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格闘技アスリートの栄養、サプリメント、減量戦略 ポーランド研究者の文献レビュー

格闘技アスリートの栄養戦略に関するレビュー論文が報告された。ポーランドのワルシャワ生命科学大学の2名の研究者によるもので、エネルギーと炭水化物、タンパク質、脂質、水、サプリメント、サプリメントの悪影響、減量という項目が立てられている。要旨を紹介する。

格闘技アスリートの栄養、サプリメント、減量戦略 ポーランド研究者の文献レビュー

イントロダクション:格闘技への栄養介入の特殊性

格闘技は、2人の競技者が特定のルールの下で戦うコンタクトスポーツと説明される。人気の高い格闘技として、レスリング、柔道、ボクシング、キックボクシング、空手、テコンドー、総合格闘技などがある。大半の格闘技には、体格、パワー、敏捷性などの競技者間の差を最小化するために体重別階級が設けられていて、競技者は通常、より軽量級のカテゴリーで対戦することで優位に立とうとする。

その一方で、日常のトレーニングでは筋量・筋力の増加のために十分なエネルギーと栄養素の摂取が求められる。このような複雑な戦略を支えるために、適切な食事計画、スポーツサプリメントの使用が重要となる。

エネルギーと炭水化物

格闘技のスポーツパフォーマンスを最大化する際の主要な要素は、適切な摂取エネルギーを確保することであり、アスリートの主なエネルギー源は炭水化物だ。アスリートの食事に推奨される炭水化物の摂取量は、トレーニングの種類と強度に関連によって、4~5g/kgから8~10g/kgの範囲で変化する。

格闘技は高強度のスポーツであり、トレーニングには有酸素性の運動と嫌気性代謝が含まれ、トレーニング中にグリコーゲン貯蔵が枯渇する可能性があるため、求められる炭水化物摂取量は10~12g/kgに増加することがある。トレーニング前に炭水化物を摂取することで持久力が向上することには、多くのエビデンスがある。

タンパク質

格闘技のトレーニングで重要な主要栄養素はタンパク質だ。筋肉のタンパク質合成を促すために、アスリートに推奨されるタンパク質摂取量は、トレーニングを行っていない一般成人よりも高く、1.2~2g/kgとされる。減量中の筋肉量減少を防ぐには、より高い要件の1.8~2.7g/kgの有用性を示す報告もある。

必須アミノ酸、とくにロイシンの摂取は、筋肉量の合成刺激につながる。筋タンパク質合成の刺激作用が示されている食品として、牛乳、ホエイ、カゼイン、および大豆タンパク質などがある。ホエイと大豆タンパク質は消化が速く、血中アミノ酸レベルが大きく上昇する。一方、カゼインは吸収・消化に時間を要する。また、ホエイは、大豆やカゼインよりも、筋タンパク質合成刺激に優れていると考えられる。

脂質

アスリートに推奨される脂質摂取量はエネルギー摂取量の25~30%であり、最も好ましい脂質は不飽和脂肪酸、とくにω3多価不飽和脂肪酸(omega-3 polyunsaturated fatty acids;3PUFAS)だ。3PUFASは酸化ストレスと炎症を軽減し、心血管疾患のリスクを低下させ、筋肉痛を軽減して筋タンパク質合成を増加させることが知られている。

また、スポーツ中の細胞機能のエネルギーは主としてグリコーゲンまたは中性脂肪に由来する。炭水化物とは対照的に、脂肪はほぼ無制限に利用できると考えられる。

水はアスリートにとって重要なエルゴジェニックエイドであり、パフォーマンスを維持するには適切な水分補給が必要。2%の脱水でスポーツパフォーマンスが損なわれ、4%の脱水で、熱疲労、熱中症などの深刻な健康障害を来し得る。

減量に伴う脱水状態では、虚血性心疾患や脳卒中などの急性心血管系のリスクが上昇する可能性が指摘されている。より高レベルの脱水では、頭部外傷に関連する脳損傷のリスクが上昇する可能性がある。

トレーニングによって引き起こされる水分損失を補うために、アスリートは運動中に約0.5〜2L/時の水またはブドウ糖電解質溶液を摂取する必要がある。水分バランスの変化をモニタリングするための良い戦略は、トレーニングの前後に体重を測ることだ。

サプリメント

トレーニングの効果に影響を与えることが証明されているスポーツサプリメントは少なくない。例えばサプリメント使用によって倦怠感が抑制され、より高強度のトレーニングを行えるようになる可能性がある。

格闘技アスリートがサプリメントを使用するメリットとして、急性効果と慢性効果を期待できる。急性効果は摂取後数分~数時間に発現し、トレーニングや試合のパフォーマンスを最大化する。慢性効果を得るには数日または数週間にわたって継続的に摂取する必要がある。

格闘技でエルゴジェニック効果が証明されている物質の一つはカフェインだ。3~6mg/kgのカフェイン摂取により、エネルギー代謝における解糖系の寄与が高まる可能性があり、パワーや筋持久力も改善する可能性が示されている。カフェイン摂取後1時間に血漿レベルがピークに達するため、トレーニングまたは試合の60分前がカフェイン摂取の適切なタイミングと言える。なお、カフェインのエルゴジェニック効果に否定的な結果を報告した研究もある。

重曹もエビデンスが豊富だ。重曹は細胞外緩衝能を増強することができるアルカリ化剤であり、運動の2時間前に0.3g/kgの重曹摂取により柔道特有のパフォーマンスが向上することを示した研究も報告されている。しかし、重曹摂取には、吐き気、下痢、嘔吐、腹痛などの消化器症状のリスクがあることに注意を要する。消化器症状の発現リスクを抑えるため、摂取量を徐々に増やす戦略が有効なことがある。

β-アラニンもまた格闘技に有益である可能性がある。β-アラニンサプリメント摂取によって、筋肉内カルノシンレベルが上昇することが明らかになっている。1.6~6.4g/日を4週間摂取すると、筋肉カルノシンが40~80%増加し、無酸素性作業閾値を改善する可能性がある。4週間のβ-アラニン摂取により、柔道パフォーマンスが有意に向上したとの報告がある。

格闘技のパフォーマンス向上のために最も効果的なサプリメントは、恐らくクレアチンであろう。クレアチンは、筋力、除脂肪体重などの点で有益性が示されている。一方、格闘技アスリートにおいてクレアチンサプリメントのマイナスの側面は、水分貯留だろう。試合前の減量期間には、水分貯留による体重増を避けるためにクレアチン摂取を中断したほうが良い可能性がある。

サプリメントの悪影響

サプリメントの使用には、ドーピングリスクがある。つまり、アスリートの健康とスポーツのキャリアに影響を与える可能性がある。スポーツサプリメントの10~15%に禁止物質が含まれている可能性を示した研究も報告されている。また、レクリエーションアスリートでは、サプリメント使用に際してその86%が、使用前に商品ラベルを確認していないとの報告があり、注意喚起が必要とされる。

軽量化(減量)

減量は、長期的戦略または短期的な戦略によって達成される。いずれもスポーツパフォーマンスに影響を与え、健康には悪影響を与える可能性がある。

長期的な減量は主として摂取エネルギー不足に関連しており、免疫機能、代謝、骨の健康などに悪影響が生じ得る。また、短期的には体重の5%を超える減量をすべきでない。

減量の一般的な方法は、運動量の増加と水分および食物摂取の制限だ。とくに水分制限が中心となる。格闘技アスリートが用いる方法として、制限前の数日間に大量の水分を摂取する方法がある。この方法をとった場合に、対照群に比し大きな減量効果を得られるとする報告がある。この手法は比較的安全な方法かもしれない。

また、腸の内容物を減らすことも有用だ。スポーツパフォーマンスを低下させることなく腸の内容物を減らすために、食物繊維摂取量が少なくエネルギー密度の高い食品を摂取することが利することもある。食物繊維摂取量を10g/日未満とするとパフォーマンスに影響を与えることなく体重を減らせる可能性があることが報告されている。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutrition, supplementation and weight reduction in combat sports: a review」。〔AIMS Public Health. 2021 Jul 6;8(3):485-498〕
原文はこちら(AIMS Press)

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