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鍼施術が短時間の運動時の心拍数上昇を抑制 ただし高強度運動では限定的

2021年11月11日

短時間の運動の前に鍼施術を受けると、運動負荷に伴う心拍数の上昇が抑制されるという研究結果が報告された。ただしこの効果は、高強度運動の場合は限定的なものにとどまるという。森ノ宮医療大学大学院保健医療学研究科の中原英博氏らの研究によるもので、「BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation」に論文が掲載された。

鍼施術が短時間の運動時の心拍数上昇を抑制 ただし高強度運動では限定的

運動前の鍼施術の作用は運動中にも持続して発揮されるか?

鍼治療は自律神経系の調節を介して諸症状にアプローチする治療手段として活用されているが、これまでの研究からスポーツパフォーマンスを改善する効果も報告されている。例えば、週2回、5週間の鍼手術により無酸素性作業閾値での心拍数上昇が抑制されるという報告や、運動前15分の鍼施術により乳酸レベルの上昇が抑制されるといった報告がみられる。しかし運動前の鍼施術による運動中の心血管系への影響は不明。

中原氏らは、運動前に行った鍼施術は自律神経系に作用し、その効果は施術後の運動中にも継続すると仮定し、以下の検討を行った。

二つのプロトコルで実験

この研究では、まず、鍼施術による安静時の心拍数への影響の確認が「プロトコル1」として実施され、それに引き続き、鍼施術により誘発された徐脈効果が低強度および高強度の運動中にも持続するとの仮説を検証するための「プロトコル2」の研究が実施された。

研究全体の被験者は18~29歳の健常者29名。このうち12名は座位行動の多い人で、他の17名はレクリエーションレベルのスポーツアスリート。年齢は21.2±2.0歳で、男性が16名、BMIは22.7±3.5。なお、レクリエーションアスリートの参加競技は、バスケットボール6名、サッカー4名、柔道3名のほか、長距離、野球が各2名。

プロトコル1:施術終了から4分後まで心拍数が有意に低下

プロトコル1の対象は8名で、22.9±2.3歳、BMI21.9±4.2。安静仰臥位を10分間維持した後、鍼施術を施行後に再び安静仰臥位とし、この間、2分ごとに心拍数を計測した。鍼施術は右側の足三里(脛の辺り)に対して1Hzで10分間とした。

その結果、ベースラインの心拍数に比べて、施術開始後の最初のレンジ(0~2分)から心拍数の有意な低下が認められ、10分間の施術中はその状態が継続。そして施術終了の4分後にも有意差が維持されていた。施術終了の6分後からはベースライン値との有意差が消失し、施術終了から10分後の計測終了までそのまま続いた。

プロトコル2:施術後の運動中の心拍数への影響は?

プロトコル2の対象は21名。鍼施術後に行う運動中の心拍数への影響が、負荷する運動の強度によって異なる可能性があるため、被験者全員に対して鍼施術後に2種類の強度の運動を課す条件、および鍼施術を行わずに運動を課す条件でテストを行う、無作為化クロスオーバー法で検討された。

プロトコルの詳細

最初に高強度運動での試験を行う群が10名で、他の11名は最初に低強度運動での試験が行われた。施術の影響を評価する1週間前に、自転車エルゴメーターを用いたランプ負荷試験(漸増負荷テスト)を実施。20Wから3秒ごとに1Wずつ負荷を増やし、60rpmを維持できなくなるまで続け、最大運動能力を測定した。

施術の影響を評価するテストでは、10分間の仰臥位姿勢での安静に続き、プロトコル1と同様に鍼施術を施行。その直後に、低強度条件では最大運動能力20%の負荷、高強度条件では100%の負荷の設定で、自転車エルゴメーターによる運動負荷試験を実施し、2分ごとに心拍数を計測した。

なお、安静時の心拍数は、低強度運動負荷時は鍼施術施行条件で55.2±5.5bpm、鍼施術を施行しない条件で53.8±5.0bpmで有意差がなく、高強度運動負荷時も同順に53.0±7.3bpm、54.3±6.5bpmであり、有意差はなかった。

低強度の運動負荷条件では、鍼施術により心拍数の上昇が有意に抑制

結果について、まず鍼施術後に低強度の運動負荷をかける条件と、鍼施術を行わずに低強度の運動負荷をかける条件とを比較すると、施術後に運動をする条件のほうが、運動中の心拍数の上昇が有意に少なかった。

具体的には、鍼施術をせずに運動する条件では、運動負荷開始から20秒後までの心拍数が81.0±6.6bpm、負荷開始後20~40秒では90.0±6.1bpm、40~60秒では97.5±6.0bpmであるのに対して、鍼施術後に運動する条件では同順に80.0±5.0bpm、87.0±5.6bpm、94.8±4.0bpmであり、安静時からの上昇幅は60秒後までのいずれのレンジでも有意差が存在した。

さらに、自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)は、施術をせずに運動する条件では8.5±2.0であるのに対して、鍼施術後に運動する条件では7.9±1.6であり、有意な低下が認められた(p=0.03)。

高強度の運動負荷条件では、心拍数が140bpm前後以上になると有意差が消失

次に、鍼施術後に高強度の運動負荷をかける条件と、鍼施術を行わずに高強度の運動負荷をかける条件とを比較。すると、鍼施術を行わない条件では、運動負荷開始から20秒後までの心拍数が100.1±10.1bpm、負荷開始後20~40秒では130.0±10.4bpm、40~60秒では145.1±6.6bpmであった。一方、鍼施術後に運動する条件では同順に94.0±11.2bpm、124.0±9.9bpm、142.0±7.4bpmであり、安静時からの上昇幅は40秒後までのンジで有意差が存在し、40秒以降に心拍数が140bpmを超えるあたりから有意差が消失していた。

自覚的運動強度(RPE)は、施術をせずに運動する条件で15.2±1.8、鍼施術後に運動する条件では15.4±2.0で、有意差がなかった。

鍼施術が酸素利用効率を高める可能性

まとめると、鍼施術による有意な徐脈反応が確認され、施術後4分間はその効果の継続が観察された。さらに、鍼施術によって誘発された徐脈効果は、施術後1分間の運動中にも引き続き認められた。ただし、運動負荷レベルが高く心拍数が約140bpm以上に増加すると、鍼施術の影響は消失した。このほか、運動負荷レベルが低い場合は、鍼施術によるRPEへの有意な効果が認められた。

著者らは、本研究では、心拍数とともに自律神経系の一般的な指標である血圧を評価していないこと、および、施術終了後長時間経過後の運動への影響が不明であることなどの限界点があるとしたうえで、「鍼施術により誘発される自律神経系への影響は、運動中の効率的な酸素利用に関連する可能性がある。鍼施術による精神生理学的安定性とパフォーマンス向上の可能性について、新たな知見を得られた」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of pre-exercise acupuncture stimulation on heart rate response during short-duration exercise」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2021 Oct 16;13(1):129〕
原文はこちら(Springer Nature)

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