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コーヒーやカフェイン摂取量が過敏性腸症候群(IBS)と関連 病型別の解析では便秘型と有意

コーヒーやカフェインの摂取量が多い人は、過敏性腸症候群のオッズ比が高いとの研究結果が報告された。とくに女性や肥満者でその傾向が強いという。イランの医療関係者対象に行われた研究の結果だ。

コーヒーやカフェイン摂取量が過敏性腸症候群(IBS)と関連 病型別の解析では便秘型と有意

カフェイン摂取がIBS症状に影響を与えるのか?

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome;IBS)は、消化管に器質的な異常はないのにもかかわらず、腹痛、下痢、便秘が続く疾患で、ストレスが発症や病状に関与することが知られている。一般人口の有病率は十数パーセントであり、アスリートにもそれと同程度かそれ以上に存在する可能性を示唆するデータもある。またアスリートでは、IBSと診断はされないものの、試合前などの場面でIBS類似症状を来すケースもある。

一方、カフェイン摂取のスポーツパフォーマンスに対する有用性に関しては豊富なエビデンスがあり、サプリメントとして摂取しているアスリートが少なくない。しかし、カフェイン摂取と過敏性腸症候群のつながりを調べた研究は少なく、関連性の有無はよくわかっていない。

イランの医科大学関連施設勤務者を対象に調査

この研究の対象は、イランのエスファハーン医科大学の関連する50カ所の医療機関に勤務しているイラン人成人。まず1万87人に対し食事摂取量に関する調査質問票を送付。回答のあった8,691人(回答率:86.16%)に対し、消化器症状に関する質問票を送付。回答のあった6,239人(回答率:64.6%)のうち、解析に必要なデータが欠落していないこと、および摂取エネルギー量が800kcal/日未満または4,200kcal/日以上の人を除外し、3,362人を解析対象とした。

食事摂取量は、料理ベースの106項目からなる半定量的食品摂取頻度アンケートにより評価した。コーヒーの摂取頻度については、摂取しない、毎月、毎週、それ以上に分類した。

IBSはローマIII(機能性消化管障害の国際的診断基準)のペルシア語版に則して診断し、過去3カ月間の症状に基づき、軽症、中等症、重症、極めて重症に分類した。

その他の変数として、年齢、性別、摂取エネルギー量、食物繊維摂取量、喫煙習慣、水分摂取量、身体活動量、糖尿病の有無、ストレス、噛み合わせの良否などを調査した。

回答者の主な特徴:コーヒー摂取習慣がない人が約7割

全体の68.6%はコーヒーを摂取せず、摂取頻度が毎月との回答が19.8%で、毎週またはそれ以上との回答が11.5%だった。毎週以上の頻度でコーヒーを飲んでいる群は、コーヒーを飲まない群に比較し、身体的に活発で、摂取エネルギー量が多く、サプリメント利用率が高く、喫煙者が多かった。

全体のカフェイン摂取量の平均は99.10mg/日であり、三分位に分けるとそれぞれの平均は29.96mg/日、74.8mg/日、191.8mg/日となった。カフェイン摂取量の最も多い第3三分位群は最も少ない第1三位分位群に比較し、高齢で女性が多く、摂取エネルギー量と喫煙者も多かった。

コーヒー摂取頻度、カフェイン摂取量と、IBS有病率に有意な相関

コーヒーやカフェイン摂取量とIBSとの関連の解析に際しては、IBS発症に影響を与え得る交絡因子(年齢、性別、摂取エネルギー量、食物繊維摂取量、朝食の欠食、喫煙習慣、水分摂取量、身体活動量、ストレス、噛み合わせの良否、既往症、処方薬など)の影響を統計的に調整した。

その結果、コーヒーを摂取しない群のIBS有病率を基準とすると、毎月飲む群はオッズ比(OR)1.34(95%CI:1.02~1.76)、毎週またはそれ以上の頻度で飲む群はOR1.44(1.02~2.04)であり、摂取頻度が高いほどIBS有病率が高かった(傾向性p=0.007)。ただし、性別の解析、および肥満(BMI25以上)の有無別の解析では、男性/女性、正常体重/肥満のいずすれも、コーヒー摂取頻度とIBS有病率の関連の有意性が消失した。

次に、カフェイン摂取量との関連をみると、カフェイン摂取量の第1三分位群に比較して第2三分位群はOR1.28(1.01~1.68)、第3三分位群はOR1.47(1.14~1.87)であり、摂取量が多いほどIBS有病率が高かった(傾向性p=0.002)。また、性別に解析すると男性は非有意となったが、女性では有意性が保たれていた(傾向性p=0.009)。さらに、肥満の有無別に解析した場合も、正常体重では非有意となったが、肥満群では有意性が保たれていた(傾向性p=0.003)。加えて肥満群では、カフェインの摂取量の多さがIBSの重症度とも有意に関連していた。

病型別の解析では便秘型IBSとのみ有意に関連

続いて、IBSの病型別に関連を検討した。なお、IBSには下痢型、便秘型、混合型、および分類不能の4タイプに分けられる。この4タイプで分類したうえで、コーヒー摂取頻度やカフェイン摂取量との関連を検討したところ、便秘型との間でのみ、有意な関連が認められた。

具体的には、前記の交絡因子で調整後、コーヒーを摂取しない群の便秘型IBS有病率を基準とすると、毎月飲む群の便秘型IBSのオッズ比(OR)1.69(95%CI:1.14~2.51)、毎週またはそれ以上の頻度で飲む群はOR1.66(1.00~2.75)であり、摂取頻度が高いほど便秘型IBS有病率が高かった(傾向性p=0.006)。また、カフェイン摂取量の第1三分位群に比較して第3三分位群はOR1.49(1.02~2.16)だった(傾向性p=0.03)。

以上より著者らは、一つ目の結論として、カフェイン摂取は男性ではなく女性のIBSの増加に関連しているとし、その理由を男性よりも女性のほうがカフェインの代謝が遅いことが関連しているのではないかと考察している。二つ目の結論は、正常体重者よりも肥満者でIBSとの関連が強いとし、既報から肥満者はカフェイン代謝が遅いことが報告されているとしている。

また、IBSの病型の中で便秘型のみが有意に関連していたことに関しては、カフェインの利尿作用が脱水、そして便秘につながるのではないかと述べている。

一方、コーヒーに含まれるクロロゲン酸には腸内浸透圧を高める作用などを介して下痢を誘発することがあるとされる。しかし本研究ではクロロゲン酸レベルを測定していなかったことは、著者らも研究上の限界点として言及している。

文献情報

原題のタイトルは、「Association of Coffee and Caffeine Intake With Irritable Bowel Syndrome in Adults」。〔Front Nutr. 2021 Jun 15;8:632469〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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