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重曹と運動パフォーマンスとの関連について、国際スポーツ栄養学会(ISSN)が統一基準を公表

国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)の「Journal of the International Society of Sports Nutrition」に「重炭酸ナトリウム(重曹)と運動パフォーマンス(sodium bicarbonate and exercise performance)」というタイトルの論文が掲載された。ISSNが選出した研究者による、重曹サプリメントが運動パフォーマンスに及ぼす影響に関する文献の包括的レビューと批判的分析をまとめたもの。

重曹と運動パフォーマンスとの関連について、国際スポーツ栄養学会(ISSN)が統一基準を公表

コンセンサスステートメント策定に向けた議論のまとめ

重曹は、エルゴジェニックエイドとして、また処方薬や市販薬の成分として使用されている。これまでにエルゴジェニックエイドとしての重曹の有効性について、多くの研究がなされてきている。この論文は、

  1. 重曹のエルゴジェニック効果に関する科学文献を批判的に評価して要約すること、
  2. エルゴジェニックエイドとして重曹を使用するための推奨事項を提示すること、
  3. 重曹摂取に関する将来の研究のためのトピックを提案すること

を目的にまとめられた。

論文では、

  • 重曹と運動に関する研究の歴史
  • 重曹吸収のメカニズム
  • 重曹のエルゴジェニック効果のメカニズム
  • 高強度の運動パフォーマンスに対する重曹の影響
  • 格闘技のパフォーマンスに対する重曹の影響
  • 抵抗運動パフォーマンスに対する重曹の影響
  • トレーニングの適応に対する重曹の影響
  • 運動パフォーマンスに対する重曹の性特異的効果
  • トレーニング状況と重曹が運動パフォーマンスに及ぼす影響
  • 重曹摂取の最適なプロトコル
  • 重曹の摂取に関連するプラセボ効果
  • 重曹と他のエルゴジェニックエイドとの相互作用」

という章が立てられ、既報論文の詳細な解析を行い、最終章では「国際スポーツ栄養学会(ISSN)のポジション」として、結論を述べている。

このポジションスタンドは、ISSN編集者と研究委員会による招待論文として執筆された。論文の内容は研究委員会と編集者による承認を経て、ISSNの公式コンセンサスステートメントとして公開される。

重曹のエルゴジェニック効果の研究は1930年代から行われている

この研究では、重曹のエルゴジェニック効果を検討した研究論文124報を解析対象としている。著者らは、「重曹のエルゴジェニック効果は1930年代から研究されてきており、これまでに最も研究されているエルゴジェニックエイドの一つ」としている。本研究においても解析対象とされた研究のうち最も古いものは1977年の報告。男性5名を対象に、サイクリング開始前180分に0.3g/kgの重層を摂取しピークパワーの95%の負荷を加えたところ、疲労困憊に至るまでの時間が有意に延長されたと報告されている。日本人研究者の報告も3報が含まれている。

また、重曹と他のサプリメントを併用した場合に、上乗せ効果を期待できるか否かという点を、17報の研究から解析している。重曹とともに用いられたサプリメントは、クレアチン、βアラニン、カフェインが多く、ビートルートと併用した研究も含まれている。

ポジションスタンドの内容(抜粋)

ポジションスタンドの内容を一部抜粋して紹介する。

  • 重曹(0.2〜0.5g/kg)の摂取は、筋肉の持久力活動、ボクシング、柔道、空手、テコンドー、レスリングなどのさまざまな格闘技、および高強度のサイクリング、ランニング、水泳、ローイングのパフォーマンスを向上させる。重曹のエルゴジェニック効果は、主に30秒から12分続く高強度の運動タスクで確立される。
  • 単回摂取の場合、0.2g/kgが運動パフォーマンスの改善を得るために必要最小用量と考えられる。エルゴジェニック効果のための最適用量は0.3g/kgのようだ。高用量(例えば、0.4または0.5g/kg)を摂取しても上乗せ効果はなく、有害事象の発生率や重症度が上昇する可能性があり、単回摂取プロトコルでは必要ないと考えられる。
  • 単回摂取の場合、運動または競技の60~180分前が、推奨される摂取タイミング。
  • 重曹の複数回摂取は、運動パフォーマンスの改善に効果的。複数回摂取する場合、通常、運動テストの3~7日前に1日あたり0.4または0.5g/kgの重層摂取がエルゴジェニック効果を生み出す。通常、1日の総投与量を数回に分けて摂取される(例えば、朝食、昼食、夕食時に0.1~0.2g/kg)。複数回摂取するプロトコルは、競技当日に重曹によって誘発される副作用のリスクを減らすのに役立つ可能性がある。
  • 重曹の長期使用(例えば運動トレーニングセッションの前に毎回摂取)は、疲労困憊に至るまでの時間の延長やパワーの増加など、トレーニングの適応を強化する可能性がある。
  • 重曹の最も一般的な副作用は、膨満感、嘔気、嘔吐、腹痛。副作用の発生率と重症度は個人間および個人内で異なり一般的には低いものの、それらの副作用が運動パフォーマンスに悪影響を与える可能性がある。副作用の発現頻度や重症度を最小限に抑えるための戦略として、少量(例えば0.2または0.3g/kg)を摂取する、運動の約180分前または個々の反応に応じて摂取タイミングを調整する、高炭水化物食とともに摂取する、腸溶性カプセルを利用する、などが挙げられる。
  • 重曹をクレアチンまたはβアラニンと組み合わせると、運動パフォーマンスに相加的効果が生じる可能性がある。重曹をカフェインまたは硝酸塩と組み合わせることが相加的効果を生み出すかどうかは不明。
  • 重曹は、主にその生理​​学的効果によって運動パフォーマンスを向上させるが、エルゴジェニック効果の一部はプラセボ効果のようだ。

文献情報

原題のタイトルは、「International Society of Sports Nutrition position stand: sodium bicarbonate and exercise performance」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2021 Sep 9;18(1):61〕
原文はこちら(Springer Nature)

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