「少食で運動不足」の女性に向けて、そのリスクと健康的な体づくりを動画で解説 順天堂大学
順天堂大学は、やせているのに糖尿病ハイリスク状態にある若年女性に向けて、「順天堂大学の医師が伝える健康のハナシ」と題する啓発動画を制作し、同大学のサイト内に公開した。医学研究科代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの研究グループによる研究成果をとめたもので、国際教養学部教授・医学研究科スポーツ医学・スポートロジー先任准教授/代謝内分泌内科学准教授である田村好史氏の監修。
制作の背景
日本は、BMI18.5㎏/m2未満とやせている女性の比率が先進国の中で最も高い。厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、20歳代でのその割合は約20%にも上る。現在、肥満が世界各国に共通する大きな健康課題となっているため、やせていることは一見「健康的で良いこと」と思われがちだが、実際はそうでないことを、田村氏らはこれまでに報告してきている。
例えば、BMI18.5㎏/m2未満の女性における耐糖能異常の割合は13.3%であるという。一方、同世代の標準体重の女性のその頻度はわずか1.8%に過ぎない。
「やせているのは良いこと」という意識を背景に「やせるために食べる量を減らす」「運動不足でも、やせているから大丈夫」と考える若い女性もいる。制作された動画では、同大学の研究で得られた知見をもとに、少食・運動不足による「やせ」がはらむ健康リスクと、健康的な体づくりについて、わかりやすく訴求している。
やせていても「少食で運動不足」はハイリスク。若い女性も気をつけたい糖尿病
やせていても「少食で運動不足」は健康にリスク?(順天堂大学の医師が伝える健康のハナシ)
公開された動画の詳しい内容はご覧になってのお楽しみとして、ネタバレにならない程度に少しだけ紹介する。
まず、アニメーションで、やせているのになぜ糖尿病のリスクが高まるのか、その理由が解説される。全体は3分弱のコンパクトにまとまった動画だ。
「太っていると糖尿病になりやすい」ことは誰でも知っているが、「やせていると糖尿病になりやすい」という事実は、恐らくまだ多くの人が知らないことだろう。肥満とやせ、その両者に共通していることは、糖の取り込みが十分でなくなり、その結果、血糖値が上がりやすくなるということのようだ。
肥満で糖の取り込みが十分でなくなる理由は、糖を必要とする細胞、主として筋肉でのインスリン抵抗性が原因だが、やせの場合、筋肉自体が少ないために、取り込める糖が少なくなってしまうということらしい。さらに、その状態が続いていると、筋肉に脂肪が蓄積する、いわゆる脂肪筋の状態になる。筋肉量が減って、そのうえ筋肉の質まで低下するとなると、これはサルコペニアの病態にほかならない。若くてやせている女性は、糖尿病のリスクと加齢性疾患のリスクが高いということなのかもしれない。
わずか3分弱の動画だが、考えさせられる情報がぎっしりと詰まっている。もちろん、解決策もしっかり示されている。
やせた若い女性の健康リスク解消を目指したエクササイズプログラム
公開されたのは、このようなエビデンスの発信だけではない。実際にどうすれば良いか、特にエクササイズの面から解説した動画も公開された。「チェック編~自分の体の安定性と可動性をチェック!~」と、それに続く実践編とも言うべき「ノビノビ・エクササイズ~肩回りの可動性UPを目指す!」「ニコニコ・エクササイズ~股関節・胸郭の可動性UPを目指す!」「ドキドキ・エクササイズ~体幹・肩甲帯安定性のUPを目指す!」の3本、計4本だ。
これらの動画は、自らもトップアスリートであり、女性アスリートの健康に関心を寄せてきた同大スポーツ健康科学部の室伏由佳准教授と、アスレティックトレーナーとしてアスリートの身体に向き合ってきた門屋悠香助教がタッグを組んで制作。これまでにあまり運動習慣がなかった女性をターゲットに、「女性のためのエクササイズプログラム」を提案する。
コロナ禍が続く現在、運動不足で高まる健康リスク解消のため、自宅で気軽に取り組むエクササイズとしても活用できそうだ。
【チェック編】自分の体の安定性と可動性をチェック!
【肩回りの可動性UP】しなやかな筋肉に!(ノビノビ・エクササイズ)
【股関節・胸郭可動性UP】体幹・ヒップ・脚をキレイに鍛える!(ニコニコ・エクササイズ)
【体幹・肩甲帯安定性UP】腕・体幹・ヒップ・脚をじっくり鍛える(ドキドキ・エクササイズ)
関連情報
やせていても「少食で運動不足」はハイリスク。若い女性も気をつけたい糖尿病(順天堂大学GOOD HEALTH JOUNAL)
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