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子どもの食生活と親の社会経済的状況は有意に関連 23カ国の子ども12万人を調査

欧州とアジア23カ国の子どもたち約12万人の食生活と、その親の収入や雇用状況、教育歴との関連が報告された。親の収入が豊かで教育レベルが高いほど、子どもの食生活が良好であることがわかった。世界保健機関(World Health Organization;WHO)の欧州小児肥満サーベイランスイニシアチブ(European Childhood Obesity Surveillance Initiative;COSI)のデータを解析した研究報告。

子どもの食生活と親の社会経済的状況は有意に関連 23カ国の子ども12万人を調査

欧州と中央・西アジア23カ国で調査

欧州小児肥満サーベイランスイニシアチブ(COSI)は2015~2017年に、欧州と中央・西アジア地域の36カ国でデータが収集された。これらの国のうち、23カ国は、親または保護者への質問フォームを用いて子どもの食習慣と世帯の社会経済的状況が調査された。

子どもの食習慣の調査

調査で把握された子どもの食習慣のうち、本研究では、新鮮な果物の摂取頻度、野菜の摂取頻度、加糖飲料の摂取頻度という3項目を検討項目とした。

いずれについても、「ふだん、あなたの子どもはどのくらいの頻度で、次の種類の食べ物や飲み物を食べたり飲んだりしますか?」という質問を設け、「まったくない」、「週に1回未満」、「週に数日(1~3日)」、「週の大半(4~6日)」、「毎日」という選択肢から選択してもらった。

世帯の社会経済的状況

世帯の社会経済的状況については、親の教育歴、世帯の富の認識、親の雇用状況という3項目を変数として用いた。

教育歴は、小学校以下、中学校または高校、専門学校は、「低学歴」と判定し、学部卒または学士号、修士号以上の取得者は「高等教育」を受けたと判定したうえで、両親がともに低学歴の場合は「教育レベル低」、両親のいずれか1人が高等教育を受けていた場合は「教育レベル中」、両親がともに高等教育を受けていた場合は「教育レベル高」と定義した。

世帯の富は、生活が苦しいと感じていると回答した世帯を「低収入」、深刻な支障なく生活できていると回答した世帯を「中程度の収入」、余裕があると回答した世帯を「高収入」と定義した。

雇用状況は、両親のうち1人以上が失業中または被扶養者の場合を「雇用が少ない」とし、両親ともに雇用されている場合を「雇用が多い」として二分した。

地域による分類

結果解析のため、23カ国は以下の5ブロックに分類された。

北欧(デンマーク、アイルランド、リトアニア、ラトビア)、東欧(ブルガリア、チェコ、ポーランド、ルーマニア、ロシア連邦)、南欧(アルバニア、クロアチア、イタリア、マルタ、モンテネグロ、ポルトガル、サンマリノ、スペイン)、中央アジア(カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、トルクメニスタン)、西アジア(ジョージア、トルコ)。

親の社会経済的状況は子どもの食生活と有意に関連

解析対象となった子どもは11万9,083人だった。デンマーク、アイルランド、サンマリノは1,000人未満で、イタリア、スペイン、トルコは9,000人以上と、広範囲に分布していた。多変量解析に必要な変数が欠落していない子どもは、11万2,841人だった。

子どもたちの全体的な傾向

子どもの年齢については大半の国では7歳を唯一の調査対象年齢としており、一部の国では7歳に加えて他の年齢でも調査していた。チェコの7.0歳が最も低く、カザフスタンの9.0歳が最高齢だった。

北欧を除く4ブロック(東欧、南欧、中央アジア、西アジア)では、親の教育レベルが低い世帯が多くを占めていた。親の雇用が少ない子どもの割合は15.3~84.3%の範囲に広がっており、失業率と労働力でない親の割合は国により大きく異なった。低収入の世帯の割合は、6.9~48.9%の間にあった。

親の教育歴の低さ、世帯収入の低さが、子どもが新鮮な果物を食べないことと関連

新鮮な果物を「毎日食べない」子どもの割合は、19~82%の範囲に分布していた。

親の教育歴が低い子どもは、親の教育歴が高い子どもよりも、毎日新鮮な果物を食べない確率が高かった〔OR1.48(95%CI;1.29~1.70)〕。また、収入が少ない世帯の子どもは、収入の多い世帯の子どもよりも、毎日新鮮な果物を食べない確率が高かった〔OR1.83(95%CI;1.64~2.04)〕。

親の教育歴との関連のオッズ比は、アイルランド、ポルトガル、サンマリノ、スペイン、トルクメニスタンでは2.00以上であり、世帯収入との関連のオッズ比は、チェコ、カザフスタン、キルギスタン、モンテネグロ、ルーマニアで2.00以上だった。

一方、親の雇用状況については、親の雇用が少ない子どものほうが、毎日新鮮な果物を食べない確率が低かった〔OR0.89(95%CI;0.80~0.98)〕。

親の教育歴の低さ、世帯収入の低さが、子どもが野菜を食べないことと関連

野菜を「毎日食べない」子どもの割合は、26~91%の範囲に分布していた。

親の教育歴が低い子どもは、親の教育歴が高い子どもよりも、毎日野菜を食べない確率が高かった〔OR1.36(95%CI;1.18~1.57)〕。また、収入が少ない世帯の子どもは、収入の多い世帯の子どもよりも、毎日野菜を食べない確率が高かった〔OR1.37(95%CI;1.20~1.56)〕。

親の雇用状況については、子どもが野菜を食べない確率と有意な関連がなかった〔OR0.92(95%CI;0.82~1.03)〕。

親の教育歴の低さが、子どもの加糖飲料の多飲と関連

加糖飲料を「週に3日以上摂取する」子どもの割合は、1~45%の範囲に分布していた。

親の教育歴が低い子どもは、親の教育歴が高い子どもよりも、加糖飲料を週に3日以上摂取する確率が高かった〔OR1.47(95%CI;1.24~1.74)〕。

世帯収入〔OR1.08(95%CI;0.95~1.23)〕や親の雇用状況〔OR0.97(95%CI;0.85~1.10)〕については、子どもが加糖飲料を週に3日以上摂取する確率と有意な関連がなかった。

以上より著者らは、「本研究で調査された欧州とアジアの国々の大多数に、子どもの食生活への社会経済的格差の影響が存在する。社会経済的不平等がさらに増加した場合に、それが子どもの健康的でない食習慣となってより大きな影響を及ぼしかねず、継続的な監視が不可欠である」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Socioeconomic differences in food habits among 6- to 9-year-old children from 23 countries—WHO European Childhood Obesity Surveillance Initiative (COSI 2015/2017)」。〔Obes Rev. 2021 Jul 7;e13211〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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