHR1.03(同1.02~1.04)だった。

各変数の媒介割合は、男性では、交流人数が13.79%、体重減少が6.35%、閉じこもりが4.83%、野菜や果物摂取が4.44%であり、女性では、野菜や果物摂取が8.45%、体重減少が4.07%、交流人数が4.00%、閉じこもりが0.93%であった。つまり、男性ではとくに友人・知人との交流人数、女性ではとくに野菜や果物摂取が、歯の本数と認知症発症の因果関係を仲立ちする役割を果たしていた。

歯の本数と認知症発症の関連を説明する割合(n=35,744)

歯の本数と認知症発症の関連を説明する割合(n=35,744)

年齢、婚姻歴、義歯使用、等価所得、教育歴、高血圧、糖尿病、飲酒歴、喫煙歴、歩行時間を調整した
(出典:東北大学)

結論と研究の意義:女性の認知症リスク抑制には、栄養摂取が重要な可能性

6年間の縦断研究の結果、歯の喪失と認知症発症との間には有意な関連があることが確認された。この関連は、女性では野菜や果物の摂取などの栄養状態、男性では人との交流人数といった社会的な要因で、主に説明可能だった。

本研究の結果から、口腔の健康状態を維持することは人との交流といった社会関係を維持することにもつながり、また、栄養摂取の維持を通じて認知症発症予防につながる可能性が示唆された。

プレスリリース

歯を失うと認知症になるメカニズムを明らかに 男性では人との交流、女性では果物・野菜の摂取が大きく影響(東北大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Oral Status and Dementia Onset: Mediation of Nutritional and Social Factors」。〔J Dent Res. 2021 Nov 19;220345211049399〕
原文はこちら(International & American Associations for Dental Research)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ