抗がん剤の副作用をアミノ酸の一種「シスチン」が軽減 7/22 JSPENでBest Paper in The Year受賞講演
抗がん剤の副作用を、アミノ酸の一種「シスチン」が軽減するとの研究結果が、第36回臨床栄養代謝学会学術集会( JSPEN/7月21~22日・神戸〈ライブ配信も実施〉)にて発表される。東北大学病院総合内科の小林実氏らの研究であり、優秀演題に贈られる「小越章平記念Best Paper in The Year」を受賞した研究。
7月22日(木)14:20から、神戸ポートピアホテルの第2会場にて受賞講演が行われ、8月2~31日にはオンデマンド配信。ここでは受賞論文の要旨を紹介する。
大腸がん治療薬による末梢神経障害をシスチンとテアニンの摂取で抑制し得るか?
受賞講演の演題名は「オキサリプラチン誘発性末梢神経障害に対するシスチンとテアニンの経口投与による保護効果の研究:パイロットランダム化試験」。
白金製剤のオキサリプラチンは大腸がん治療のキードラックの一つであるが、有害事象としてしばしば末梢神経障害が引き起こされる。末梢神経障害が生じると、用量の変更が必要となり治療を完遂できなくなったり、生活の質(QOL)が低下してしまう。治療効果とQOLを維持するために、末梢神経障害の予防・治療のための研究が重ねられているが、これまでのところ高いエビデンスにより有効性が証明された手法は確立されていない。
一方、サプリメントとして活用されているアミノ酸のシスチンとテアニンを経口摂取すると、抗酸化作用物質のグルタチオンの合成が促進されるが、このグルタチオンが末梢神経障害を抑制する可能性が報告されている。そこで小林氏らの研究グループは、オキサリプラチンにより惹起される末梢神経障害をシスチンとテアニンの摂取により軽減できるか、実際に大腸がん患者を対象とする研究により検証した。
研究の対象は、大腸がんに対してmFOLFOX6(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチンの併用。フォルフォックス療法)で治療されている28人。無作為に2群に分け、1群にのみシスチン700mg/日およびテアニン280mg/日を投与。1コース2週間で、6コース施行。手足のしびれやボタン着脱、歩行などの7項目、合計28点でスコアリングして末梢神経障害症状を評価した。
その結果、4コース終了時点での末梢神経障害のスコアが、対照群の3.08に対してシスチン+テアニン投与群は1.17であり、有意に低かった(p=0.026)。この群間の有意差は、6コースが終了しmFOLFOX6療法が完了するまで保たれていた。
この研究はパイロット研究であるため、結果解釈上の限界点が少なくないものの、研究グループでは「シスチンとテアニンの連日経口投与により末梢神経障害が抑制されるという、次につながる結果が得られた。さらなる研究で、オキサリプラチンに対するシスチンとテアニンの有効性に関するエビデンスを確立していきたい」としている。
なお、研究内容の詳細は、以下の講演で発表される。
第36回日本臨床栄養代謝学会学術集会
- 会期
- 2021年7月21日(水)~22日(木)
- 開催場所
- 神戸ポートピアホテル+LIVE中継
- オンデマンド配信
- 2021年8月2日(月)~31日(火)
小越章平記念 Best Paper in The Year 2020 受賞講演
- 発表日時
- 2021年7月22日(木)14:20~14:50
- 演題
- オキサリプラチン誘発性末梢神経障害に対するシスチンとテアニンの経口投与による保護効果の研究:パイロットランダム化試験
- 司会
- 山中 英治 氏(若草第一病院 外科)
- 演者(受賞者)
- 小林実氏(東北大学病院 総合外科)
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